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七転八倒のストライカー  作者: 浅見 仁
第一章 サークル転移
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第3話 職業

さて、職業の確認だ。


この不思議な力を解明することが、この不可解すぎる状況を打破する一番の近道だ。

調べ尽くさなければ。


皆にはもうモノリスの裏面に、彫られている文を見せ、スキルの発動方法までを口で説明したところだ。

今はモノリス前の広場にて、皆は座って俺の話を聞いている。


「ーーとまあ説明は以上だ。じゃあ、早速各自確認に入ろう!」


職業の確認が始まった。

始めは職業の確認にあたって、大きく3つの班に分けている。

先程既に発動できていたうっちーさんこと内田金太、我がサークルの秀才・清水沙也加、そして俺をそれぞれ班長に据えた形だ。

さらに職業をざっくりタイプ別に分け、以下の3つの班に割り振った。


◎:班長


【近接戦闘系?班】

◎内田金太 大4 ≪ 超人 ≫

・上野柑奈 大2 ≪ 獣拳士 ≫

・安森全太郎 大2 ≪ 探索士 ≫

・羽賀和也 大1 ≪ 剣豪 ≫

・壁山修 大1 ≪ 重戦士 ≫


【魔術師系?班】

◎清水沙也加 大3 ≪ 青術師 ≫

・加藤真一 大3 ≪ 赤術師 ≫

・工藤駿 大2 ≪ 黄術師 ≫

・山鉾陸 大2 ≪ 灰術師 ≫

・倉持風香 大1 ≪ 緑術師 ≫


【特殊技能?班+生産系?班】

◎俺(古谷纏)大3 ≪ 星導鎧師 ≫

・重田遥 大3 ≪ 多重結界師 ≫

・水瀬雫 大2 ≪ 戦乙女 ≫

・桃ノ木蘭 大2 ≪ 植物博士 ≫ 

・三谷奈緒 大1 ≪ 聖女 ≫

以下、生産系?職種

・宮島美保 大3 ≪ 料理人 ≫

・小島一鉄 大1 ≪ 合成士 ≫


諸々把握しているということで、俺のところが一番多い7人となった。

俺だって、まだまだ分かっていないことが多いのだが。

色+術師系は魔法使いっぽいということで、沙也加に任せた。

うっちーさんのところは職業からなんとなくイメージできそうなので、手が空いているうっちーさんに任せた。


「それじゃやっていくか!まずは危険そうなスキルがないか確認したい。

それぞれ念じてみて、頭に浮かんだスキルを教えてくれ。くれぐれも念じるだけで、使用しないように。」


「「「は〜い。」」」


少し時間が経って、雫が口を開いた。


「私は『槍術』です。攻撃スキルってやつですかね。」


お、雫は攻撃職なんだな。確か運動神経がめちゃくちゃ良かったはずだ。

以前高校時代、バレーボールで全国大会に行ったことがあると言っていた。


「ウチは『魔法障壁』やね。強そうなんうらやましなあ。」

同期で大阪っ娘の重田遥がそういった。153センチほどと背が低いが色々出るところが出ているので、他所のサークルにも隠れファンがいる。

遥は名前からして防御系の職種なのだろう。多重ということは色々応用が効きそうな職種なのかもしれない。


「私は『植物操作』と『植物鑑定』でした!2つもあるよ!」

蘭が嬉しそうに飛び跳ねる。どことは言わないが、かなり青春的なものが揺れておる。

てか蘭は既に2つスキルがあるのか。スキルが増えていくこともあるのだろうか。


「私は…『回復魔法』でした。1つだけですね。」

みっちゃんこと三谷奈緒が言った。先ほどのこともあってか、まだ調子が戻っていないようだ。

聖女という名前から察するに、奈緒は回復職なのだろう。


「俺っちは『合成』っすね。木とか石なんかの材料が必要みたいっす。」

そういうのはみんなの後輩、小島一鉄。

合成士というのがどこまでのことができるか分からないが、貴重な生産職のようだ。


「あたしは『識別』と『料理』の2つだね。あたしも材料がないと何もできないかな、調理器具もないし。」

と我らがオカンこと宮島美保が言う。いつも合宿の朝は簡単な朝ごはんを早く起きて作ってくれていた。

酒をたらふく飲んだ後の、美保の味噌汁が一番美味いんだよなあ。


「なるほど。ありがとう。ちなみに俺は『部分鎧化』と言うスキルだ。」


「纏さん早速使ってみたいです!植物操作!」


「ああ、分かった。と、その前に一鉄と美保はその辺に生えてるものや、落ちている物を集めてみてもらっていいか?もちろんスキルも使えそうなら試してみてくれ。」


「了解っす!」

「りょーかーい。」


「あ、私も槍になりそうな物がないか探してきます。」


