表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/53

45.ペンダントの中

タマは後悔していた。

やはり私が船の中に残ってればよかった。

海中でうごきまくるショウを回収するのが難しかったのだ。




なんとかショウの体を船に引き上げたが、水を飲み過ぎて息をしてなかったのだ。

ショウ!ショウ!

起きて!お願い起きて!


タマの声で一緒にペンダントの中に収容されていた3人も気が付いたようだ。


見知らぬ天井が見える。

天上から小さな花が振ってきて床に着くと淡雪のように消える。

なんだろう、この部屋。女の子の部屋かな?


でもすぐにショウの様子に気が付いた。

助けないと!


がばっと体を起こしてデイジーがかけよる。

「起きなさい!いやよ起きて!」ショウのほっぺをたたく。

レッドとケイトも大声で名前を呼んでみたが起きない。


それをみて冷静になったタマ。

そうよ。これじゃだめ。

確かショウさんの記憶に溺れた人間を助ける方法があったはず!



「皆さん落ち着いて。

 ケイトさんは頭をこうやっておさえて気道確保。

 水を吐いたら、すぐ顔を横に向けて吐かせて」


タマは口で息を送り込む。すぐに心肺蘇生だ。


「レッドさんはこれ覚えて。胸の真ん中を押していくの。

 デイジーさんは毛布を。体が冷たいわ」


両手で胸をリズムよく押していく。

レッドは見よう見まねで押してみる。「もっと強く」



デイジーがぼろぼろ泣いている。


「うぅ、いやよ。また私の目の前で死なないで」

泣きながらデイジーはショウが冷えないように毛布で周りを囲む。

もう一度空気を送り込んだときに「ガハッ」とせき込むので慌てて横に向ける。


「げほっ。うげっ。ゲホゲホゲホ」




息苦しさに顔が熱くなって焦ってしまった。

ダンジョンから抜け出すときにかぶっていた金魚鉢がはずれ、海水が大量に入って来たのは覚えている。



気が付いたショウは毛布でグルグル巻きになっていた。

あたりを見回す。

天国かな?

このやたら乙女なかわいい部屋になぜいるのかな。

そして綺麗な人がいることに気が付いたのだった。


皆はしばし無言だったが、ケイトが最初に話し出す。


「ここどこですか?」

「ここは私の部屋です。ダンジョンで皆さんに危険があったので転送させました。

 私はショウさんのペンダントの中にいましたので、皆さんのことを見ていました」


「あなたは誰ですか?」

「申し遅れました。私はタマと申します」

「えっと、あなたは神様?」

「いえ、ちがいます。ええっと、ショウさん話していいのでしょうか?」


「僕が話すよ」

まだ喉がおかしいがなんとか話せそうだ。


「皆に黙っててごめん。僕はダンジョンマスター。彼女はコアのタマちゃん。

 ここは彼女のコアルームなんだ」


 「「「?」」」



僕は時々、せき込みながら簡単に説明する。


・僕に人間としての記憶があること。

・メルクル街で人間として生きていきたかった事。

・そのせいでピンク髪のいう未来が変わったこと。

・今回のダンジョンでダンジョンマスターに狙われてしまったこと。


他のダンジョンマスターのことは言わないでおいた。


「ずっと騙してるような気はしてたんだ。なかなか言い出せなくてごめんなさい」


ぱっと顔をあげてケイトが言い出す。

「やっぱりそうだった。海に行った時に、夜中大きな亀と話していたもの」

「うげ!ケイトみてたのかよ」

「うん、人じゃないのかなって。めんどくさいから聞かなかった」


レッドも驚きながら言う。

「俺もリュウから聞いて知ってたけど、本当だったのか」

「げげ。レッドもかよ!」

「まあ、どうでもいいな」

二人とも知ってたんだ。ということはデイジーも?


デイジーは目を赤く腫らして震えていた。

「・・・」

彼女は知らなかったのか。

タマちゃんが濡らしたハンカチを目に当ててあげている。


小さな花がふわふわ降ってくる部屋は花の女神様の影響だろうか。

僕がタマちゃんに預けていたいろいろな種類の石が並んでいる。

陶器の白いプランターに青い小花わすれなぐさが咲き誇っている。

小さめの魔石もいくつかある。これはペンダントが壊れた時ようだ。


タマちゃんは長いつややかな黒髪と黒い瞳。ほっそりした美人さんだった。

日本人の僕にあわせてくれてるのだろうか?

優しく笑いかけてくれる。


「お話の続きは船でゆっくりどうぞ。皆さまを戻しますね」


草花の香りに包まれたと思うと、僕らは全員船に戻っていた。



「「「「はあ~~」」」」


全員で盛大なため息をつく。見慣れた光景にほっと力が抜けたんだ。

質問もあるだろうけど、とりあえず船を港町の桟橋に戻す。

誰かにきかれると困るので、香茶を飲みながら皆の疑問に答える。


「ダンジョンマスターって何?」とレッド。

「ダンジョンが作れるってだけみたい。いまのところ人間と同じだよ」


「個人的質問だけど、『魔力過多』の治療ってもしかしてスキル?」とデイジー。

「『接取』っていう体の中にある魔力と体力を奪うスキル。

 少し魔力を奪うと魔力回路の流れができるみたい」


「これからどうするの?」とケイト。

「僕はタマちゃんと船であちこち旅する予定なんだ。自分の船がないから作らないとね」


「自分の船ってものすごい金額だぞ」レッド。

「『ダンジョン製作』スキルでつくれそうなんだよ。ここに見本があるからね」

「まじかよ。もしかしてどんな部屋とかも作れるんじゃね?」

「うん。多分作れる。ただし僕とタマちゃんがいないと徐々に壊れる」


この言葉に女性陣の目が輝いた。「「素敵!」」


え?え?

素敵なのか??



海の上なら炎魔法ぶっ放し放題。しかも壊れても直せるなんて最高だな!

大型海獣と戦ってみたいぜ。


怪我の回復なら私にまかせて!

私も魔法の練習したいわ。多少危険でも平気よね!

見知らぬ世界を旅するって素敵ね。


海っていったら巨大海獣!みてみたい!大きな水槽もほしい!

異国の美味しいものが食べたいなー



あれ?なんかものすごい斜めな発想になってないか?


「あーえっと、皆それは僕と船の上にいないとできないんだけど」

「「「一緒にいく」」」


えええええええ?

ノリで言ってるのか?


「「「タマさん、よろしくお願いします」」」


タマちゃんもペンダントの中で大爆笑してるみたいだ。揺れてるぞ。




お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも続きが気になる、と思っていただけたら、

『ブックマーク』と【★★★★★】何卒応援よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