第2話 甘露なるは我が正義、と女王陛下は言った 〜3
お待たせしております。
その3です。お楽しみいただければと思います。
ドラゴン(龍種)
この項目ではファンタジーなどにおける架空の生物であるドラゴンとは別に、新地球において発見された龍種について説明しています。伝説上の生き物としてのドラゴンや他の用法については「ドラゴン(曖昧さ回避)」をご覧ください。
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新地球においてドラゴンと呼ばれる生き物は真龍種と亜竜種に大別される。亜竜種は形状が似ていることからドラゴンとされるものであり、本来のドラゴンではないとする説もある。この項目ではドラゴンの一種として説明する。
真龍種は上位龍と下位龍に分かれる。上位龍はさらに聖龍、古龍、神話龍の3種類に分類され、下位龍は水龍、炎龍、風龍、鋼龍、雷龍の5種類に分かれる。真龍種は翼の有無にかかわらず空を飛び、魔法の息を吐く。
上位龍は幻獣に属するもので、人並みまたはそれ以上の知能を有し、魔法による強大な能力を有する。多くは姿を変容する能力を有し、人型に変容したりする。
下位龍は知能は人並みまたはそれ以上に高く、魔法能力に長けるが、変容する能力は無い。
中略
亜竜種は飛竜、走竜、游竜と、その生態、形状によって分けられている。飛竜は翼を持ち空を飛び、多くは火魔法のブレスを吐く。走竜には翼はなく飛翔能力は無いが、多くは脚力に優れ、早く走ったり、重い荷物を運んだりすることができる。走竜の多くはブレスを吐くことはなく、代わりに身体強化魔法による膂力の強化をしていることが多い。游龍は水棲でヒレを持ち泳ぐことに特化し、水魔法のブレスを吐く。
亜竜種は恐竜類の仲間とする学説も少なくはない。形状も生態も似ているためであるが、決定的な違いとしては魔法の有無が挙げられる。亜竜種はすべからく何がしかの魔法能力を有しており、そのため身体能力が恐竜類よりはるかに優れるものが多い。
以下略
フリー百科事典『なんたらペディア(blah blah pedia)』より抜粋
◇◇◇
リアの告白にぼんやりと予想はしていたとは言え、実際にそう言われると驚きを隠せない、という気分で、俺たち4人は固まっていた。少なくとも俺はそうだ。
「エネルギー保存の法則がーーー、質量は??。」と鳥海は何やらぶつぶつ言ってるし、成田は蓮佛と顔を見合わせたまま口をパクパクやってる。こいつら仲良いな。
当の本人は何食わぬ顔で、いやマカロンを食べてはいるが、足をプラプラして嬉しそうにしている。
「ええと、リアさんや。こりゅうというのは何ぞや?。」俺はマカロンをもう一つ渡しつつリアに尋ねた。
「いにしえの龍じゃな。我を含めて5柱居る。」
ええ。子供の龍とは思ってませんでしたよ。
「そうゆう事ではなくてだね。その単に昔からいる龍って事じゃ無いでしょ。」
「うむ。我らがそう名乗っているわけでは無いから、我もよくはわからぬ。じゃが、人の伝承によれば、我ら古龍は古よりこの地を治める龍であるとされておるな。実際に我はこの地の女王であるし。」
「女王として治めてるってことは、ここはリアの国ってことなのかい?。」
「国というのはヒトが勝手に縄張りして名乗りを上げるものであろう?。我が治めるのはこの土地じゃ。我は神からこの土地を治めるよう託されておる。」
なんか良く分からないなぁ。もう少し説明をしてもらおうと思ったその時だった。
勢いよくテントの入り口がバッと開かれ、陸戦隊の面々が武装した状態で乱入してきたのだ。
