六回表 〜四球、三犧安、左中3☆、三振、三振〜
県南部の工業地帯K市在住の小木凌太朗は、宅師潤一郎の野球部監督就任に関係なく総合高校機械溶接科への入学を決めていた。工業地帯内にある造船工場の現場監督を努めている父親の背中を見て育っているため、自身も自然とその道を目指すようになっていた。
野球部への入部も中学時代の流れでそうしただけの話で、正直に言えば中学時代で一度もレギュラーメンバーに入れなかった自身が、高校の野球で先発出場メンバーとして試合に出られるとは思ってもみなかった。
『リョウはきっと遅咲きなんだろうな』
同じ機械溶接科で一番の仲良しである勇樹は、小木の手相を見ながら笑っていた。彼の掌には横一文字に駆け抜ける“マスカケ線”と呼ばれる相があり、織田信長、徳川家康といった有名武将にも備わっていたことで『この子は大物になるよ〜』と親戚たちも嬉しそうに言っていたことがある。
子供の頃から線が細く、鍛えても鍛えても筋肉が付きにくい体質であった。中学時代はそれが災いし、いくら食べても運動しても『努力が足りない』と付かない筋肉だけで判断されてしまっていた。多くの一流選手を育て上げ、過去九回甲子園で指揮を執ってきた宅師は彼の真の実力を見落とさなかった。先発出場メンバーに入れたのは三年生になってからだが、それが開花する前の一年生の頃からベンチ入りをさせていた。
野球はここで辞める……そう決めてこの大会に臨んでいる小木は、準決勝までは快進撃の立役者となっていた打撃もこの日は鳴りを潜めている。
「こういうのは日替わりメニューと一緒だ」
それに焦りを感じていた彼に向け、同じく高校で野球を辞める主将哲が落ち着かせるように背中を叩いてきた。自身の前の打者である彼が冷静に四球を選び、回ってきた自身の打順で右バッターボックスに立つ。
監督からこれといった指示は無い、小木は投手の動きに合わせてバントの構えを見せた。どストレートを投げ込んできた相手のエースは驚きの表情を見せ、チャンスとばかりバットにコツンと当てたボールが三塁線内をコロコロと転がっていく。
「八尾っ!」
相手捕手で主将の塙の声が乱れた守備に活を入れる。その間必死に一塁線上を駆け抜ける小木の足と相手三塁手の送球との一騎打ちは……。
「セーフ!」
無死一、二塁。総合高校にとってビッグチャンスが訪れた。
総合高校|001001|2
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海洋水産|13200 |6




