五回裏 〜三安、一ゴロ、一直、三振〜
中学時代は投手として県大会と地方大会を優勝で飾って全国大会出場の切符を掴む立役者となり、一躍近隣有名校の注目選手となった田村薫。かつて宅師が陣頭指揮を執った甲子園常連校であるF県の高原学院や、県内屈指の強豪海洋水産高校など複数の学校から推薦のオファーが殺到していた。
ところがそれを全て蹴って地元M市の総合高校を選び、共に野球をしてきた群を誘って野球部への入部を決めた。一学年上の先輩たちは宅師潤一郎の名で集まっただけあって有名無名関係なく実力派が揃い、そう易々とレギュラーを勝ち取れないのは見て取れた。
『野手転向しないか?』
監督のひと言であっさりと投手を辞め、確実にレギュラーの座を掴むためさほど得意ではなかった打撃練習を地道に積み上げていった。その努力が実って一年生夏の大会で背番号十六をもぎ取って二学年上の引退で群と共に先発メンバーに入り、学年リーダーとして次期主将の期待もされている。
エース二階堂を欠き、投手経験の乏しい現主将哲はマウンド上で黙々とピッチングを続けていた。とんでもなく外に逃げるスライダーを主体にしたピッチングスタイルで相手打者を翻弄し、三回途中から無失点に抑えている。
自身よりも細身で女の子みたいな顔立ちをしている先輩の背中を見守りながら守備に着いていると、キンという音を立てた打球が守備範囲内に飛んできた。
「えっ⁉」
雑な守備をした訳ではない、多くの足跡で乱れきった土のグラウンドはデコボコになっていた。ちょうどその窪みにボールがバウンドして打球の方向が変わり、構えていた場所から体一つ分ずれてしまう。
とにかく逸らすな! 必死に対応して回り込みはしたが、体で抑えるのが限界でボールは前方で跳ねた。勢いの死んだボールを右手で掴んで体制を崩しながらも、一塁を守る柳原めがけて送球する。
「セーフ!」
内野安打を許してしまった田村は悔しそうに天を仰いだ。
総合高校|00100|1
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海洋水産|13200|6