「この場の全員を拘束する。」隊員たちが俺たちを取り囲むのを待っていたかのように少し遅れて陸戦隊の副隊長、月輪里桜一尉が颯爽と入ってきた。この人かっこいいんだよな。身長は170ほどのスレンダーな体型で、ショートヘアはソフトモヒカン風。顔立ちは極めて女性的で、はっきり言って癒し系美人。だけど強いし、とても厳しい。
「成田、済まないが君も一時的に拘束するぞ。」
「くまちゃん、穏やかじゃないね。拘束理由を聞いても良いかな?。」
「ああ、その権利はあるな。って、くまちゃん言うな。」と少し顔を赤らめてしまう。
月輪一尉はこほんと軽く咳払いする。
「怪獣騒ぎについては聞いただろうと思うが、その関係者という疑いだ。」
「納得いかないなぁ。」俺はマカロンを突き出しながら文句を言う。「俺たちゃ、ここで飯を食ってただけだぜ。」
「わかってるよ。お前たちは毎日ここで飯食ってるか、お茶してるかなんてことは、みんな知ってるさ。私としては極めて気に入らないんだが、上の命令でな。」月輪一尉は突き出したマカロンをサッと奪い取るとぽいっと口に放り込んだ。
「要は、お前さんたちのこの行為をよく思ってない方々もいるって事だ。・・・美味いな。」
「俺が作ったんだ。美味いに決まってる。」
「そうか。で、申し訳ないんだがそちらのお嬢さんも拘束させてもらう。と言うかそちらのお嬢さんがメインでお前さんたちはおまけだ。」
リアはフンと鼻を鳴らす。
「我を捕まえると申すか?。」
リアから立ち昇る唯ならぬ気配に俺は咄嗟に取って置きのフランボワーズの特製マカロンを差し出す。
「リアさんや、これに免じて大きくなったり暴れたりは控えてくれ。早く出られるように掛け合うし、差し入れもするからね。ここは大人しく従ってもらえないだろうか?」
「うっ、それは・・・」リアは腕組みして考えこんだ。「うみゅう〜、仕方あるまい〜。じゃが、きっとだぞ。差し入れはマリートの菓子と、其方の菓子の両方じゃぞ。」
「月輪一尉、リアの拘束理由を聞いてもいいか。まぁ想像はつくんだが一応な。」
「監視カメラに突然部外者が写り込んだんだ。対象を拘束するには十分な理由だろう。」
「そりゃそうだな。って、俺たちのテント監視されてるの?。」
「俺たちのって、簏崎おまえなぁ。」月輪一尉に思いっきり呆れ顔をされたが、美人さんの見下したような顔というのはこれはこれでそそるものである。
「もともとこのテントはそちらの鳥海先生の仕事部屋として設置したものだから、一応防犯の観点から人の出入りがチェックできるように入り口にカメラを設置してあるんだよ。艦内どこでもそうだろ。」
あー、そーでしたねー(棒)
「ところでここ片付けてってもいいかな。」
つめた〜い目で月輪一尉に睨まれたが、やはり美人は睨んでも美しいのだな。
などとくだらない感慨に浸りつつも、俺たちは片付けもそこそこに、テントを後にした。
◇◇◇
リアは俺が差し入れしたクッキーをポリポリと食べている。子リスみたいでめっさ可愛いな、こいつ。アーンとかするし。ほんと可愛いな。もう。
で、俺たちがどこにいるかというと、懲罰房の隣の聴取室だ。聴取室には似つかわしくない芳しいコーヒーの香りとクッキーの甘い香りが部屋いっぱいに立ち込めていた。
そんでもってなぜ俺が、俺だけでなく俺たち4人がリアと一緒にいるかというと、一緒じゃないと嫌だとリアさんが駄々をこねたからだし、雑談のような方がいろいろ喋るだろうと、聴取役の吉永健斗二佐が言ったからだ。吉永二佐はこの船の副長だ。
そういうわけで決して広くない、いやむしろ狭い聴取室に護衛の月輪一尉と書記の長妻みゆき一曹も含めて7人の大人とゴスロリ少女がみっちりと押し込められたようになりながらお茶をしているのであった。
隣に観察室という部屋があるが、そこの連中は懸命に笑いを堪えているだろう。それぐらい絵的におかしな状況である。
