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ダンジョンマスターに生まれましたが人間やってます  作者: 猫の靴下
二章 成人の儀
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10.マスタートレント

数日後に『芸術の村』から招待状がとどいた。

街から離れて野営するのも慣れておきたいということで僕らは歩いていくことになった。


村に行くまでに泊まる場所がない。

どこかで一日野営をするため、防水機能付き一枚布のターフを購入。こういうときテントじゃないんだね。

と、思ったら女性陣はしっかり小型テントだ。

もちろん僕が荷物持ちですよね。

たいして重くないし女性だからしょうがないか。


森の中を抜けるので小型もふもふ犬魔獣がよく出てくる。


もふもふした犬を軽く蹴とばすと逃げていくけど、別の意味で罪悪感があるな。

逃げていくので、殺すよりはいいよね。

血を見ないで済むと思うと僕は少し大胆になるようだ。


他の3人、ウルウルしてる。その目はやめろ。

襲ってこなければ可愛いと思うよ、襲ってこなければ。


犬に関しては役に立たない3人を尻目にどんどん移動する。






夕方になったので、開けたところでテント設営。

犬しか敵がいないようなので、堂々と焚火をする。

干し肉と薬草のスープを作ってもらう。蹴とばし過ぎて足が痛む。

デイジーに『治癒』魔法をかけてもらう。

この魔法は傷専門に治すもので、病気には効果がないらしい。



いつもはここで僕とレッドのおふざけが発動するのだが、さすがに疲れたので交代で寝る。

枯葉に布をかぶせてベッドにする。

アルプスの少女は藁ベッドだったなと思い出しつつ就寝。


起こされなかったので朝までぐっすり眠ってしまった。

あれ?交代は?


星が綺麗で寝るの忘れたとレッドがいってた。

うそつけ。

僕もまだ眠い。あくびしながら村を目指す。


「帰りは馬車にしよう」誰ともなく言い出した。





『芸術の村』と大きな看板ができていた。

これも焼き物なのかな?凝ったデザインだ。

家よりも樹やオブジェの多い、森の中にいるような村である。


僕らが行くとほかにも数人買い付けなのか商人が来ていた。

露店のように人と話せる人も数人いて商談している。

皆お洒落な帽子をかぶってる。服も緑とキナリの自然だけど目立ついでたちだ。



前回と同じ護衛さんが声をかけてくる。護衛さんの名はヒイラギさんという。

名前を忘れてしまってるのは内緒だ。


「やあ!ショウ君。このまえはありがとう。おかげさまで絵や焼き物がいくつか売れたんだ」

「それはよかったですね!あの観光客のほうは?」

「そっちはまだまだだねぇ。まあぼちぼちやっていくよ」


そして広場のほうでヒヨコらしきもふもふな生き物を見せてもらう。

「これはコットといって鳥肉として食べられてる鳥のヒナだよ。小さいうちはかわいいから人寄せになるかと思ってね」


ケイトは大喜びだ。デイジーもおっかなびっくり触っている。

女の子が動物と戯れる姿っていいよね。絵になる。

そしてなぜか嫌がるヒナを抱きしめてるレッド。「かわいすぎる。連れて帰りたい」

勝手にやってろ。



「すごくいい村になりましたね!」

「おかげさまで」

「あとで村長さんから改めてお礼を言いたいとおっしゃってました。できたら今夜おひとりでお越し願えませんか?」

「え?一人でですか?」

「ええ、ほら人見知りですので大勢はちょっと」


ああ、そういえばここは元々『人見知り村』だった。

「そういうことなら伺います」と返事しておいた。



僕らは新しい『芸術の村』を堪能した。


ケイトは精霊の樹の下で静かに座っている。

女の子が精霊と話してる姿なんて、これはもう描くしかないでしょ?

