25.魔物の子
一日早く帰ってこられた。早速投稿~
翌日。
王立魔法学園内、現地で怪しいところがないか下見をする。
地図を見ながらだが、タマは気配を感じ取っていた。
剣闘士大会の会場を見るグループと、
会場の周りをみて仕掛けがどこかにないか調べるグループに分かれて捜索。
おそらく会場そばならピンク髪関連の兵士がうろついてる可能性もある。
僕はタマちゃんに聞きながら移動してたけど途中で行き詰った。
どうやら気配は学園の外らしい。
「あれ?もう学園から外に出ちゃうよ?」
「おかしいですね。気配はもっと遠いです。
当日こっそり来るつもりなのでしょうか?」
当日は王族もいるし警備は厳しいはずだ。
それなら前日の夜だろうか?
「関係ないかもしれないけど、学校の外へいってみようか」
「魔物っぽい何か、魔石とかあるかもしれないしね」
僕はどんどん学園から遠ざかり、山道を歩いていた。
◇
レッドとケイトは警備達に見つからないよう近寄る。
ずっと聞いてても雑談しかしてない。
これはハズレかな?
ケイトはレッドから離れてデイジーのほうにいく。
僕らの連絡係はケイトだ。何かあったらガル君へ連絡することになっている。
デイジーは近寄って「今回だけでも警備の末端にくわえていただけないでしょうか」と直談判した。
ピンク髪は快くOKを出す。
「どうせ私のとこに来るのだから経験しとくのもいいわ」
「はい。よろしくおねがいします」
堂々とピンク髪を見張るつもりのようだ。
ピンク髪は昼寝してるようなので、今日は何もないようだ。
最後にショウを探したが、どこにも気配はなく見当たらなかった。
◇
<認識阻害>スキルを発動する。
どんな人だか認識されないスキルなんだ。
人がいるってとこはバレちゃうけど、ないよりはましだよね。
山の道なき道をいくと小さな石棺があった。
1メートル四方の小さなものだ。
「あの中に何かいます」ささやくタマちゃん。
僕は近寄って石に小さな穴をあけた。
「・・・・・う・・ママ・・・パパ」かぼそい魔物の声だ。
「大丈夫かい?」
「だれ?真っ暗でこわいよ」
「よしよし。助けるからいい子でいられるかい?」
「・・・うん」
石魔法なら得意だ。このまま・・・「お待ちください」タマちゃんにとめられる。
「とても強力な魔導士が数人います。今ここで魔法を使えば察知されるかもしれません」
「やばいな。最悪だ」
よくみると少し離れたところに、樹に寄りかかって休憩してる人が数人。
しかたなくか弱い声に声をかける。
「今すぐは無理みたい。でもきっと助けるよ」
「やだ・・真っ暗でこわい。お願い助けて」
「うむむ。なにか明るいものはないかな?」
「でしたら、ダンジョンで使う松明の魔法はどうですか?」
「よし。じゃあ少しどいててくれる?初めてなので失敗するかも」
「うん・・わかった」
<ダンジョントーチ>僕が唱えると、石棺の中に小さな灯りがともったようだ。
「小さいね。えへ。ボクまってるからね」
この『ダンジョントーチ』は本当に小さな火なんだ。
ほんとライター並み。
それでもずっと消えない火だから便利なんだ。
僕は石棺から一度離れる。
よく見ると石棺の下に何か模様が描かれているようだ。なんだろう?
「魔法陣のようにみえますね。おそらく転送の魔法かと」
「転送!?そんなことできるの?」
「はい。あれだけ高い魔力の人が揃えば可能です。転送先にも魔法陣が必要ですがね」
「それだよタマちゃん。僕らは学園の魔法陣を探そう」
僕はそっと山を降りて皆がいる学園へ戻る。
ちょうどケイトがいたので、事情を話して魔法陣を探してもらう。
魔法を使える人しか見えないのだそうだ。
そのうち皆も来て一緒になって探してもらったけど、暗くなってきたので明日探すことになる。
ケイトによると何か騒ぎを起こすことが皆の報告からわかったのだとか。
ただ、その騒ぎは陽動の可能性が強い。
「とするとやはり本命はお偉いさん方か」
「私はそっちをガル君と一緒に対処するわ」とデイジーがいう。
「じゃあ俺とショウは陽動をなんとかしよう。ケイトは連絡を引き続ぎ頼む」
レッドはそう言って、皆と確認しあって解散。
朝は軽食、昼はなし、なのに夕食は何を食べたか思い出せないほど食欲がなかった。
僕としては不安があったんだ。
あの石棺の子は魔物。
皆に見つかったら殺されちゃうんじゃないかって。
眠れぬ夜を過ごす。
あの子は大丈夫だろうか?
