無能魔法遣い2
俺は、どこからか聞こえるモンスターの鳴き声に目を覚ました。ケモマリとジェリームだ、雑魚モンスターだけど、今の俺のヒットポイントは限りなく0に近いだろう。ワンパンで息絶えてしまう。
俺の人生……ここまでか。母さん、ごめんよ、無茶して村から出てさ。俺やっぱ駄目だった……。
「へい、人間さん。ここで寝てると風邪ひくよ」
「マリリン、つれてこ」
「うん、つれてこつれてこ」
……とうとう俺は幻聴が聞こえるようになったのか。ケモマリとスライムが会話をしてるような。
意識が薄れゆくなかでクレイアさんの顔を思い出したまま、ケモマリとスライムにどこかへ連れていかれた。
夢を見ていた。俺が英雄になる夢だ。人々が笑顔で
俺は女性にモテモテで、モンスターが現れても、ショータイムのように、一瞬で魔法で倒していく。
それで人からすごいすごいとチヤホヤされる。なんて最高なんだ。
「いいや、お前は英雄なんかじゃない」
エクスがいきなり現れ、俺に切りかかってくる。
「あああああああああああ」
思わず叫んでしまう。
「大丈夫か」
目の前にいたのは、緑髪に尻尾の女の子。
「お、お前は誰だ」
「私? 私は、ケモマリのマリーだよ。」
「ちょっと、マリー、事情説明が足りないよ」
「スライムだよ、連れて行こうっていったのはー」
水色の液体に包まれた人型の何かが喋っていた。
「お、お前ら誰なんだ」
「私たちはモンスターですよ。ケモマリとスライム」
「え、ちょ、どう言うことだ? 俺は勇者に倒されて、モンスターの餌になったんじゃないのか」
「私たち人間食べないもん!」
「やっぱりモンスターの印象悪いんですね」
「いやでもどうしてモンスターの言葉がどうしてわかるんだ、ここはもう地獄なのか。俺は地獄行きだったのか。チクショウ」
泣きたい……てか、泣いた!
「会話になってないよ!」
「マリー、無理もないよ。私達と会話できること自体なかったじゃない。いきなり私達は襲われるんだから」
「そうだね……」
そこに違和感をかんじた。
「どういうことだ? モンスターがいつも一方的に襲ってくるんじゃないのか」
「そんなことしないよっ! 私達は怖いだけなんだ、それで威嚇したのを勘違いされちゃって……言葉も通じないし」
「それで、最近も仲間のグリズミーが、手を挙げて叫んだら斬りかかられて」
「そりゃだめだ。人間からしたら攻撃行動だと思うからな」
んーなるほど、人間とモンスターの考えの行き違いは確かにあるかもしれない。なまじ言葉が通じないだけに。
「とりあえず、この村で私たちモンスターのことをもっと知ってよ」
「ここは、モンスターの村なのか。そんな話聞いたことがないぞ」
外に出ると、多くの人がいた。だが人間とは違うような所作がある。
「私たちモンスターはね、人間と同じように協力してくらしてんだ」
「俺には、お前らも含めて人に見えるぞ。それに俺はモンスターの言葉はわからない」
「んーだっていまこうして私と話してるし信じてもらうしかないじゃん」
「ケモマリ、こういうときは人間に使えない魔法を使えばいい」
「ああそうだ!ジェリーム頭いいじゃん!じゃあみててね」
そういってケモマリは腰を振り出した。フラダンスように柔らかい踊りで、なんだか脱力してくる。
「私の得意技、ふかしぎなおどり! どう!人間にはできないでしょ」
「確かに、人間にはできないけど微妙だな」
「じゃあ私が」
そういって、ジェリームは口から液体を吐き出す。
「あぶぶぶぶ」
モロに顔からあびる。
「口から水を吹き出したようにしかみえん」
「あれ、おかしいな。私たちの専用技なのに」
「確かに、特技を生かして入るんだろうが、お前らは雑魚モンスターと言われてるからな」
「ううっ、確かに私の部族は人間に乱獲されたり、どこかに連れてかれたりするよ」
荷馬車に乗せられてドナドナされてく様がすぐ頭に浮かぶな。
「じゃあ、あんたの目の前にいるのは何」
「僕を騙そうとしてる人間。何かの悪戯」
「どういうことー!?」
「疑り深い。わからない」
「こういう時は、リーダーのとこにつれてくしかないね」
「……お姉ちゃんなら解決できるかも」
「リーダー?お姉ちゃん?」
「ジェリームのお姉ちゃんはねっ、この村のリーダーでジェリームキングなんだよ」
そういって、僕はケモマリに手を引かれて、ジェリームのお姉ちゃんの家に連れてかれる。
みてくれは、みのの服を羽織り、冠をかぶったおじいさんだ。
「ほう、人の者、目覚めたか」
「あんたが、ジェリームのお姉さん」
「ワシは確かに、ジェリームの姉だ。そして人間はジェリームクイーンと呼ぶ」
「ジェリームが王冠被っただけにしかみえないぞ」
「ただのジェリームではない。ジェリームクイーンじゃ」