スケッチブックを取り出して、大きな樹とケイトを炭で描いていく。


デイジーは新しい楽器を見つけて、店主さんに教わって練習していた。

ここ、楽器も作れる人がいるんだな。


レッドは鼻歌なのか?寝転がって何かの歌を歌っている。

あいつのことはどうでもいいか。



お昼は当然『うどん』をいただく。春らしく野の花の天婦羅もはいっていた。

さすがわかってるな。

うむ。これぞ日本の心だ。


夕方絵が完成する。

ヒイラギさんがその絵をみて感激してたので、一枚渡してあげたら「村の入り口に飾ります」といって持っていった。

ちょっとはずかしいんだけど。




僕らの昼の行動が気に入ったのか夕暮れには人が数人出てきて挨拶をしていった。

「音楽を愛する者は我らの隣人です」

「我ら『精霊の樹』の絵を拝見しました。なかなか素晴らしい」

などと話しかけてくる。


緑の枝を丸くしてゆりかごのような宿屋に泊まる。かわいらしい。

さすがに牢屋案は没になったか。

宿の食事も自然豊かなもので、焼き魚やキノコや卵の蒸し物、ちょっと日本食っぽい。ご飯はないけどね。

木の実のすいとんが主食のようだ。僕としてはなじみある食事だが、皆は食べたことがないらしく目が輝いていた。





夜になって皆解散して部屋にもどると、タマちゃんが話し出す。


「ショウさん、ここは森ダンジョンというものです」

「は?」

「おそらく村長さんはダンジョンマスターである可能性が高いです。気を付けてください」

「うええ。なんで今言うの?僕殺されちゃうの?」

「そのつもりならとっくに殺してると思いますよ。殺意は感じられませんので別のお話だと思われます」

「そ・そうなんだ。なら行ってもいいか」


何かのフラグが立てられつつ、

迎えに来た衛兵のヒイラギさんと村長さんの家に向かった。

『精霊の樹』の真下にある地下なのか。

なんでこんなところに?と思っていたらなんと村長さんはトレントの魔物だった。



「うわ、やっぱりダンジョンだった」僕はため息をつく。

「初めまして。冒険者のショウです」

「やはりばれてましたか。私はトレントの村長ダス」丁寧にお辞儀というか枝を差し出して握手をする。

「まだダンジョンになって日も浅く、エルフたちに協力してもらいながらなんとか経営してるダス」


あれ?ダスさんという名前じゃないのか。


「エルフなんですか?」ときいたら衛兵さんが帽子をとって「エルフのヒイラギです。よろしく」と言い出す。

エルフ初めて見たわ。耳がちょっととがっているけどほぼ人間じゃないか。


「ここは人間が近くに住んでるので魔素がすくなくて『精霊の樹』が育たないのですが、こちらのダンジョンのおかげですくすくと育っております。

 我らはこの樹の近くでないと生きていけないのですよ」

「我らはちょうど共生関係にあるのダス。私も生まれたばかりで力がないので助かっているダス」


「人間の皆様ともつかず離れずの関係ができたらいいと思ってるんですよ。

 私たちも人の持つ感性に刺激をうけてよりよい作品ができたらいいなと思ってます」

「そうダス。ショウ君はまだ生まれたばかりダスな?お礼もこめていいものをあげるダス」


そういって薄緑色、ペリドッドのようなきれいな魔石を手渡された。

あれ?僕がダンジョンマスターだってバレてるじゃん。


「まだ力が足りないだろうから吸収して役に立てるといいダス」



すごくいいトレント、いや村長さんだった。

そうか。何もお互い殺しあわなくてもなんとかなるんだな。

僕の目標というか生き方について、光が見えたような気がした。


あーでも人間と共生していたタマちゃんのダンジョンマスターは殺されたんだよな。

むずかしい。




あれ?そういえば『うどん』あるなら日本人がいたのかな?

聞くのに他の人がいたらまずいよね。

ああーせっかくのチャンスだったのに。


布団の上でゴロゴロ転げまわって悔しがるショウであった。



お読みいただき、ありがとうございます。


少しでも続きが気になる、と思っていただけたら、

『ブックマーク』と【☆】何卒応援よろしくお願いします。


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