【漫才】絶対にへりくだりたくない人
ツッコミ「どうも〇〇です。よろしくお願いします」
ボケ「ちょっと相談があるんだけどさ」
ツッコミ「え、なに?」
ボケ「俺さ、お前から金借りてたじゃん」
ツッコミ「うん、貸してたね。五万円ほど貸した覚えあるけど」
ボケ「あれさ、返したくないんだよね」
ツッコミ「は?」
ボケ「どうしても返したくない。ダメかな?」
ツッコミ「いやダメでしょ。借りた金はちゃんと返しましょうよ」
ボケ「いや、ぜってー返さねえ! ビタ一文返さねえから!」
ツッコミ「いや返せよ! 借りた金は返せって!」
ボケ「それどころか、俺は今後いっさい誰にも頭さげねえし」
ツッコミ「はあ!?」
ボケ「先輩や上司にもいっさい頭さげない。俺は今後、誰にもへりくだらないって決めたから。それ、ここで練習させてくれる?」
ツッコミ「いや、なに言ってんだよ。ちょっと意味わからないんだけど」
ボケ「まずはアルバイト編からいきます。ピンポーン」
ツッコミ「え?」
ボケ「早く家の人やって。ピンポーン」
ツッコミ「家の人って。しょうがないな。はい、どなたですか?」
ボケ「どうも、ヤバイーイーツです」
ツッコミ「え、ヤバイーイーツ? もしかしてウーバーイーツですか?」
ボケ「いえ、ヤバイーイーツです」
ツッコミ「ヤバイーイーツ? 聞いたことないけどな。とりあえず、ドア開けるか。ガチャ」
ボケ「オラーッ!」
ツッコミ「うわ、なに? 投げた?」
ボケ「どうも~ご注文のラーメンをお届けに参りました~」
ツッコミ「いや、ご注文のラーメンって……いま投げたよね?」
ボケ「はい、投げました。むき身で持ってきたラーメンを丼ごとぶん投げてやりました」
ツッコミ「いや、ダメでしょ! もう食べられないじゃん!」
ボケ「でも、あなたの顔めがけて直接ぶん投げたので」
ツッコミ「余計にダメじゃん! やけどするじゃないか!」
ボケ「でも味はしましたよね? 醤油の味しましたよね?」
ツッコミ「いや、まあ味はするだろうけどさ」
ボケ「はい、食べたー! はい、金払えー!」
ツッコミ「いや普通に食えてねえから! まず謝れよ!」
ボケ「うるせえ! 誰が謝るか! いいからさっさと金を払え! ナイフ、シャキーン!」
ツッコミ「いや、刃物って。それもう強盗だよ」
ボケ「いいから払え! 早くしろ!」
ツッコミ「乱暴だな。いくらですか?」
ボケ「二千円だ」
ツッコミ「じゃあ、千円札二枚で」
ボケ「よこせ! ひい、ふう、みい……。よし、全部あるな」
ツッコミ「なんで“みい”まで数えたんだよ! 千円札が二枚つってんだろ、二千円は!」
ボケ「じゃあな! またのご利用をお待ちしてるぜ!」
ツッコミ「するかボケ!」
ボケ「いまのがヤバイーイーツ編です。どうでしたか?」
ツッコミ「いや、どうでしたかって。もう完全にヤバイーヤーツだったよ。ただのやばいヤツだったけど」
ボケ「でも、へりくだってなかったでしょ?」
ツッコミ「まあ、へりくだってはいなかったけどさ。でも人としてどうかと思うよ」
ボケ「では、つぎは医者編いきます」
ツッコミ「医者編?」
ボケ「先生。ちょっとお腹が痛いので見てほしいんですけど」
ツッコミ「俺が医者やるのか。どうしました?」
ボケ「お腹が痛くて、熱があって、顔がブサイクで女にモテないんです」
ツッコミ「後半はどうにもならないですけど、とりあえず見てみましょうか。まずは口を開けてください」
ボケ「誰が開けるかよバーカ! バカ、バカ、バーカ!」
ツッコミ「えぇ……」
ボケ「いいからお前は黙って注射でもしてればいいんだよ! 早く何か打て! 俺に注入しろ!」
ツッコミ「いや何かって言われても。その前にちゃんと診察しないと」
ボケ「うるせえ! わかってるぞ! どうせガンなんだろ?」
ツッコミ「気が早いよ。ただの風邪かもしれないでしょ」
ボケ「いや末期ガンなんだ! 近いうちに俺は死ぬ! 半年もたねえ!」
ツッコミ「悲観的な患者だな」
ボケ「さあ早く俺の心臓に注射を打ち込むんだ!」
ツッコミ「いや心臓に注射って。映画でしか見たことないぞ。ザ・ロックでニコラス・ケイジがやってるとこしか見たことねえわ」
ボケ「いいからその注射をよこせ! ふん!」
ツッコミ「やめなさいって」
ボケ「テンテンテン、テン、テンテン♪ 心臓に注射、ブスッ! うっ!」
ツッコミ「真似しなくていいから。名場面だけどさ」
ボケ「その結果ハゲるっていうね」
ツッコミ「いや、すでにハゲてたよ。ニコラスは注射打つ前からあの頭だったからね」
ボケ「医者編終わり! どうでしたか?」
ツッコミ「いや、どうでしたかって。ニコラスのハゲをいじっただけじゃん」
ボケ「ニコラス・ケイジさん、本当にごめんなさい」
ツッコミ「そこはへりくだるんだ」
ボケ「俺ね、やっぱり思いました」
ツッコミ「なにが?」
ボケ「人間へりくだって生きていくのが一番だって」
ツッコミ「うん。それが一番無難だね」
ボケ「まあでも、お前に金は返さねえけどな」
ツッコミ「いや返せよ! いいかげんにしろ!」
二人「どうもありがとうございました」