44.サク
「ザク」じゃないですよ。
BOSSを倒した後なので敵はいない。
そこで休憩として横になっているが、頭が割れるように痛い。
その中で少しずつ声が聞こえてくる。
「いたたた・・・・」
「お?やっと聞こえたか?おれはこのダンジョンの主だ。
おまえはその人間を貢いておれの庇護を求めに来たんだろ?
立場のわかってるやつは嫌いじゃないぜ」
ものすごい上から目線の声が聞こえる。意味が分からない。
「なに?…何言ってるんだ?」
「貢物を持ってきたおまえは奴隷扱いはしないから安心しろ。
そいつら吸収するからもう少し離れてくれ。おまえごと吸収してしまう」
「うう‥頭が痛い。てかおまえは誰だ」
「おっと、マスター同士の会話は初めてか?
おれはダンジョンマスターのサクだ。おまえは?」
「僕はショウ」
「ショウか。短くて呼びやすいな」
「彼らは貢物じゃなくて仲間だ。吸収とかいうな」
「は?それ人間じゃなかったのか?」
「え?」
「いや人間って吸収するもんだろ?それともおまえの食料だったか」
話が全く分からない。
3人とも疲れてぐっすり眠ってるのか起きる気配がない。
タマちゃん助けてくれ。
「ショウさん、3人が危険です。
私たちの正体がばれる可能性がありますがコアの部屋に入れてもよろしいでしようか」
「うん。お願い」
僕は速攻承諾する。
サクと名乗った相手はいきなり3人が消えたので動揺する。
「お、おい。しまわなくてもいいだろ?
なんだよ、直接会わないと信用できないのか。ちょっとまってろ」
3人の無事をタマちゃんに確認する。僕は弱いけど庇護なんか求めてない。
なんとか逃げなくては。
僕は必死に階段までかけていく。
だが、悲しいかなここはサクのダンジョン。
ダンジョンマスターは好きに階層を動かせるのだ。
上に登る階段が消えて光の中に奴が現れた。
「おい、ふざけるなよ。おまえごと吸収してやってもいいんだぞ」
詰んだ。
ダンジョンマスターがこんなやばい奴だったなんて。
「おい、おれに従え」
「い、いやだ」
「おれは短気なんだ。そうだなここを海水でいっぱいにしてやろう。
溺れるか従うかそれまでに決めておけよ」
サクはそういって消えた。
足元にどんどん海水がたまっていく。
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。
そうこうしてるうちになんだか怒声ノイズが聞こえてきた。
「ちょっとサク!その子は私が狙ってる子なのよ。ずるいわ」
「おおー誰かと思ったらリリスじゃないか。そんな話よりいいことしようぜ」
「ちょ!やめてよ。朴念仁!」
バスッ、ドカッ、ガガガガガ…音声が乱れてなんだかわからない。
どうやら戦いがはじまったようだ。
リリスさんが助けに来てくれたのか?
というかサクと知り合いだったのか。
僕は透明な石で酸素を入れる金魚鉢を急いでつくる。
材料をタマちゃんとこに入れといてよかった。
海水はどこから流れてる?
短気らしいというのは本当で、大きな穴から海水がどんどん流れ込んでいる。
急いで作った金魚鉢をかぶって海流に逆らって泳ぎ出す。
すごい流れなのでなかなかすすめない。
落ち着け。
落ち着け。
落ち着け、ショウ。
そういえば海に落ちた車からの脱出方法をテレビで見たっけ。
ええと。
確か水が全部入ってからドアを・・・
ドアないじゃん。そうじゃない。
水が全部入ると・・・水の流れが弱まる!
これだ!
僕は一旦、天井付近に浮かび上がって確認する。
大きめな石のコップ型部屋を作って、たくさん空気を入れて沈める。
その中で流れが弱まるのを待つ。
明るいダンジョンだから水の中とはいえ、水流がよく見える。
だんだん流れが弱まって来た。
そろそろとコップごと移動する。
海流の流れ込んでいる大きな穴の傍まで来た。
よし!いける!
僕はコップから飛び出し、金魚鉢をすっぽり頭にかぶって泳ぎ出す。
光のゴーレムさえ一緒に流されているが、大きめの箱型のは動かないので足場にしながら前に進む。
ダンジョンの中に海水入れていいのかよ。
階段がなくなったからどっか他の入り口につなげたんだろうな。
ダンジョンは一か所入り口に繋がってればいいんだ。
出口が見えてるのに滑ってなかなか出られない。
石魔法で入り口の滑る石に取っ手をつける。
やばい、苦しくなってきた。息がもたない。
海水の入口からなんとか海中に這い出たが、だめだ、もう目がグルグルしてきた。
『クラゲ号』。
来てくれ。
頼む。
意識が遠くにいくにつれ、うっすらと船の形が見えた気がした。
そしてそのまま暗転した。
お読みいただき、ありがとうございます。
読んでるあなたも油断してました?フフフ。
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