「まずはお名前からお聞きしてもよろしいかな。」吉永副長はカップを静かに下ろした
「フルネームが良いか?ちと長いぞ。」とリアが悪戯っぽく笑う。
「お願いします。」
「グローリアーナ・エレ・ボルンフォンク・ン・ジュー・クリヒー・パ・ディーエラ・クリエントレス・レススプリー・ゼ・フィスタンテマニ・エ・ヴィヴェー・ウヌフォレー・ド・グククス・プルルフォンド・エ・ソン・ラック・ウヴー・テレ・デ・ホア・オジ・ママヌフィキ・エ・ペイギルブ・ク・リ・ディ・トレジエール・リヴィルゥ・ド・モンテルニュー・ド・ロンジ・イルモート・アン・ググラン・ドラクオモ・キ・グールベルナーロ・セリ・エ・プロテ・パラ・プラグルアー・グローリアーナ・グローリアーナ・シュプレメーじゃ。」
書記の長妻一曹があたふたして、泣きそうな顔で俺の方を見ている。いや、俺だってそんな長い名前だなんて知らなかったし。
「リアと呼んで良いぞ。」とリアが薄い胸を張る。
「もう一度・・・。」自慢げなリアに申し訳なさげに消え入りそうな声で長妻一曹が言うと、じゃからな、とリアが名前を早口で告げる。まるで落語の寿限無のようだ。
「録音してるからもう良いのでは・・・。」と俺がいうと鳥海がかぶりを振る。
「それはダメ。前にも言ったじゃない。魔法か何かで私たちにはそう聞こえているだけだから、彼女は違う言葉で話してるから、後で録音を聞いても名前とわからないんじゃないかな。」
「論より証拠。ちょっと再生してみましょうよ。」と成田が録音中のタブレットを操作する。
タブレットからリアの声が聞こえるが
「グローリアーナ、其は神の子、創造神が地母神に命じてお作りになり、精霊が顕現して棲む、深い恵みの森と豊かな百の湖、十の宝玉のごとき煌びやかで安らかなる王の土地、不滅の天使の山河、これを治め、慈しみ、守護する偉大なる龍、栄光のグローリアーナ、至高のグローリアーナ」
と、翻訳された状態で再生されてしまった。
リアはおお、と感心している。
「理屈はよくわからないけど、名前として発話者がいうと、その音の響きをそのまま訳さずに、私たちの聞きやすい形で聞こえるようにしてくれるけど、いったんこうして録音してしまうと、機械には意志がないから、単なる言葉として翻訳してしまうんだろうね。」と鳥海。
「我がこの板から喋っておるぞ。記録魔法か?。どういう術式なのだ?」リアがキラキラした目で成田に聞いている。
「最初に話したでしょ。私たちの話を録音するよって。これは魔術とかじゃなく技術だね。ここにマイクと言って音を聞き取る機械がついていて、この薄っぺらい機械の中の仕組みで音を保存するんだよ。他にもいろいろできるよ。」と成田。
「ほお。魔術や魔法ではなく記録するのか。ヌシらの技術とやらはなかなか発展しておるようだの。」
「なぁ、今のリアにはどう聞こえてたの?。」と俺は素朴な疑問をぶつけてみた。
「ん。我は自分の名前をこの板から喋っておったぞ。」
「やっばりね。」鳥海が納得したように言う。「発話者本人は名前と思って聞いてるから。」
「それはどういうことかね?。」吉永副長はコーヒーを口に運ぶ手を止める。
「いわば翻訳魔法です。」と鳥海。
「???。」俺、鳥海、成田、蓮佛の4人以外の頭上には巨大なクエスチョンマークが浮いているようだった。それだけじゃ分からないよ。
と言うことで翻訳魔法に気がついたあらましを話してみた。
「と言うわけなんです。」
「うーん。しかし私は趣味で洋楽を聞くが、翻訳されて聞こえたことはないぞ。」吉永副長が首を傾げる。
「仕組みや理屈はよくわかってないのでなんとも言えないですが、聞く人がそう訊こうとすればそう聞こえるんじゃないかと思います。」と鳥海。
「じゃあ、今のリアの録音だってそうなんじゃないの。俺たちが名前だーと思えばそう聞こえるってこと?。」