その後、30分ほど皆のスキルの検証をした。


道具を使わないものについては大体スキルについて解明できた。


≪ 多重結界師 ≫

『魔法障壁』

・直径1メートルほどの円の障壁を、視認している0〜5メートルの範囲で張るスキル。

・2回思い切り石をぶつけたら割れてしまったが、石も勢いを失った。


≪ 植物博士 ≫

『植物操作』

・地面からツルを生やし、自在に操るスキル。

・ツルは長さ1メートル弱、太さ5センチ程度の物を2本出せる。

・鞭のように動かすと思いの外、力が強い。


『植物鑑定』

・植物に限定するが、その用途、効能について鑑定ができる。

・あまり鑑定でわかる情報が少ない。


≪ 聖女 ≫

『回復魔法』

・軽度の怪我の回復をするスキル。

・軽い解毒、気分の悪さにも効果がある。



皆に共通していたのは念じて使うことができることと、なんとなく使っているうちに、自分の限界が分かるとのことだった。

ただ1つ違ったのは、『魔法障壁』、『植物鑑定』は単純にスキル名がそのまま能力として発現するが、

『植物操作』、『回復魔法』などは階層型になっていて、その下に、『ツル操作』や『ヒール』、『キュア』といった技名、魔法名が存在しているようだ。


「さて、次は俺の番か。」

自分のスキルもまだ検証はしていなかったからな。


『部分鎧化』を使用すると、手首から指先にかけて近未来チックな鎧に包まれた。


「さっきも思っとったけど、それカッコええな。」

「だろ?」

これ考えたやつ中々センスあると思う。


次は頑丈さの検証だ。

かなり堅そうではあるんだが、どの程度丈夫なのかを確認する。


手を拳の状態にし、そこら辺にある石で軽く打ち付けてもらった。


まるで衝撃がこない。

手にかなりフィットしているのにも関わらず、まるで痛くはない。


その後、割と強めに打ち付けてもらったが、同様だった。


「次は本気で頼む。」

手伝ってもらっている蘭に、本気で石を打ち付けるよう言った。


「…本当にいきますよ?」

「ああ。」

不思議と大丈夫な気がしている。これがなんとなく限界が分かるということだろうか。



「それっ!!」


ガンッッッッ!!



「…どうですか?」


流石に多少衝撃は感じたものの、全く痛みはない。

鎧にも傷一つないようだ。


「…全く問題ないな。」

鎧としての機能は万全、と。


最後の検証として、気になっていることがある。

鎧を装着した状態で拳を握り力を込めると、これまでと比べ物にならないくらい力が籠もるのだ。

その辺の木の棒であれば握り潰せるんじゃないかというほどだ。


そこで、そこら中に生えている大木の幹を殴ってみることにした。

無論、全力でだ。



「よし、いくぞ。」



ズドンッッッ!!!!



拳が木に到達した瞬間、凄まじい振動音とともに木が大きく揺れた。

殴った箇所を見ると、バスケットボール1つ分ほど木が抉れている。


「おおお…こりゃとんでもないな。ん?」


パンチの威力におののきつつ振り返ると、離れたところでスキルの検証をしていた他の班までこちらに注目していた。

そりゃ突然こんな音がなったら、驚くよな。反省だ。


その後雫達、素材集めをしていたメンバーが戻ってきた。

両手で見慣れない木箱を持っている。それぞれ木箱の形が違う。

雫に開口一番、


「さっきの音はなんだったんですか?」

と聞かれたので、自分のスキルだと説明した。


木箱の中身を確認すると、何やら見慣れない植物、木、キノコ、石が大量に入っていた。種類も色々だ。

木箱をどうしたのかと聞くと、一鉄が


「俺っちが『合成』で作ったっす!」


と言っていた。

中々機転の効いたスキルの使い方をしている。

木を集めてイメージを固めて『合成』を使用すると、一瞬発光した後に、木箱が完成していたそうだ。

最初は詳細にイメージできていなかったせいで、若干失敗してしまったようだ。

だから、一鉄の持ってきた木箱は歪な形をしているのか。

ちなみに一鉄の木箱は模様も何もなく、普通の木箱にある切断面や、接合部がない1つの木から削り出した箱のようになっている。

対して、3つ目に作ったと言っている雫のもつ木箱は綺麗に複数の木材から作られたような見た目をしており、取手まで付いている。いかにも使いやすそうだ。


「キノコとか植物は、あたしの『識別』で食べられそうなものとか、使えそうなものだけ採ってきたよ。『識別』は食べられそうな物、毒がある物にだけ反応するみたいだね。結構楽しいね、こうゆうの。」

