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ダンジョンマスターに生まれましたが人間やってます  作者: 猫の靴下
二章 成人の儀
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3.銀行にいこう

迷いながら王都ギルドの隣にある銀行のほうへいってみる。

さすが王都だ。銀行も人がたくさんいて並んでいる。

なにやらなかなか終わらない人がいるようだ。


「いやだから全額返済をだな」

「あらそんなこといって♡いいんですよ無理しなくっても」

「返済したらまずいのか?」

「うふふ。そんなことありませんんけど・・・ねぇ」受付嬢がもじもじしてる。

「ですが、ダレンさんは最近稼ぎがいいって聞いてますよ?ギルドも厳しいのよ。

返済はもう少しまって、いえこの際たくさん借りていい装備をそろえるのもありですわよ?」


なんだろう?お金を返すって言ってるのになんで受付嬢は渋ってるのだろう?

僕の頭はハテナマークだらけだ。


ずっとおとなしかったタマちゃんは「またやってるわねぇ」と独り言を言い出す。

「え?またなの?お金は返してもらったほうがいいよね?」ぼくは小言で聞いてみる。

「稼ぐのがわかってる冒険者ならどんどん貸し付けて利息を稼いだほうがいいのよ」

「なんか聞いたことあるぞ」


貸し倒れにならない優良物件ってことなのか。

銀行でよく聞く晴れの日に傘を貸すってやつだな。


「では半分返済して、残りのお金は私と一緒にゴハンたべにいきませんか?」

「えええ!いいの?」

「おいしい食事ごちそうしてくださいね」

「も・もちろんです」


もはや冒険者は顔が真っ赤だ。ニコニコして日時を決めている。

これは助ける必要ないよね。むしろ怒られそうだ。

はやくしてくれないかなぁ。


「冒険者は女性と知り合う可能性がすくない職業。綺麗な受付嬢に声かけられたらそれこそ舞い上がってもしかたないですね」

「もてるのは大変だね」

「ダレンさんは優良な貢ぎ者になれそうですね」

「え?え?」

「ショウさんはそうならないでくださいね。ああいうのにひっかかると素敵な人と巡り合うチャンスがなくなります」


タマちゃんの声がマジ怖い。よくわからないけど「はい」と返事しておいた。




僕の番がやっときた。

受付嬢さんはにこにこしながら要件を聞いてくる。


「えっと銀行に預金をしたいので通帳がほしいです」

「本日は銀行の通帳を新規におつくりになるんですね?こちらの書類に記入願います」


書類に名前や職業、保証人の名前を書く。

保証人ゴールさんの名前をみたとたんさっきよりも急に丁寧になった。


「ゴールデン商会長のお知り合いだとは!ほんとありがとうございます。お預けになられるのは大金貨でしょうか?」

「はへ?大金貨って?」

「あ、すみません。大金貨っていうのは金貨の上の通貨になります。主に貴族や大商人が使うものです」


金貨より上の貨幣があったのか。とりあえず今日は通帳を作るだけなので銀貨1枚を入れておく。

なんだかすごくがっかりしたような顔をしていた。

だがすぐに営業スマイルになって銀行の使用方法を教えてくれた。


冒険者は通常のギルドでお金の出し入れができる。ただし金貨10枚まで。

それ以上になると防犯上あぶないのでギルドには置いておけないらしい。

日本の銀行とちがって宝石や高価な魔道具なんかも預かってもらえるらしい。貸金庫みたいなものかな?


