19.病気
すがすがしいほど気持ちいい天気だ。
うっとおしい巨大亀がどこかにいってしまったので、安心して海で泳げる。
港の隣、海水浴用の砂浜が出来ている。
男性は普通に半ズボンで泳いでOK。
女性はかわいそうだが溺れる水着しかないんだ。
ケイトとデイジーは、そもそも泳げないので砂浜で遊んでいる。
レッドは砂浜で寝転がってるようだ。
僕はクロール・・・は疲れるので平泳ぎで魚と一緒に泳いでみる。
海から見上げた岩場の上に、金髪ガル君がいた。
どっからみても目立つな。
そちらに泳いで行って、海から声かけたら護衛の人にびっくりされた。
「泳げるのですか?」
「ええまあ」
パラソルの下には上半身を起こした金髪お人形のような子がいた。
この子がそうなのか。
護衛と金髪ガル君とお人形さんは一緒に休憩してたみたいだ。
「彼女は僕のかわいい妹なんだ」
「はじめまして。妹のバニラです。療養中ですのでこのような姿、お許しください」とかわいい声で挨拶してくる。
やばい。
やばいよ。
こんなかわいい子が病気だなんて世界が間違ってるぞ。
神様どうにかしてくれ。
恥ずかしいので、僕はもう一度海に潜って貝殻をいくつか拾う。
「タマちゃん、どうにかならないの?」こっそり聞いてみる。
「一瞬触れることが出来るのなら、短時間<接取>できそうですよ。効果は薄いと思いますが試されます?」
「一瞬か。やってみる」
海から上がって彼女に貝を渡す。
こっそり手に触れて<接取>と小声でスキル発動。
本当に数秒。
彼女は下をむいて貝殻を眺めてる。
「あの?大丈夫?具合悪くない?」とぼけて聞いてみたが、本当はものすごく焦ってる。
「あ、ごめんなさい。違うの。綺麗だなって。ありがとうございます」にこりと笑う笑顔が殺人的だ。
金髪兄貴ガル君が話しかけてきた。
「へー。綺麗な貝殻もらったね」
「はい。お兄様の友達はやさしい人が多いのですね」
なんだこの絵になる兄弟は。きらびやかすぎる。
めまいが起きそうなので、僕は海に潜ってにげた。
◇
「ねえお兄様。この貝殻は特別なものなのですか?」
「うん?どうして?」
「なんだか私すごく体が軽いの。なんだか病気が治ってしまったみたい」
どこからみてもただの貝殻であったが、本当にそれから彼女はたくさん食べるようになり元気を取り戻していった。
◇
その夜。僕は何かに呼ばれてる気がして目覚めた。
「ショウさん、外で誰か呼んでますね」
タマちゃんにも聞こえたんだ。誰だろう?
そっと宿を抜け出して、暗い砂浜に向かう。
漁をしてるのか漁火がよく見える。
「よく来たの。昼は世話になった」
「ぎくっ」
声にでちゃったよ。ということは・・・いつのまにか亀がいた!!
ぎゃあああああああああ!!
食われるのか!?まだ僕生まれて0歳なのにっ!
焦っていたら「ほっほっほ」と笑われる。
「欲張って大きな魔石を飲み込んだらつかえてしまってのぉ。
港の塀にぶつかったらとれるかと思ったんだがとれなかったんじゃ。」
「いや、危ないからやめてください」
「おぬしが何かして石を小さくしてくれたから、やっととれたんじゃ。ほれこれだ」
ぺっと魔石を吐き出す。
「うを!でかい」
「ほっほっほ。お若いのそれはお礼になるかの?」
「はい!ありがとうございます。こんな大きな魔石はじめてみました」
僕より大きな青い石がほんのり輝いてる。
昼間見たらきっとものすごく綺麗だぞ。
感動してたら亀は海に帰っていった。
なんだろうこれ。
竜宮城へは行ってないけど浦島太郎の気分だ。
「これ、吸収したらお爺さんになっちゃうのかな」
「いい亀さんでしたね。さあ吸収しましょう」
そっと手で触れて<吸収>する。
ものすごく体が温かい。
眠くなってきた。早く宿に戻ろう。
その眠気はすさまじく、宿まではたどりついたが部屋のドア前で眠りこけてしまうのだった。
翌朝、ドアが開かないので大騒ぎになり、平謝りするはめになるのであった。
◇
「これだけ大きいと、吸収もエネルギーを使うので眠くなるのは当然でしたね」
はやくいってよタマちゃん!
ただまあ亀が呑み込めないほど、大きな魔石が海底にはあるってことだ。
ものすごくいい情報だよね。
さて、先生の課題になんて書くかな?
お読みいただき、ありがとうございます。
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