四回表 〜左安、遊併殺、四球、一ゴロ〜
チーム一の長身柳原翔汰も峰川と同様中学時代は野球部ではなかった。しかし経験はあってひと通りのルールは把握しており、長身と柔軟性が買われて一塁手に収まっている。
彼は元体操選手で将来を嘱望されていたが、身長が伸びすぎて志半ばで諦めざるを得なかった。海外遠征も経験していて肝が座っており、大舞台に強い男である。半分素人の状態での入部だったため上級生に馬鹿にされもしたが、『経験積んでてその程度ですか?』と跳ね返す精神面の強さがあった。
打撃が苦手で監督の直接指導の元に猛特訓を積み、本塁打も期待できる打者に成長した。しかしこの試合に限っては苦手なスライダーに翻弄されて良いとこ無しの状態だ。
「祥太郎〜、肩の力抜け〜」
三回裏一死満塁の状態から守備に着いた松原に声を掛けて肩を落とす仕草をしてみせる。彼は固いながらも笑顔を見せ、急遽マウンドを託された主将の背中を視界に入れつつ守備体制に入る。
「アイツ投げれるんだな」
「えっ? チームメイトなのに知らなかったの?」
何気無い柳原の呟きに一塁走者が反応した。
「あぁ。俺高校からなんだよ、野球」
「そ、そうなんだ」
哲の投球フォームが視界に入ったのでそこで会話は途切れたが、彼は後続を断って追加点を与えなかった。その後攻守交代で四回表の攻撃でバッターボックスに立ち、四球を選んで一塁には出られたものの得点には繋がらなかった。
総合高校|0010|1
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海洋水産|132 |6