13.猛勉強
ブックマークありがとうございます。
想像以上にうれしい。
ギルドの講習部屋を借りて勉強会をする。
僕とレッド、その他希望者数名が頭から湯気出して勉強中。
「えっと鉄鉱石の採掘をボツリヌウスとポツリメネスの兄弟が最初にはじめてその後・・」
うがああああああああ
ボツリヌス菌と遊んでる場合じゃないのに!
ぼくって勉強相当嫌いだったんだなと確認しつつ、これで基礎学力なのかとため息をつく。
本が何冊も積み重なっており、全部目を通さないと先に進めない。
この世界を全く知らない子供が大学入るようなものである。無理。
ううう・・タマちゃん助けて。
ドラちゃんを頼るのびちゃんよ!君は同士だ。
藁をもつかむ思い・・藁がない。手近に藁っぽい細い人間の手があるな。
うん?手?
「うわああ!レッドしっかりしろ!
大丈夫か?ちゃんと食ってるのか?」
こいつは日頃、飯をあまり食わない奴だから細いんだ。肉だけは大量に食べる。
「ふわわ~」と大きなあくびをするレッド。
「なんだ。生きてたのか。紛らわしい奴だ」
「勝手に殺すなよ」
講習の講師、ジョン爺さんから「隙あり」と何かが飛んでくる。
油断も隙も無い勉強会だ。
実技試験は棒の上にある的を落とせばいいだけなので皆笑顔である。
僕以外はである。ぼくは弓実技で全てはずすというノーコンなのだ。
レッドもノーコンだが、投げなくても巨大な炎が出せるので丸焦げにはできる。
ノーコンならもう魔法しかない。
よし!物理的にたおしてやるっ。
土魔法で的まで適度に土を柔らかく、そして地面をたたく!
水の波紋のように地面が揺れて棒ごと的を倒す。
「ちょ、反則じゃないのか?」
「魔法と物理両方使ってはいけないという規定はないな」と言われてOKとなる。
※ノーコン=ノー・コントロールの略。
主に野球の投手の制球が定まらず、狙った所にボールを投げられないこと
◇
あと必要なのはお金。受験費用だ。
確認がてら見にいった『ゴールデン商会』からの振り込みを二度見した。
予想外に大金だった。
これなら教科書・制服揃えても大丈夫だ。ぼくだって四則演算くらいはできるぞ。
残りの生活費はバイトしないといけないな。
他の3人は大丈夫だろうか?
レッドは学校行くのが嫌でプチ家出してたらしいが、学校にいくということで費用を確保した。
ただし彼の場合『爆炎スキル』を国家のために使うという制約つきなんだそうだ。
つまり戦争とか・・・家出してた理由に納得する。
このスキルがあってもほとんどの人は必要魔力が多すぎて使えないらしい。
レッドに関してはさらにノーコンだ。
たまたま発動しても後ろの味方に飛んでくるとかありえそうで笑えない。
女性陣はあたりまえだが実家があるそうで、そちらに頼むといってた。
ぼくの親ってどんな人だったのかねぇ。転生しちゃったから天涯孤独の僕。
あれ?僕だけぼっち?
いいもん、タマちゃんがいるもん。
気晴らしと称して渓谷に釣りに行って、そういう時に限って大量に釣れて魚まつりになったり、
『芸術の村』であのかわいいヒナと遊んでみたり、それなりに休息をとりつつ頑張ってみた。
『基礎学力試験』は全員学校の中に集合して受験することになった。
学校か。すごく楽しみだな。
おっと目的を忘れちゃいけない。
魔素を集める方法か装置。それをみつけなければね。
学校は王立魔法学園と国立専門学校がある。
2つとも王都より少し離れた学園都市の中にある。
王立魔法学園は貴族だけの学校で、マナーとか領地経営を学ぶとこらしい。
国立専門学校は能力しだいの実用的な学校なので、能力のある貴族も通うことがあるそうだ。
国立専門学校受験生は校門から校舎までやたら遠い道を歩く。
へばって休憩する人もいた。
ここは馬車乗り入れ禁止なので貴族だろうが平民だろうが皆が歩く。
これが最初の試験で校舎にたどりつけない人はお断りなんだそうだ。
つぎが僕が恐れる『基礎学力試験』。
やばい、緊張もあってやっぱりほとんどできない。
「ボツリヌス菌」の言葉が頭の中をぐるぐる回るだけだ。
やっと実技試験だ。場所が足りないのでここから男女別になる。
土をぼこぼこにして見事、隣にある的の棒まで倒してしまう。
あわてて土を平らに戻して埋め戻す。
「元気がいいね」と笑われてしまう。
隣までの距離がこんなに狭いとは思わなかったよ。
しばらくほかの受験生をみていたら「わああー---」と歓声がおこる。
レッドが燃やし尽くしたらしい。
うむ。歓声だよ。悲鳴じゃない。・・・・たぶん。
最後は面接。
面接官がなぜかギルド長の知り合いで、どんな冒険したか聞かれただけだった。
僕は説明がへただ。
イノシシに追いかけられて怖すぎてちびったことも正直に話すと、試験官はプルプルしてた。
やばいな。
これは僕が弱すぎて役に立ってないことばれたかな?
◇
これは落ちたな。
面接もそうだけど『基礎学力試験』は半分も答えを書いてない。それもおそらく間違いだらけだ。
受験が終わり、満身創痍の僕はいつもの渓流釣りをしながら学校にいけなかった場合のことを考える。
図書館に行く方法。魔石に関する師匠はどこでみつけようか。塾みたいなとこあるだろうか。
はあ~課題が山積。
そんな時に限って魚の食いつきがよく、臨時収入になるのであった。
ギルド経由で学校から手紙が届く日がきた。
ひえええええ。ど・どうしよう開けるの怖い。
手紙をもったままプルプル震えていたら、レッドが覗きにきた。
「なんでいるんだよ!」
「学校から手紙がくる日なんだからいるのあたりまえだろ」
それはそうか。
せーので開けた。
制服の注文や教科書の販売場所が書いてあった。
「へ?」これだけ?
受かった人だけに手紙がくるのだと後で聞いた。
まじか。
ドキドキした時間を返せ!
◇
僕らは狩りに行く。
レッド希望の牛肉ミノタウロスはまだ倒せないが、豚肉オークなら倒せるのではないかと思ったがこの辺にはいない。
しかたなく鳥肉のコットを捕まえに行く。
ニワトリのようにあまり飛べないのだがとにかく速い。
水辺にいるところを氷魔法で足元を固めて動きにくくしてから弓矢で倒す。
当然、取りに行くのは僕とレッド。泥と水とでグチャグチャになりながらとってくる。
泥まみれなので血もそんなに気にならない。
猟犬になった気分だな。
エルフのヒイラギさんはコットのヒヨコを飼っていたけど、人間でも飼育できるんだろうか?
そしたら養鶏所みたいに卵もお手軽にとれそうだ。
串焼きの店主に聞いてみたら養鶏所らしきものは元からあるそうだけど、野生のほうがおいしいのだそうだ。
知らなかった。
知らないことが多すぎる。早く学校いきたいな。
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