4.鍾乳洞
僕はタマちゃんの入ってるペンダントを守れるような胸当てや小さめの鉄盾を新調した。
メルクル街から徒歩で渓谷にある古い祠を目指す。
相変わらず渓流の流れは冷たくて、周りのごつごつした大きな石の隙間を通りながら小さな祠にはいった。
「ヒェッ」思わず声が出た。
狭い祠の中にあった台座は壊れて、上にのっていたはずの丸い石は見事に地面に落ちて割れていた。
元ダンジョンコアと僕の魂が入っていたはずの石。
僕がタマちゃんを連れて行かなければ、そのあとすぐにヒビが入って僕らは死んでいた。
足に力が入らなくなって腰が抜けた。
僕は四つん這いになって祠から這い出す。
「あ、あぶなかった」
「そ、そのようですね」
顔を洗って水を飲んで落ち着きを取り戻す。
「ショウさん大丈夫ですか?魔石の洞窟は祠の石の壁を持ち上げた先に残っていればあるはずです」
「わかった。びっくりしただけでもう大丈夫だと思う」
僕らは再び祠の中に入り、割れた石を見ないようにしながら石壁と地面を探る。
接地面の砂利をどかしてみると確かに隙間があるようだ。
隙間に手を入れて上に持ち上げてみる。
10センチくらいあがったので、片足をつきながらそばにあった手ごろな石を挟んで落ちないようにする。
川原から人が通れるくらいの石を拾ってきて、祠の石壁をさらにもち上げてみる。
僕って意外と力あるんだな。
拾って来た大きな石を挟んで壁が落ちないようにする。
向こう側は暗くてよくみえないけれど空間があるようだ。
タマちゃんはペンダントを光らせて灯りをともしてくれた。
持ち上げた石壁下の隙間から潜り込んで洞窟に入ってみる。
かなりくずれて岩だらけであるが奥のほうからチョロチョロ水の音が聞こえる。
よろけながら進んでいく。石をどかしたり、登ったり下ったり。
狭いけどどうやら鍾乳洞のようだ。
滑りやすい。
転びかけながら先に進むとすぐに少しひらけたところに出た。透明な水、地底湖があった。
湖というより大きさは池だけどね。
湖の壁ぎわに淡く光るゴールドシャンパン色の石が岩にめりこむようにいくつかあった。
「これが魔石の一種です。手をかざしてみてください。」
そっと触れてみるとゆっくり何かが体の中に流れていくような感じがする。
やがて石の輝きは消えてただの石灰岩のようになった。
不思議な感じだ。
僕らは祠のある外まで戻った。
もちろん石壁は元に戻しておく。
今までよりずっと体が楽になったことに気が付いた。
生命力がついたってことらしい。
これで一安心だ。
魔物を倒さなくてもこうやって自然魔石を探していればいいんじゃないかと思ったが、
そういう魔素が多いとことはだいたいダンジョンができているのだそうだ。
がっかり。
◇
街に戻ってみると指名依頼がギルドに来ていた。
受付嬢がニッコリしてカウンターから手招きしてる。銀行のおねーさんを思い出す。なんかこわいな。
「ショウ様向きの指名依頼がはいってますが、話だけでもきいていただけませんか?」
「はい。簡単な内容ですか?」
「新しい村づくりをするために村の中をみてもらって改善点や感想をいってほしいそうです」
「開拓村みたいなものかな。僕みたいな子供にですか?」
「もう少し旅行者に来てもらいたいそうなんですが、子供の意見もほしいそうです。
ただ、できたらおとなしい人が希望らしくってショウ様がいいのではないかとギルドのほうで推薦しました」
「僕っておとなしいのか?それはそれで問題だけど、ケイトさんなんて向いてると思うのですが」
「女性一人を向かわせるのも問題かと」
「調査は一人が希望なんですか?」
「そうなんです。道中も危険はないと思いますが、ギルドの馬車で送り迎えいたします」
『成人の儀』を迎えたばかりで、子供に一番近いと言えばそうなのかな。
レッドたちも王都でバイトしてるんだし僕もちょっとやってみるかな。
村の中なら危なくないだろう。
村の名前が気になる。
『人見知りの村』。
それなのに観光客を呼びたいって矛盾してる気がする。
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