とりあえず銀行デビューを果たした僕はほっとして商会へもどる。


レッドが僕よりも派手な服になっていた。白い服に金の縁取りがあるよ。うわ-。

よかった。僕のほうがましだ。

馬車からみた王国騎士団の服かっこよかったなぁ~



明日の『成人の儀』が終わったら【レンタル始めました】のイベントをやるとのこと。

レッドとケイトが並んでアベックのように歩き、僕たちレンタルした者たちは一緒にそのあとを手を振りながら歩くのだそう。

商会の人たちは見学してる人に【レンタル始めました】のチラシを手渡していくらしい。


『成人の儀』が終わってからやるのか?と思ったが、冠婚葬祭などのイベントでも使えるものをレンタルするのだそう。

王都なら裕福じゃなくてもそれなりの人が借りにくることもあるのかな。


めんどくさいけどバイトだと思えばいいか。





いよいよ『成人の儀』当日。

遠足前の子供みたいにどきどきして眠れなかった僕。子供みたいでちょっと恥ずかしい。


早起きしてパンとスープの簡単な朝食をいただく。

緊張してあまり食べることができない。

着付けをして、といっても男子は簡単だけど会場まで馬車で送ってもらう。




馬子にも衣裳っていうのかこれ?

レッドがかっこよく見える。派手だけど。

白地の服が赤髪に映えてどこかの王子様みたいだ。

それに合わせたように白地のドレスで並ぶ赤髪のケイト、こちらもお姫様のようだ。

こうしてみると二人ともお似合いだな。


そして女性陣がものすごく華やかだ。

背の高いデイジーは銀の髪をハーフアップにして水色のオーガンジードレスだ。銀の刺繍がしてある。

他のレンタル女性陣も貴族のように色とりどりのオレンジや黄色の花が咲いたようなドレスだ。



馬車に乗るために外へ出ただけで人が振り向いていく。

この集団が平民だとは思うまい。


このイベントはすでに大成功だな。にやりとするショウ。

まあそんなことよりも会場に向かわないとだよね。


リボンや花で飾られた馬車で会場に向かう。

まるで結婚式みたいだ。





開始のファンフアーレが響いて神職の代表が挨拶をする。

ここは神殿なので厳粛な空気が流れている。

次にこの国の王とお偉いさんの祝辞が続いて終了。


貴族はこのあとデビュタントというダンスパーティへ向かうため、神殿を後にする。

レンタル女性陣は男性に名前を聞かれて赤面していたり、平民だったことに驚かれたりしていた。


ぼくらは休憩後『スキル活性化』の儀式を受ける。

スキルの内容は本人しかわからないらしく、偽装する必要もなかったことに安堵した。

お互い何をもらったかでまたもりあがる。


「ショウは何が出てきたんだ?」レッドが話しかけてきた。

「めぼしいのは『土魔法』『認識阻害』だね」


「お?いいじゃん。俺のめぼしいのは『火炎魔法』『隠密』かな」

「なにぃ!隠密だと!くそーうらやましすぎる」

「へっへ~これで授業抜け出してもばれないぜ」

「なかなかせこい使い方だ。さすがレッドだな」


他の人のスキルも聞きたかったが、宣伝に歩き回る時間なので後にした。

さあ、アルバイトだ。

歩道をゆっくり歩いて帰るだけなんだけどね。





レンタルが好評だったので皆はモデルとして数日王都のお店でバイトするらしい。

僕はジョン爺さんへのお土産を買って、先にメルクル街へ一人で戻ることにする。


なぜってタマちゃんに魔石のありかを聞いたからだ。

まだ魔獣がまともに倒せないので、少しは魔石を吸収しておかないと僕らの存在が消えかねない。


「すみません。思い出すのに時間がかかってしまいましたが、最初タマのいた祠近く、自然発生の魔石ができてると思います。

前のマスターも自然にできた洞窟を利用してダンジョンを作ってました。なのでダンジョンはなくなってもその洞窟は残ってると思われます。」

タマは動けなかったので確認はできませんが、危険はないと思います」


「ダンジョンと一緒に崩れてるかもしれないのか」

「その可能性もあります」

「魔石があれば儲けものかな。行ってみよう」



お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも続きが気になる、と思っていただけたら、

『ブックマーク』と【☆】何卒応援よろしくお願いします。


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