35.聖女side--王都の事情
悪役令嬢の断罪は上手くいったようだ。
大勢の前ではなく、学園の中にある裁判所でひっそりと行われた断罪裁判。
王族の後継者が通う王立魔法学園ではそれなりの自治と裁判も認められている。
証拠や証人があることに気が付かずに大量の聖女に対する暴言の数々、嫌がらせ。
極めつけは階段突き落としの殺人未遂だ。
「わたくしに逆らうなんて。か、神が許すはずないわ」混乱してオレリアが叫ぶ。
「一体神様が何を許さないのでしょう?人間の些細なイサカイなんて気にも留めないと思いますが。
第一神様の話なんてしてませんし、許す許さないの話もしてません」
そもそも伯爵の娘オレリアなら、伯爵相当の地位にある聖女様のほうが位が高い。
オレリアは真っ青になって崩れ落ちた。
ここで決められるのは学園追放。
そして当然第二王子との婚約破棄。
犯罪者との婚約破棄は、当然正当な理由として認められる。
それ以外の罪の判断は王国の法にしたがい、きちんと沙汰が下る。
オレリアは反省を促すため修道院送りとなった。
オレリアの父、辺境伯は王都にいたがその報告に足が震えた。
こちらにも王からなにか罰があるのかもしれない。
王城で王が廊下を歩いてきたのであわてて、臣下の礼、片膝をついて頭を下げる。
「卿も大変だったな。子供を持つ親として今日は共に飲んで語らんかね」と王から声をかけられた。
あなたのせいではないと恩を着せられた、いや懐の大きさを見せつけられたのだ。
これでは歯向かうことができない。
辺境伯は防衛の要。逆らえないように上手に扱うのが王たる器だ。
◇
そしてもう一人震える第二側妃。
辺境伯に味方したわけではないが、情報を渡してしまったのは事実。
ちょっと第一側妃が困ればいいな程度の事。
魔導士も優先的に第二王子側に引き入れていたのに失敗した。
気が付けば全員、行方不明になっていたり辺境に飛ばされたりしていた。
側妃の陣営もかなり人が減らされている。
これはもしかしなくても、いろいろばれているのではと思うのが当然である。
すっかりおとなしくなっていた。
その後、第二王子は聖女フリルと婚約することになる。
今回の事で聖女フリルは第一王子に大きな借りをつくることになるが、
贅沢な生活を保障してくれるのだから断る理由がない。
聖女は第一王子に誓う。
「王家のため、国民のために尽力をつくしますわ。
そして愛しい人を利用しようと近寄る不届き者もおまかせくださいませ」
こうしてフローリア王国は暫しの平穏を手に入れたのであった。
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