「私やってみます〜。」長妻一曹が自信なさげに半分ほど手をあげる。
「これは名前これは名前。ポチッとな。」タブレットの再生ボタンをタップする。
いや、今時それ言う人いるんだ。
俺も名前だーと心の中で唱えながら聞いてみる。
すると
「な、名前に聞こえました〜。」と長妻一曹が嬉しそうに言う。
確かに所々怪しかったが今度は翻訳されずにしかもカタカナ言葉で聞こえた。
名前聞くだけでこんなに時間かかるとは。トホホだよ。
◇◇◇
「どこに居住しているのか、教えてもらえるかね?。」
「我はそこの島の神殿の最奥に住うとされておるな。ま、本体はそこにはおらぬがの。」
「本体?とは、どういうことかね?。」
「この身は分体じゃ。本体は神界で寝ておるよ。」
「分身?。」
「少し違う。我の本体の血肉を依代にして魔法で作った個体じゃな。自身の自我があって、このように自立しておるが、意識と記憶は共有しておる。言うなら、ほぼ我じゃ。」
「もしかして、本体の方が大きかったりするのかな?。」と俺は恐る恐る聞いてみる。
「大きいな。」そう言ってずずっと紅茶を啜る。
えー。この分体さんの龍の姿でも十分大きかったのにそれよりも大きいとか、どういうこと。
これに鳥海が食いついた。
「どれぐらいの大きさなの?。」
「そこの島ぐらいにはなるかの。」
「それ、生物の限界を超えてます・・・。」
「そうは言われてものう。我は幻にして現、我は何処にも居らず、何処にも居るもの。この世の理とは無縁ゆえ。」
「うーん、すでにエネルギー保存の法則が蔑ろにされてるわけだし。もういいのか。そう言う生き物だってコトで研究すれば良いのかっ。」と言って右手を差し出す。
「なんじゃこの手は。」
「ウロコ一枚ください。」
「いやじゃ。」
「えー。」鳥海が頬をぷうっと膨らませる。「研究材料が欲しいーぃ。リアちゃんお願いー。」
お前は子供かっっと俺がツッコミを入れる前に吉永副長がダメ出しをした。無表情で。絶対怒ってるよな。
「鳥海先生、脱線し過ぎです。話を戻してもよろしいかな。」
そこは空気の読める女、鳥海桂。コクコクと頷く。
「では、女王というのは?。」吉永副長は次の質問に移った。
「トシたちにはすでに話したコトじゃが、我は国や民を治めておるわけではない。神よりこの地を治め、守護するよう頼まれておる。」
「神?。」と吉永副長が怪訝な顔で言葉を発するのと「えっ、神様いるの?。」という俺の言葉が重なった。吉永副長に睨まれる。もう作り笑いするしか。
「神は居るに決まっておろう。そう言うたはずじゃがな。」そう言って、はーとため息をつく。
「我ら龍はこの世界ができた時からそれぞれの土地を治め守護しておるのじゃよ。」
「治めると言うのは?。」吉永副長は顎に手をやる。
「諍いが起きたり、災が起きたりせぬようにしておることかの。」
「お一人で?。」どんどん吉永副長の顔が険しくなっていく。
「我が眷族や精霊たちが手伝うてくれとるよ。」
「眷属というのは?。」
「我と契約している魔獣や獣たちじゃな。」
「まじゅう?。」吉永副長の眉間のシワがすごいことになっている。
「魔力を持った獣じゃな。」
「精霊というのは?。」ついに指で机をテーブルき出す。
「精霊は精霊じゃ。土地やら木々、風、水、万物に宿る霊じゃな。此奴らは何処にでも居るな。」
ガチャとドアが開くと背広姿の男が入ってくる。キツネ目で、鼻筋は通っているが口は「へ」の字。ほうれい線がくっきりしていて、おでこがV字にやや後退しているため、少し老けて見える。確かこの人は外務省の担当官で・・・。
「どうも、初めまして。私、外務省の韮沢崇慧と言います。ここからは私が引き継ぎます。」
