二回裏 〜死球、投犧、四球、三振、左安☆☆、中安☆、遊ゴロ〜
身長百八十センチ体重八十キロと恵まれた体格である峰川誠は元々柔道部であった。総合高校のあるM市に隣接する▼▼町出身で、中学では柔道部団体戦の主将を努めて地方大会まで勝ち進んだ実績もあった。ところが総合高校柔道部は二学年上の部員が主格になった途端荒みだし、評判が拡散される前に入学した柔道部志願の新一年生にとっては地獄の選択となった。そのまま我慢して入部する者もいたが、峰川は暫くクラブ活動でお茶を濁していた。
『正捕手がいないんだ』
そんな状況の彼に声を掛けてきたのが二階堂であった。普通科の彼と商業科の峰川とは殆ど接点が無かったのだが、神経質で内向的な性分の割に変なところで積極性を発揮した二階堂の誘いで野球部に入部した。
今日の海里は最悪の状態だ……二階堂とバッテリーを組んでいる今では背番号二を背負って県内屈指のバッテリーに成長し、二人は瞬き一つで意思疎通ができるまでの信頼関係を作り上げていた。それだけに相棒の焦り、悔しいと思う感情が手に取るように伝わってしまい、打撃でも悪い方に発揮して三球三振を喫してしまう。
「まだ二回だ、そこまで焦るな」
監督宅師に窘められたところで簡単に気持ちの切り替えができずにいると、主将哲が声を掛けた。
「ミネは海里に集中しててくれ、攻撃は俺らで何とかする」
哲は気負い過ぎている峰川の背中を軽く叩いた。その甲斐あって彼自身の気持ちは幾分落ち着いたが、二階堂は本調子に程遠く更に三点を失ってしまう。
総合高校|00|0
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海洋水産|13|4