声しか聞いてない子だけど、涙がでてきた。かわいそうだ。
◇
僕は太陽と共に起きた。
むしろ眠れなかった。
急いで支度をして魔法陣を探す。
魔法陣は発動しない限り見つけるのは難しいそうだ。
『一念岩をも通す』
昔の人は正しい。
でも、くじけそうだよ、僕。
ケイトが僕に、ハムを挟んだパンとレモン水を持ってきてくれた。
やさしい。
レモンの酸味でやっと頭も動き出したようだ。
彼女が去っていき、僕は気合いをいれなおす。
「がんばるぞー-」空に向けて叫んで気が付く。
屋上近くの建物の壁に魔法陣がある!!!
地面じゃないんかい!!!
自分ツッコミをしつつ魔法陣をよく見る。
たぶんこれだ。
横から出して落とすつもりか?
魔法陣が動くのは剣闘士大会がはじまってからになるだろう。
さて、どうやって助けようか?
地面を掘るか。いやさすがに魔力が足りないか。
まてよ?建物の壁にくっついてるってことは建物の中は何の部屋だろう?
僕は建物の入り口から入って移動してみたら、ちょうどそこは物置部屋だ。かび臭い。
壁にぴったりくっつくように置いてあるものをどかす。
あとは一部の壁を柔らかくして出入りできるようにする。
やがてファンファーレが鳴り響き、いよいよ開会式がはじまったようだ。
その騒ぎの中で魔法陣が発動したらしい。
ずずずず・・・・ず・・どさっ
石棺は地面に落ちたものの、くずれてないらしい。丈夫だな。
魔導士たちもいないようだ。
僕は建物の壁を柔らかくして通り抜け、外に出てそっと獣のように近寄る。
運よく建物から30センチも離れてないとこに落ちたようだ。
石棺の壁を一部柔らかくして魔物の子をとりだす。
びっくりして動けなくなっているのでちょうどいい。
そのまま建物の中へ壁を通り抜けて引きずり込む。
あの魔導士どもは石棺を見にくるだろうから、全部セメントをつめてやれ。
セメントがなかったので石をびっしり詰めてやった。
そうしてるうちに魔物の子、トカゲっぽい?が目覚めた。
「あれ?お兄ちゃん。ボクがんばったよ」
「ショウさん、この子傷だらけでこのままでは危険です」
よく見ると体のあちこちに矢が刺さってる。痛そうだ。
小さなトーチを握りしめている。
助けるにしても人に見つかったらどうなるかわからない。
「とりあえず、ペンダントの中へ入ってもらいましょうか。ここなら魔素で傷をふさぐことができます」
「タマちゃん治せたんだ、お願い。」
「魔素で出来てる魔物限定になりますけどね」
「じゃあ移動するよ。怖かったら目をつぶっていてね」
「うん。あとボク小さいけどドラゴンだからね!」
やたら小さいドラゴン君をタマちゃんに任せる。
建物の外では石棺を壊そうと、魔導士たちが攻撃してる音が聞こえる。
「以外に硬い。なかなか壊せないな」
「いそげ。大会を混乱させる目的が果たせないぞ」
「あのドラゴン、落とした衝撃で暴れて出てくるはずじゃないのかよ」
「おいまさか死んでないだろうな」
「やっぱりあれ、ドラゴンじゃなくてトカゲだったんじゃね?」
魔導士ってよくしゃべるな。
やっぱりここは陽動か。
僕は念のため<認識阻害>スキルをかけて、そっと王子たちのいる剣闘士大会会場へ移動した。
レッドとケイトはどこにいるんだろう?
<認識阻害>スキルのせいで僕が見つからなかったみたい。
会場にふくれっ面のケイトがいた。
「あわわ。ごめんなさい」
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