擬人化した魔物でハーレム生活!?
拝啓、お母様へ。
暑い日々が続く中、いかがお過ごしでしょうか。
僕は、今、強力な味方達と一緒に魔王を倒しにいく途中です。誰よりも勇敢な勇者のグラウス、戦闘の治療をしてくる大賢者クレイア、腕っぷしは世界一のバーダン、魔法戦士のノリス。僕もこの中で魔法遣いとして戦っています! この戦いがおわったら、お母さんのクリームシチューが食べたいです。
アーク・ヒュンケル
その手紙を伝書鳩にくくりつけ、故郷へと運んでもらう。
母さん……元気にしてるかなぁ。
天を見上げて懐かしく思ってしまう。
「おい、アーク。何してんだ、早くそこの荷物持って歩けや」
「ごっごめん。エクス」
「お前は、ただでさえ使いモンになんねえ魔法遣いなんだ。このパーティで、カスに食わす飯はねえぞ」
すると魔法戦士ノリスも会話にのって僕をからかう。
「ひゃははは、バーダンやめときなよ。荷物番がいないと困るんだから」
「おう、ノリスが言うんじゃ仕方ねえか。後で、なあ頼むよ」
「あんたのデカすぎて無理だってーの。こいつの穴でも使ってろよ」
「はっはっは、それもいいかもな。俺のモンで風穴ぶちあけるくらいに貫いたら、こいつも何かでかい魔法が使えるかもしんねえぞ」
皆んなが僕を、ゴキブリのような目でみてくる。
そこに、クレイアさんは僕に手を差し伸べる。
「もうっ、皆さん。お下品ですよ、大丈夫ですか。アークさん」
「あ、ありがとう。クレイアさん」
クレイアさんは美しくてスタイルが良くて、僕を癒してくれる。
「魔法遣いなのですから、いざとなったら魔法でやっつけていいんですよ、私がすぐ治療するので問題ないです」
クレイアさんに微笑まれると、恥ずかしくて直視できない。
「はは……ありがとう……ございます」
この地獄のような生活の中で唯一のオアシスは彼女だった。
しかし、それもそう長くはなかった。
それは迷宮の城のボス戦。絶体絶命、一触即発の中で、
「おい、ぽんこつ魔法遣いなんとかしろ」
「そうだ、アーク。なにか最大級の魔法をあいつにぶつけろ」
「お願いします、アークさん」
皆、俺を頼ってきてる。
これは、汚名返上のチャンスだああああああ。
「くらえーっ! ファイアーエクスプリズン!」
巨大な魔法が僕から解き放たれた。
しかし、その魔法は、ボスではなく、バーダンとノリスに向かっていく。
そして彼らは炎に包まれた。
「アーク!おまえ、味方を裏切ったな。くそ野郎。
この雑魚ボスをやったあとはお前をやる」
エクスは、赤い光に包まれると、ボスへと向かって突進、ボスは黒焦げになり、灰となってきえた。
「おい、ボーダン、ノリス大丈夫か」
「や、エクス、こいつの魔力大したことないから。
最大級の魔法であってもファイゴミと変わらない」
「おうよ、ボーダン様にもこいつのヘナチョコ魔法は全くきかん。むしろサウナに入ってる気分だったわ。はっはっは」
なんてことだ、僕も全く彼らに魔法をとばすなんて考えもしなかった。ただがむしゃらだっただけだ。
しかも、憎いあいつらを殺すこともできなかった。
どうしようもない。
「とんだ、カス魔法遣いだな。もしかしたらお前、人間になりすましたモンスターか。本当のアークはもうこの世にいないんじゃないのか、なあノリス。」
「なんだって、そうか。だからお前、しゃべらなかったのか、」
いや、喋らないのは元からコミュ障だから。
「はっはっは、だからお前、魔法の魔力が低いんだな。腕っぷしも弱えし」
……そりゃ親は牧師だから低いのはあたりまえだよ。
「ご、ごめん許して、本当に暴発しただけなんだ」
「おいおい、今更そんな言葉聞くと思ってるのか。
あの世で償えよ。人間なりすましモンスターめ!」
「ひどい、俺はれっきとした人間だ! 嘘じゃない!」
「待ってください。皆さん。アークさんもわざとじゃないと言ってます」
「おい、クレイア。そう言うわけにはいかないぞ。パーティが全滅しかけたんだぞ!」
「なんでもします! 私がなんでもしますから! アークさんを許してあげてください! せめて!命だけでも!」
「クレイアさん! そんなこと言わないで」
「アークさんの優しさを私はよくわかってます。だから私は守りたいんです!」
「クレイアさん……」
エクスが手をぱんぱん叩く。
「はいはい、皆の衆。じゃあこうしよう。アークはこのパーティから追放し、二度と俺たちの前に現れない」
「なんだそれ、私たちは殺されかけたんだよ」
とノリス。
「オラも納得いかんぞ、エクス」
「まあまあ、ノリスもボーダンも話はまだ終わってないよ。クレイアの処遇はあとでじっくり考えようじゃないか、なあ」
エクスの下卑た表情がなんか嫌だ。
それが何を意味するかわからないけど、二人は納得したようだった。
「ま、とりあえずこいつは、追放だ」
エクスは剣を振りかぶり。僕に向けて切り掛かってきた。
「アークさーんっ!」
クレイアさんの叫び声が聞こえる。
エクスの速さに俺は何も対応できることがなく、視界が暗転した。