そう言って韮沢は軽く吉永副長の肩を叩く。やや不満げに吉永副長は席を韮沢に譲ると、その背後に立った。
「・・・・さて、話を戻しましょうか。それでどのように統治されているので?。」韮沢は咳払いをするとこう話し始めた。
「統治もなにも。我の話をきちんと聞いておったか?。」リアは不機嫌そうにため息をつく。
「我が治め守護するのは土地じゃ。東の嵐の壁から西の嵐の壁までのこの南半球を任されておるだけじゃ。国があるわけでもなし、人がおるわけでもなし、統治するべき相手がおらぬな。」
「では、我々がこの地を占拠しても問題ないと?。」韮沢は無表情にとんっと中指で勢いよくテーブルを叩く。
「我の守護する土地にヌシらが住むというのなら、別に邪魔はせぬ。森を切り開くとか、山を削るとかとなると別じゃが。」
「別・・・。」韮沢は無表情のまま、顎に手をやりながら呟く。
「樹を一本切るにしても許しを得てもらわねばならぬ。其処の精霊や住うものたちと争いにならぬよう調停せねばならぬ。」
リアは紅茶を一口飲むと思い出したかのように続けた。
「あーそこの島はダメじゃな。我の神殿があるし、我の眷属の住処ゆえ。精霊たちも人が住うのを嫌うじゃろうし。」
「・・・・・そうですか。いずれにせよ、政府の方針が決まるまで、あなたにはここにいてもらう事になります。」韮沢は両肘をついて組んだ手に顎を乗せ、にこりと笑って見せる。
「我の土地の精霊や眷属たちが我が囚われているのを良しとはせんと思うがのう。」
自分がかじったクッキーのかじり跡を眺めながらリアはポツリと呟くように言った。
「どういう事でしょうか?。」
「お主の国の王が突然囚われたとしたら、お主の国の民はは何もせず黙っておるのか?。」
「我が国の国民の誰であれ、理不尽に囚われれば、我が国は全力を持って救出しようとしますね。」韮沢はそう言って「ですが・・・」と続ける。
「あなたはこの船に許可なく乗船してきた、いわば不審者です。」
いえドラゴンです、と皆がそう心の中で突っ込む。
「したがって、こうして拘束する事に合理性を欠くことはありません。」韮沢はにこりと笑う。
「まあ、警告はしたぞ。トシやマリートと約束しているから我がここで何かをする事はないがの。何が起きても我は知らんぞ。」
リアはそういうとクッキーの残りを口に放り込んだ。
◇◇◇
一羽のカモメのような水鳥がスーッと飛んでくると『USSコンスティテューション』の飛行甲板の後方のエレベーター付近に降り立ち、とまる。
それを合図にしたかのように水鳥が数羽、同じように甲板にとまる。
しばらくするとまた数羽飛んでくる。
やがてカモメのような鳥だけでなく、ペンギンのような鳥が十羽ほど飛んできて甲板にとまる。
鳥はどんどん種類を増やし、どんどん飛んできてその数を増やしていく。
甲板要員の一人が気付く頃には、飛行甲板の後部は数百羽の鳥に占拠されていた。
「なんだよこれ。しっしっ。」
蹴散らそうとしたが、鳥たちはそれを避けるだけで飛び立とうとはせず、ただ何かを訴えるような目で甲板要員を見つめる。
甲板要員の肩にフンが落ちてくる。さっきまで晴れていたのに今は薄暗い。曇ってきたのかなと思いながら「なんだよー。」と不満げに天を仰ぐ。そして絶句した。
曇ったのではなく、数千羽の鳥が船の上を飛んでいたのだ。まるで昔の恐怖映画のように。
ただ鳥たちは人を襲うわけではなく。ただ留まるだけなのだが、さすがに尋常ではない数に甲板要員は転げるように走り出し、艦内に慌てて逃げ込むのだった。
空飛ぶペンギンとカモメ似の鳥はさらに数を増やし、甲板を占拠していった。
ホラーの様相ですがどうなるのでしょうか。
次話でこのお話は完結です。
コンスティテューションが大変な事になって行きます。
よろしくお願いします。