十一回裏 〜四球、右飛、三振、一ゴロ〜
一塁側の応援席は総合高校の生徒、教諭、保護者、卒業生が数多く集まって熱気溢れる応援を見せていた。その前方には応援部員、ベンチ入りできなかった野球部員、木暮以外の女子マネージャーに混じって料理部員の女子生徒も野球帽を被って声援を上げていた。
料理部副部長の安藤カンナが木暮と親しくしているのがきっかけで接点ができ、時々調理実習室を共有する機会が増えていった。そうなると選手たちとも徐々に親しくなっていき、料理のできる選手たちと一緒に料理をしたりお弁当などを作って応援したりと交流を深めていた。
彼女は建築デザイン科なので依田と大岩とはクラスメイトとなり、哲と同じ○○市出身で小学校が同じであった。中学三年間のブランクの後に再会した哲は身長も伸び、細身ではあるか逞しい男子高校生に成長していた。それにときめきを覚えていたが、地元に残るわだかまりのせいで学校以外での交流は控えている。
「それにしても暑いよね〜」
料理部員の女子生徒の一人がうちわで首筋を仰ぎながらタオルで汗を拭う。
「おにぎり腐ってなきゃいいんだけど」
部長である女子生徒は差し入れしたおにぎりを気にしていた。
「くれちゃんクーラーボックスに入れてたから大丈夫だと信じたい」
「もしくはもう食べ終わっててほしい」
彼女たちはそんなことを言いながら守備に付いている野球部員たちを見つめている。そんな心配をよそに彼らは元気一杯のプレーを見せており、食中毒を起こしている様子は無い。安藤はその会話に参加せず、一、二塁間にいる哲を真剣な眼差しで見つめていた。三回途中から九回までマウンドに立ち、再び二塁手としてエースの背中を守っている。
高校に入って野球部との交流で彼の人となりが見えてきて、リーダーシップの裏で誰にも見せない努力と葛藤をご近所の特権で目にする機会も僅かながらあった。しかし哲はそれを晒すことなく、ポーカーフェイスで仲間たちをまとめる役割を黙々とこなしている。
『今見たこと、誰にも言わないでくれな』
彼女は一度だけそう言われたことをふと思い出していた。
総合高校|00100121100|6
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海洋水産|13200000000|6




