僕の好きな朝
僕の家は朝が早い。
毎日6時には起きてニュース番組を見ながらご飯の用意をする。
分厚いブラウン管のテレビの下には、大きな黒いビデオデッキがあって、テレビ台とビデオデッキの隙間にとりためたテレビの録画が沢山押し込まれている。
お母さんが書いたビデオの名前は、可愛い文字が沢山あっていいなと思う。(ビデオは本の背表紙に当たる部分に付属のシールを張り付けることができて、自分で録画した番組の題名をそこに書いた)
そんなことを考えているうちに、僕の嫌いなお姉ちゃんが起きて来て、乱暴にリモコンを奪ってチャンネルを次々に変えた。
僕は、台所に立っている母さんのすぐ隣に手を伸ばして茶わんに盛り付けられたご飯を運ぶ。数は四つ。一番大きいのが父さんで、ピンクいのがお姉ちゃん。青いのが僕、白いのが母さんだ。
今日は母さんが贅沢をして朝からソーセージとそれから、砂糖のたっぷりと入った厚焼き玉子を焼いている。二口コンロの右側では、重そうな鍋でくつくつと味噌汁が沸いて、何とも言えないおいしそうな匂いがした。
それらが盛り付けられると、ちゃぶ台まで運ぶのは僕の仕事だった。
ちゃぶ台にはすでに布巾が置かれているが、お姉ちゃんは仕事をしないので母さんが怒って拭き、僕は茶わんを四つ持った状態で待ち、そっとそれを置いた。
全ての配膳が終わって母さんがやっと座ると「あれ、箸が無い」といって取りに行く。
僕たちは四人で毎日ご飯を食べる。大抵おかずは一種類一つの大皿で皆で分けて食べた。結構珍しいと思うのだけれど、ご飯を食べる時もテレビは付けて良かった。
僕はウインナーソーセージが好きだった。
母さんが朝から焼いてくれたウインナーは、皮が少し焦げていて噛むと煎餅のような感触があって、中から肉汁が溢れてくる。上にたっぷりとかかった甘酸っぱいケチャップがご飯をすすめた。これがめちゃくちゃに美味しくて、僕たち姉弟は残りの本数とご飯の残りを見て最後をどちらが食べるかでいつも喧嘩をする。ご飯が無いのにおかずだけで食べるのは禁止だった。
味噌汁にはジャガイモと油揚げが入っていて、これも好きな具だった。
寒い朝には、この塩っ辛い味噌汁がとても美味しく感じられる。
色の変わった所を切るため、輪切りのリンゴのような形になったジャガイモは、箸で刺すとホロホロと崩れて味噌汁に溶ける。
最後に溜まった汁をすすると甘ーい味がして、とてもいい。
朝ご飯はそんな感じ。