18.海だ!亀だ!
海だ!磯の香りがする。
漁港だ!魚くさい。
なつかしいな。
海を見たことのない3人はびっくりしてる。
目を輝かせて海を見つめてる女の子もいいよね。
ニヨニヨしながら眺める。
ポット君の家に馬車を止めて、挨拶してから解散だ。
宿を確保しないとね。
「あの、よかったらうちに泊まっていきませんか?」
ポット君からありがたい誘いを受けたけど、狩りしたら絶対汚れるので丁重にお断りする。
普段の汚い格好で貴族の家に出入りできないもんね。
僕らは外観が綺麗な小さな宿に入った。
「いらっしゃい。4人様でしょうか?」
「2部屋2人ずつ空いてますか?」
「はい。大丈夫ですよ。今はお客様が少ないからどこでもあいてます」
「今は?何かあったんですか?」
「海に大きな魔物がでたせいで、海水浴客が減ってるんですよ」
「ギルドに依頼は?」
「組合長がしてると思います。ほっとけばいなくなるんですが、それまでは営業妨害なんですよね」
何とかしてあげたいが、海の魔物ってだけで情報がない。
あとでギルドによってみよう。
とりあえず海だ!
荷物を宿に放り込んで海に向かう。
う~みぃはひ~ろいな~おおきぃ~なぁ~♪
砂浜には海水浴客がいた。
中世の水着って、短めのワンピーススカート、ブルマー、長い靴下、サンパラソル。
手っ取り早く溺れるのによさそうな服装である。
海の中は危ないからか砂浜で寝ころんでいる。
僕らは、海水をなめて「からい~~」と叫んでいたり、海が足元の砂をさらっていく感覚を楽しんだ。
魔物がうろついてるとは信じられない穏やかな光景だ。
海を堪能してからギルドへ。
大きな体の元お姉さんが受付嬢らしい。
「国立専門学校の学生さんですね。ようこそエスピギルドへ。」
「こんにちは。早速ですが海に現れた魔物の情報をお願いします」
「かしこまりました。一言でいえば大きな亀ですね」
「亀!?」
「たいして悪さはしないのですが、なにせ大きいので港に来ると邪魔で船が通れません。
昼は砂丘にいるという目撃情報もあるので、お気を付けください」
「近づいても大丈夫なんですか?」
「攻撃はしませんが、巨体が動くと押しつぶされる可能性があります」
昼の砂丘か。絶対昼寝だろ!
「そんな大きいのにわざわざ狭い港に入ってくることないんじゃないかねぇ」
「ほかの大型海獣に追われてきたのかも」
「港から外は多くはないですが大型海獣が徘徊してますから」元お姉さんがさらっと怖いことを言う。
大型ってクジラくらいしか思い浮かばない。
とにかく明日昼、砂丘へ行ってみよう。
◇
宿にはお風呂があることはあったが、ほぼ水風呂だ。
ケイトがお湯を沸かしたと話してるのが聞こえた。
彼女も火の魔法なんだ。
髪の色がだいたい本人の属性なんだそうだ。
ぼくは黒髪。闇属性っぽい。かっこいいじゃん。
「普段はただの学生、その正体は闇の戦士だ。ふふふ」
「闇の戦士様。魔物に襲われています。どうかおたすけください」
「いいとも!さあ、ともに裸の王国へいこうではないか」
いつものごとくふざけながら風呂場へ。
女性陣の冷たい視線があったが、スルーする。
入ってから気が付く風呂の冷たさ。
ひやー-----!ちべたいっ!
ケイトが温めていたのは女風呂のほうだけだった。
そこ気が付けよ。
「男風呂に行くのはちょっと」と顔を真っ赤にして断られてしまう。
あたりまえか。
桶にお湯を作ってもらって、急いで入る。
相変わらず僕は火魔法が下手だ。
ふざけてる余裕はない。さっさと洗って出ないと寒い。夏だけど夜は冷えるんだ。
そのかわり食事に期待する。
お魚だああああああああああああ!!
日本人の魂が叫んでいる。
お吸い物らしきものから、チーズで巻いたお魚。洋風だけどお魚に飢えていたので完食。
酸味のきいた海藻サラダ、焼いただけのプリプリした貝もうまい。
地中海風トマトと一緒にエビが入ってる。いい香り。オリーブ油なのか、これ。
味気ない馬車での食事を我慢してよかった。
幸せだぁ~
◇
翌日。
漁港をうろついて話を聞きまわる。
ギルドの話とほぼ同じだ。
昼寝後、寝ぼけてるところを襲うのが一番いいだろう。
別に倒す気はないけど、とりあえず姿を確認しに行く。
ぽかぽかと絶好のお昼寝日和だ。
海風も涼しい。
情報どおり巨大亀は寝ていた。
でかい。
ひたすらでかい。
おまえは学校の体育館なのか?
顔どこよ?
4人でばらけて探しまくる。
端から端まで砂地を歩くのも大変だ。
あ、あった。
顔もでかい。
「おいおきろ」聞いてみたが起きない。
あまりに気持ちよく寝てるのでちょっとむかつくな。
タマちゃんが「ショウさん。<接取>試してみたらどうですか?」と内緒してくる。
「ぐっすり寝てるし、気が付かないかな?」
そっと首に触れて<接取>スキル発動。
デイジーがこちらに気が付いてみてる。
僕が亀に触れてるだけに見えるだろう。
身体の中に魔力がどんどん流れてくる。あれ?これ止めるべき?
やばい、また寝てしまうかも。
「触っても平気なのか?」とレッドが聞いてきた。
「大丈夫みたい」手を離してみたが、ぐっすりと眠っているのか起きる気配がない。
「これだけ大きいと、どっかいってくれるの待つしかなさそうよね」デイジーがいうので僕らは引き返す。
僕らが手に負える魔物ではなさそうだ。
そして偶然にも翌日から亀の姿が消えた。
漁港は活気を取り戻したのだった。
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