29.来訪
金髪ガル君によって石棺の調査結果がわかったと教えてもらった。
中はただの石だったようだ。
まあ、それ僕がいやがらせに詰め込んだだけだけどね。
石だけで陽動なんて起こせるわけはない、というわけで研究者の頭を悩ます問題になったそうだ。
怒られそうだからとぼけておく。
◇
僕らはお小遣い稼ぎに狩りにいく。
たまにビックホーンという大きな鹿がでるので、そいつを倒してギルドに売り払う。
僕が担いでギルド解体所へもっていく。
そこにあの白い手袋を付けたセバスチャン執事さんがいた。
「おひさしぶりでございます。その節はお世話になりました」
「いえいえ。解体してる間は暇ですので場所を移動しましょう」
ぼくらはまた人のいない裏手の空き地へ行く。
「われらの種族は恩は恩、仇は仇で返す種族でございます。
自宅にお戻りになり、人間に弓や魔法で攻撃されて捕らえられたとお聞きし、焔さまは大変お怒りの様子。
本来はこの街を焼き尽くす『報復』にでられるのですが、なにぶんここはショウ様のお住まいの地。
恩のある御仁に知らせるのが筋だと参上いたしました」
「ひえっ。
い、いやまってよ。ならせめて攻撃してきたやつらだけにしてよ」
「そうはおっしゃられても我らには犯人の区別がつきませんゆえ。同族が犯した罪はそれなりに償っていただかないと」
どう考えても犯人はあの魔導士どもだな。
「僕は犯人を見てるし、そいつらを特定できたら街への攻撃はやめてくれる?」
「恩あるショウ様がそうおっしゃるのでしたら、主も納得されるかと思われます」
「あと、調査をするから時間をくれ、いやください」
「かしこまりました。では主の意思を確認してまいります」
そういって執事さんは去っていった。
まさか魔物襲撃ってこれのことじゃね?
とにかく誰かに相談しないとだよね。
相談といえば彼女しかいない。
◇
結局、僕ら4人と金髪ガル君も引きずり込むことになった。
彼しかこの襲撃情報を共有できる味方がいなかったからだが、リュウのことを説明したら叱られた。
ため息をつきながらガル君がいう。
「はぁ~。私たちだって鬼じゃないんだから、攻撃してこない魔物をむやみに殺したりしないよ」
「ご、ごめんなさい」
「かなり昔だが、人族、魔族、獣族の間で不可侵とする取り決めがあったんだ。
お互い住む場所が違うのですんなり合意したんだとか。
一応お互いの種族が迷い込んだときは速やかに返すという条件もあるんだよ。
まさかトカゲがドラゴンだったとはね。はぁ~」
ため息をつきながら魔導士たちを探してくれると約束してくれた。
ピンク髪の聖女の話も出て来る。
「彼女は魔物襲撃の理由を知らないようだ。時間と場所や何が起きるかはわかっているのにな。
『魔物って人を襲うものでしょ?理由なんてないんじゃない?』とのことだ」
ゲームではそのへんの説明がなかったようだ。
「先ほどの3者の取り決めだけど、他種族を襲った場合は『報復』をのむこと。という条件もあってね」
「ひぃ!」
「相手が『報復』と言ってる以上、正義は向こうにある。けど、ショウ君のおかげでとりあえずは交渉の余地があるってことだ」
ガル君はどうやら魔導士たちに心当たりがあるらしい。
「まあチャンスといえばチャンスだよね」ガル君はにやりと笑う。
「第二王子の派閥ですか?」
「さすがデイジーだな。第二王子は優しいので害はないが、いいように利用されやすいんだ」
第二王子の婚約者、悪役令嬢の父である辺境伯は戦上手で知られている。
そういった策にも詳しいだろう。
王家は反乱を起こされないように婚約を結んだつもりだが、逆に利用されるあるあるな話。
それを抑えていけるだけの器を王様は要求されるのだ。
いくらかきな臭くなってきたが、僕らは平民。
王族のもめごとには関係ないのだ。
◇
焔さんたちが襲ってこなければレッドは死なない。
何にも解決してないけど、解決の糸口が見つかったことに感謝した。
とりあえず女神フローリア様に祈っておこう。
ガル君が執事さんに会わせてくれといってきたが、彼がいつ現れるのかわからない。
交渉役は自然と僕になった。
直接会えないのなら、親書を手渡してほしいと頼まれる。
きっと敵対する気はないと書かれてることだろう。
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