第1話 目覚め
書き方むずい
ーー
(うん?)
目が覚めた。
どうやら気を失っていたらしい。ショックを受けたせいか、頭がクラクラする。
体感では気を失っていたのは、一瞬のはずだ。
(どうなったんだ?まさか助かったのか、あの高さから落ちて?)
ここは乗っていたバスの中だ。しっかりシートベルトもついている。
周りしか確認できていないが、バスの中は落下の影響で散らかっていて、サークルのメンバーも気を失ってはいるが目立った外傷はないようだ。
窓からバスの外を見るに、森の中にいるようだ。
(でも、おかしくないか?)
俺は違和感を感じていた。
まず雪がない。
乗っていたバスが走っていたのは、周りは雪景色の山道だったはずだ。
目の前の光景は前に街のポスターで見た、木漏れ日の差し込む富士の樹海のような様相をしていたのだ。
いわゆる手付かずの大自然と言う奴で、苔の生えた大木がごろごろある。
それに崖から落ちた先は確かに森ではあったのだが、なんと言うかもっと地味な森だった気がする。
道路の側の木はもっと細かったしな。
(考えていても仕方ないか。)
とりあえずみんなを起こしてみることにする。
まずは隣でいびきをかいているうっちーさんを起こすことにする。
「うっちーさーん、起きてください!」
呼び掛けながら揺ってみる。
うん、起きない。
まあ、期待はしていなかった。
この人旅行先の旅館でボヤ騒ぎがあって、火災報知器が鳴り響いていた時も
1人ぐっすりと寝ていたからな。
ちょっとやそっとの事じゃ起きないだろう。
蘭を起こしてみることにする。
蘭の寝起きがいいとかは知らないが。
「蘭起きろー。悪いことするぞー、げへへ。」
平静極まりない声で言ってみた。
いやドがつくほどの健全サークルだが。
そして起きない。
よく見てみるとよだれを垂らしていた。
「きったね。」
きたないな。
うーん、どうしようか。
そういえば、サークルの合宿中一番早く起きるのはいつも自分だった。
大体朝の6時には目が覚めて、暇なので片付けをしていたりする。
このまま全員起こして回るのも手間だし、いったん外に出て状況確認でもしてみるか。
散乱した荷物を踏み越えて、運転席の方へ移動する。
(あれ?)
運転席に運転手がいない。
それと、運転席のフロントガラスには何かをぶつけたような、蜘蛛の巣状のひび割れがあった。
フロントガラスが割れていれば、事故の勢いでフロントガラスから飛び出てしまったとも考えられたが…。
事故の責任に耐えられなくなり、逃げ出したとか?
今は運転手がいない原因は分からないし、置いておくか。
バスのドアは半開きになっていたので、開けて外に出る。
外から見てみるとバスはガードレールを突き破ったのか、前面のヘッドライト以下の部分が大きく破損していた。
そして、落ちたことが嘘かのように平面な地面の上に停まっている。
(あの高さから落ちて、無事着地するなんてことがある訳が無い。となるとやはりあの光が何か関係しているのか?)
落ちる前の景色からして、地面どころか木の天辺まででも20メートルはあったはずだ。
地面となると、落差は40メートルほどにもなるだろう。
無事に済んだら奇跡だろう。
そしてあの光。
落ちていく瞬間にまばゆい程の光に包まれた。
と、自分は認識している。
俺だけの幻覚でなかったとしたら、何か関係しているに違いない。
(それにしても…。)
空気が気持ちいいな。これがマイナスイオンって奴なんだろうか。
辺りは一面緑でいっぱいだ。
こんな状況で呑気だなと自分でも思うが、これも自分の長所だと自負している。
日がいい感じにさしており、少し幻想的ですらある。
辺りからは微かに鳥の鳴き声のようなものが聞こえる以外は、木々が風に揺られさざめく音しか聞こえない。
(そうだ!スマホ!)
スマホを確認するのを忘れていた。電波がつながれば、警察とバス会社に連絡して救助に来てもらうことができるはずだ。
(頼む、電波繋がっててくれ!)
恐る恐る、スマホを確認すると圏外の二文字。
試しにアプリを起動しても「ネットワークに接続されていません」のメッセージ。
使えるのはカメラと、電卓、オフラインでも使えるアプリのみ。
「マジか…。でもしばらく歩けば電波を拾えるかもしれないしな。」
それに利用している携帯キャリアによっても、通信できる地域に差があるようだし
まだ希望は捨てなくともいいだろう。
あと確認すべきは時間だ。
時間はやはり事故が起きる前とさほど変わりはなかった。
10分程経過している程度だった。
スマホの時計はネット回線で時刻合わせをしているが、
ネット回線が繋がっていない場合は内蔵時計があるので、しばらく経つとずれる可能性はあるものの
気にはならないだろう。
(もうちょっと散策してみるか。)
「ってなんだあれ…。」
バスの裏に回ってみると、割と広い空間があった。
それはいいのだが、その奥の中心。
そこには巨大なモノリスが鎮座していた。
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