「石とか木は自分が良さげな物を選んできたっす!」


美保の『識別』は頭の中で、こんな感じで表示されるようだ。

<ヒポポ茸>

・食用

・加熱することで、ジューシーな味わいになる。


<パラライズマッシュ>

・有毒

・摂取すると、体に痺れを起こす。


「なるほど、ヒポポ茸は後で俺が毒味をしてみよう。」

「絶対食べたいだけじゃん…。」


何を隠そう、俺は無類のキノコ好きだ。

前サークルで山菜狩りに行った時、山菜には目もくれず、キノコを取りまくった。

そのあと宿に持ち帰って食べたのだが、専門家でも分からない毒キノコが混じっていたことが判明し、病院送りになったのは記憶に新しい。

ヒポポ茸は割と量があるので、是非食べてみなければ。


「それじゃ、まずは『合成』で武器を作ってみるっす。」


一鉄はうっちーさん率いる、近接戦闘班から武器の作成を依頼されたらしい。

なんでも武器がないとスキルの確認ができないだとか。

確かに、あそこの班は武器を使いそうな職業が多いよな。班分けの前に気づくべきだったか。


「まずは、雫さんの槍からっすね。刃の部分は石、持ち手の部分は木でいいっすか?」

「うん、それでお願い。」

「承りましたっす。」


そういうと一鉄は石と、細長い木を並べた。


「んじゃいくっすよ。槍、『合成』!」


素材から眩い光が放たれた。

光が収まるとそこには、並べた時と何も変わらないままの素材があった。


「あれ?何も変わってないぞ?」

「ありゃりゃ?なんでっすか!さっきは上手くいったのに!」


『合成』は失敗した。

ふむ、木箱を作成した時と何かが違うのだろう。

さっきとの違いというと、材料が複数種類あることか?


「一鉄、試しに石で刃の部分だけ作ってみたらどうだ?イメージはそうだな…。こんな感じだ。」

「おお、了解っす!」


俺は前に浅草の博物館で見た事がある、槍の刃先の形状を地面に描いた。

刃先の下に、持ち手との接合部があるタイプだ。


「槍の刃、『合成』!」


すると、今度は光が収まった後、刃渡り20センチ程度、全長30センチほどの石槍の刃先が完成していた。石の割には、鋭そうな見た目をしている。


「できたっす!」

「多分だけど、一度に『合成』できるのは1種類だけみたいだな。」

「じゃあ、かっちょいい武器を作ることはできないってことっすか…?」

「いや、組み合わせれば作れるだろ。今までの職人もそうやってきた訳だし。」

「!!確かにっす!先輩は流石っす!」


アホの子である。

今にも泣きそうな顔だったのが、一転笑顔になった。


「じゃあ次は持ち手だ。俺の知ってる持ち手はこんな感じなんだが、単純に刃の接合部を木で覆って持ち手と刃をくっつけることはできそうか?」

「やってみるっす!」


「槍、『合成』!」


再度光が収まると、そこには刃渡り20センチ、持ち手140センチの全長160センチ程の槍が完成していた。博物館で見た槍はもっと大きかったのだが、大きすぎても使いづらいということで雫向けに調整した形だ。長さは後でも調整できるので、使いづらかったら変えればいい。


「できたっす!!めちゃめちゃかっちょいいっす!」

「おお!いい感じだな!」

「じゃ、雫さん使ってみてくださいっす!」

「あ、ありがとう。使ってみる。」


雫が槍を受け取り、振ってみる。

雫のスラッとしたスタイルに、槍をもつ姿がかなり似合っている。

雫は槍を振る速度を、徐々に上げていく。

既にかなりの速度で振っているため、空気を切る音が凄い。


「『一閃突き』。」


ズオッ!!


雫が物凄いスピードで槍を突き出した直後、あまりの勢いに風が巻き起こった。

ん?蘭が下を向いて震えている。


「……雫かっこいいよー!!」

「うわっ!?」


蘭が雫に抱きつく。

どうやら、雫の槍を振るう姿に感動していたようだ。

まあ無理もない。俺だって魅入ってしまっていた。他の皆も同じ気持ちだったようだ。


「めちゃかっこええなーー!」

「ありゃ、反則だね。女でも惚れそうだよ。」

「うおー!これが腕の良い武士に、武器を使ってもらえる職人の気持ちなんすか!?」

「凄い……。」


1人全く共感できない快感に目覚めている奴もいるが、これを見たら当然の反応だろう。

プロのスポーツ選手のスーパープレイを見た感情に似ている。

流石の運動神経でスキルすら使いこなしているようだ。




それから、諸々検証していると突然、


ズドォォン!!


とまた振動音が聞こえてきた。

いや、今度は俺じゃないよ?

見るとうっちーさんが俺と同じように大木を殴ったようだ。

俺の方に勝ち誇ったようなドヤ顔を向けていた。


子供かよ!




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