十三回表 〜遊直、三振、左安、三安、左2☆、二ゴロ〜
『選手の交代をお知らせ致します。九番、投手佐竹君に代わりまして横山君。九番、横山君』
安西と同様素晴らしい投球を披露してきた相手校は代打を投入して投手交代の選択をした。これは得点をもぎ取れる最後のチャンスかも知れない……安西は十二回裏の守備で完璧な投球を見せつけてまだ投げられるとアピールしている風にも見えたが……。
「加藤、安西の代打で入れ」
「はい」
一年生の控え選手は緊張した面持ちでヘルメットを被って出番を待つ。
「行定、準備できてるな?」
哲がマウンドに上がっている際にウォーミングアップを済ませていた二年生投手に声を掛けた。
「はい」
行定も準備万端といった返事をしてグローブをはめる。十二回裏の守備は三人で終わり、グラウンドに出ていた九人が勢い良く走ってベンチに戻ってきた。
「ナイスピッチング」
宅師は最後に入ってきた安西に労いの声をかける。加藤と行定が準備万端にしているのを見た彼は選手交代を悟った。安西はユニフォームを脱いでぶかぶかのシャツに着替え、木暮に用意してもらった氷嚢を左肩に固定する。
「田村、球よく見てけ。とにかく粘れ」
「はい」
先頭打者となる田村はバットを持ってバッターボックスに立った。監督の指示通り八球投げさせ粘りはしたが遊直に倒れる。続く加藤もフルカウントにまでは持ち込んだが、三振に倒れ二死となった。
「球がとにかく重いっす」
二人の言葉を受けた長嶋はバットを短く持ち、長打を狙わない打撃で安打放って塁に出る。
「哲、長嶋を帰してくれ」
我ながらこの男に頼り過ぎだな……そう思いながらも宅師は主将に一縷の望みを掛けた。
「はい」
哲は安定のポーカーフェイスで頷いてからネクストバッターズサークルに入って出番を待つ。続く勇樹も内野安打で二死一、二塁と得点圏に走者を進めると、哲は悠然と右バッターボックスに立った。バットを気持ち短めに持って相手投手が繰り出した初球の重いストレートを左翼線上に運び、長打コースとなって長嶋が生還した。
「「「「「おっしゃあー!」」」」」
ベンチ内も応援席も大歓声を上げ、哲は二塁ベース上で珍しくガッツポーズを見せている。これまでほとんど見せてこなかった主将の満面の笑みに総合高校側のボルテージは一気に跳ね上がった。次の打者小木で十二回表の攻撃は終わったが、初めてリードを奪う展開となった選手たちは元気いっぱいでベンチから飛び出した。
総合高校|0010012110001|7
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海洋水産|132000000000 |6
[選手交代⑧]
【総合高校】
①遊 中西勇樹
②二 中西哲
③左 小木凌太朗
④右 依田稔
⑤捕 森田雅俊
⑥一 大岩雄星
⑦三 田村薫
⑧投 安西有
打 加藤智人
⑨中 長嶋徹
【海洋水産】
①中 芹澤
②遊 丸山
③右 武田
④捕 塙
⑤左 竜﨑
⑥二 望月
⑦三 八尾
⑧一 戸塚
⑨投 鈴木