「キングはキングでも、ただのジェリームに王冠を乗せただけじゃん」
「ばかもの! ジェリームクイーンになるとな、光の息が吐けるようになるのじゃ」
「それすごいのか?」
ケモマリに訊ねてみる。
「すごいよ! 息系最強だよ? 輝く息より強いんだよ?」
「それだけじゃ、どれだけすごいかわからん」
「この村が吹っ飛ぶくらい……」
ジェリームが添える。
「ま、まじか。この村って結構広いぞ……」
「……まぁそうじゃな。使わない日がくることを祈っておこうかの」
鋭いリーダーの眼光が僕を射抜いてくる。
「それでなぜ、僕は呼ばれたんですか。」
「……込み入った話になるのじゃが、お主にはモンスターと人間の架け橋になってもらいたいんじゃ」
「……というと?」
「お主が我らモンスターの言語を話せるからの」
「……そ、そんなの無理ですよ。僕、勇者のパーティーから追放されたばかりで、信用ないんですよ。
これからどうしたらいいか」
「まぁ、いきなりとはいわん。行くところがないのであれば、ゆっくりしていけばいい」
「はぁ……しかし、なぜ人間と仲良くしようと?」
「元から我々は、戦う気なぞなかったのじゃ。それがなにやら、勘違いに勘違いが続いてな。ここまで大事になってしまった。しかし、この機会に終わらせたいと思うのじゃ。戦争に終止符じゃ」
「うんうん、リーダーの夢だもんね!」
ジェリームが僕に語りかける。
「アークは、なにができるの?」
「僕は魔法遣いだったけどどうも魔法が苦手で……味方に魔法が暴発しちゃうし」
「だったら魔物遣いになったら?」
「魔物遣い……僕に向いてるのか。魔物に嫌われてしまうんじゃないか」
「ううん、アークは優しいから向いてるよ。モンスターだからって私たちを襲ってこなかったし」
「ほう、それは良い提案じゃ。ジェリー。早速、マーダ神殿にいくのじゃ」
「マーダ神殿。なんてうさんくさい神殿なんだ。」
「仕方なかろう、裏の転職神殿なのじゃから」
ケモマリが添えて言おうとする。
「本家のダー……もごもご」
「それ以上は言っちゃダメ。クレームがくる」
ジェリームが液体化した手をケモマリの口につっこみ抑止する。
「俺もダーにいくのかと思った」
「モンスター向けに密かに、神官様と契約をした神殿なのじゃよ」
「……神官は人間なのか? 鳥の化け物とかそういうオチは?」
「失礼な! 正真正銘、ダーのほうからお借りした神官様じゃ」
「道を外れた神官なんじゃ……」
「とにかく! 向かうのじゃ」
モンスター達に囲まれてなぜか僕は、転職できる神殿マーダ神殿へと向かうのことでした。
山中を歩く僕ら。なぜか所々黒焦げになった草達の中を歩く。
「で、いつになれば着くんだ。
「まだかかるよぉ」
ルンルン気分なのか、スキップするケモマリ。
「勇者パーティにいたのに辛抱がないね」
「き、君は毒舌キャラか。そんなこといったってしょうがないじゃないか、暑いんだよ」
「無理もないよ、ここは焦土山。モンスターの火炎の息で土すらも熱気が止まないんだよ」
「ケモマリってよく知ってるよね。本当ならそのポジションっておバカキャラなのに」
「私、おバカじゃないよお。お気楽だけどね」
ドドーンと鳴り響く、合雷の様な音をたて、地面に岩石が突き刺さった。
「な、なんだ。」
「あ、火山石が落ちてきましたね」
「違う、こいつは、チョコロックちゃんだ。」
「おいしそうな名前ー。食べれるの?」
「食えねーよ、溶岩じゃねえか!」
「ボクを食べてもいいよ。灼熱で溶けるほど美味しいよ。」
「熱で溶けるだけな!」
「いい汗かいてますね、天然サウナにもなれます、チョコロックでございやす。」
身体は、黒茶色の、岩の水着を着た様な人、、、じゃなくてモンスターがでてきた。
何の目的?
三人に緊張が走る。
「おっと、あっしは敵じゃないですよ、ダンナ。あんたのとこのリーダーに頼まれて、道案内するように言われたんですよ」
「敵っぽい見た目なだけにややこしい」
「岩モンスターは確かにごついの多いですけども、根はいいやつばかりなんすよ」
「チョコリンはいいやつだよ」
「やめてくだせえ、てれますわ」
……ロックなのにチョコリンか。
名前に合わねえ。
「ケモマリのネーミングセンスぶっとんでるな」
「えへへ、可愛いでしょ」
どうしたら、褒め言葉と捉えられるのか。
「へいまあ、こんな見た目ですが、鍛治職人やってますんで、熱いもんは熱いうちに叩きましょう」
「そ、そうだな」
当たり前のことをドヤ顔していうチョコロック。
やったね、仲間が増えたよ。
でも役割すら全うできないボクよりは鍛治職人のこいつのほうがマシなのか。
なんでモンスターと自分を比較してしまうのか。
人としての居場所を感じられない僕に、魔物遣いで僕は居場所を手に入れられるのかな。




