14.ピンク髪の子
入学式が始まる前に僕たち4人は寮に引っ越しだ。男女別の建物でお互いかなり離れている。
恐ろしいほど狭い二人部屋。
狭い部屋に細いベットと机が2つずつ。横に歩かないとドアまでたどり着けない。
小さい窓がついている。ここ牢獄かよ。
ベットの下は荷物置き場だが、大した荷物はない。
皆同じつくりのようだ。
同室の人はまだいない。
レッドのほうはどうかと覗いてみたら、いきなり僕のうしろに隠れる子がいた。
「同室の人が怖いから部屋替えてくれ」って泣きついてくる。
「レッドなにしたんだ?」
「なにもしてねぇ。なんで顔見た途端泣くんだ?」
落ち着いてもらって話を聞いてみる。
「すみません。僕はポットって言います。実は魔力量を感知できるスキル持ってるので、大量に流れてくるレッド君が怖いです」
「ああ。そういうことなのか。ならしかたねーな」
僕みたいな一般人にはわからないけど、レッドの魔力が大きすぎて怖かったらしい。
自己紹介をして、寮長に事情を話して僕と部屋を交換することになった。
ん?またレッドと縁ができるのかよ。
ポット君に何度もお礼を言われた。小柄で髪の毛が短くてちょこんとアホ毛が出てる。
向こうの部屋は誰が来るのかまだわかってないんだよね。大丈夫かな。
◇
入学式。快晴。
日本と同じ春が入学式なのかとおもったら、秋にも入学式があるんだって。
実力主義の技術学校なので、そのへんはゆるいらしい。
同じ部屋になった僕らは仕方なく一緒にいく。
「隣はかわいい女の子希望です」
「なにそんなあたりまえのことをいってるんだ」
ふざけながら歩いていくと「きゃー」という声がする。
振り返ってみたらピンク髪の女子が派手に転んでいた。パンツみえそうだ。
そして金髪イケメンが助け起こしている。
なんだこの絵のようなシチュエーションは!
ちょっと感動してしまった。
このピンク髪の女子はその後もしょっちゅう見かけるようになる。
目立つ髪だからしょうがない。
いつも転んでいたり、人にぶつかっていたりする。
目が悪いのだろうか?
ぜひ眼鏡をかけてもらいたい。
僕のハーレム魂に火が付いた。
ハーレムを作りたいわけじゃなく妄想を楽しむためにぜひ眼鏡をかけていただきたい。
まず声をかけなくちゃね。
よく見かけるのですぐに話せるのかと思いきや、ピンク頭は動きがはやい。
転んだと思ったらすぐいなくなってしまう。
声をかけるタイミングがみつからない。
なぜだ?
僕のが彼女を見ていることに気が付いたのか、レッドも不思議そうに聞いてくる。
「あの子なんだろう?」
「うん、僕も気になっていた」
「てかさ、あいつわざと人にぶつかってないか?」
「いやまさか。目が悪いだけじゃない?」
「わざとに見えるんだよな。ならなんで眼鏡かけないんだ」
僕らの頭が「?」で埋め尽くされる。
みればみるほど謎すぎる子だ。
『隠密』スキルで見ず知らずの女子を捕まえるなんて失礼なことはさすがにできない。
そう思っていたらポット君に学食で偶然会う。
「やあ。部屋の交換ありがとう」
「ポット君、俺と話しても大丈夫か?」
「うん。短い時間なら大丈夫。ここの卵を挟んだパンが絶妙で美味しいんだよ」
僕らも早速並ぶ。食欲のほうが先だよね。
そこにピンク髪の子も並んでいたが、あの金髪をみかけるといきなり走りだした。
「転ぶぞ」と言ってみたら、振り返って「あななたちモブには関係ないの」と言って行ってしまった。
「あの子、不思議ちゃんって言われてるんだよね」とポット君が言いだす。
言動が通じないというか、ちょっとおかしいらしいのだ。
ぼくは何となく悟った。
あの子転生者だ。
乙女ゲームか何かの設定だろうか。ああいうのって王子様狙いだよな。
ん?ここは国立だぞ?王族や貴族は王立魔法学園へ通うのになんでこっちなんだ?
転生者なら話してみたいが、恋のゲーム中は忙しそうだ。
ゲーム終わってからなら話せるだろうか。
◇
その願いはかなわなかった。
彼女はすぐに貴族の通う王立魔法学園へ転校してしまったからだ。
なんでも貴族の隠し子・・・こほん。貴族の子供だったことが発覚して無事に貴族席にもどれたんだそうだ。
話す機会がなくなってしまったが幸せになることを願う。
ゲームで起こる未来というものを僕はその時軽視していた。
ゲームはゲームだもの。この現実と似ててもそれはそれ。
ただ、未来に起こることもゲームに似ていたとしたら・・
この時はそこまで気が回らなかったんだ。
お読みいただき、ありがとうございます。
少しでも続きが気になる、と思っていただけたら、
『ブックマーク』と【☆】何卒応援よろしくお願いします。