グラウンド整備
【三回裏、守備の途中体調不良で離脱した総合高校の投手二階堂海里は応急処置の後近くの病院に搬送された。診断の結果脱水症状を起こしていたことが分かり、戦線復帰は難しいが命に別状は無いとのこと。今はまだ病院にいるが、当日中に退院はできそうだ】
【総合高校】
①遊 中西勇樹
②投 中西哲
③左 小木凌太朗
④右 依田稔
⑤捕 峰川誠
⑥一 柳原翔汰
⑦三 田村薫
⑧二 松原祥太郎
⑨中 群滉聖
【海洋水産】
①中 芹澤
②遊 丸山
③投 武田
④捕 塙
⑤左 竜﨑
⑥二 望月
⑦三 八尾
⑧一 戸塚
⑨右 ウィルソン
前半戦を終え、選手たちはベンチに下がってグラウンド整備が終わるのを待つ。灼熱の太陽の下で試合をしていた選手たちからは汗が迸り、水分補給や着替えなどで後半戦に向けての準備を進めていく。
“野球は九回二死から”という神話めいた格言もあるが、実際そんなものは奇跡を待つレベルに確率が低い。過去九回甲子園を経験している名将宅師はそれを身を以て知っており、一度流れが切れた六回の攻防次第で試合はほぼ決まると選手たちに何度も教えてきている。
「何度も言ってることだが、次の回で何が何でも点を取るぞ」
「「「「「はいっ!」」」」」
「相手の失策でも併殺崩れでもいい、策や形なんか気にするな」
「「「「「はいっ!」」」」」
選手たちも挽回が可能なのはこのタイミングしかないことは重々承知していた。先攻の特権を活かし、点差が開いているという相手の余裕を突いてやる! 彼らはそんな気概を胸に反撃の狼煙を上げようとしていた。グラウンド整備もほぼ終わり、この回の先頭打者哲がヘルメットとバットを手に準備を始め、ひと足先に外に出ようとしていた。
「哲」
宅師はそんな主将の動きがやや勇み足に見えて声を掛ける。
「はい」
彼は普段通りフラットは表情で振り返った。俺の方が浮足立ってるかもな……そう思わせるくらいに哲から気の乱れは感じさせなかった。
「とにかく塁に出ろ」
「はい、ついでなので投げさせてやります」
そう言った彼は劣勢ですら楽しんでいる風であった。急遽立たせているマウンド上でも淡々とした投球で相手打線を翻弄している。才能はあるのだが本人はこの大会で現役から退くことを決めており、家業を継ぐために実業団や大学からの推薦オファーも全て断っていた。
「ああいうのが大物になるんだけどな」
宅師は細身の背中を見つめながら独り言を呟いた。
【試合途中経過:五回終了時】
総合高校|00100|1
ーーーーーーーーーーーー
海洋水産|13200|6




