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第三話

かぐや姫が男の子だったら、月からのお迎えと戦っていたのではないか……と想像し書き始めました。

竹から生まれた美しい少年かぐやは、花や鉱石など美しい物を喰い斬られても回復再生する人外であった。彼を虐待し餌にしていた月の住人「月衆」は日本の美しい人間たちに目を付け、餌にすべく侵略を開始。かぐやは仲間になった帝や中納言と共に自分を連れ戻そうとする月衆に立ち向かい、仲間を守るために戦う。

かぐや姫の新解釈バトルアクション。


週刊より毎日更新の方が読みやすいそうなので、毎日2500字程度更新で連載します。書き終わっているのですが少年漫画的なわくわく感を得てほしくて連載にしています。あとワニに便乗しています(正直)

メインキャラがようやく出てきました。

 ある時、身分の高い男が屋敷を訪れた。かぐやの出したお題は、今までの物と少々毛色が違っていた。

「竹を斬っても折れぬ丈夫な鋼で打たれた刀」

 男は顔を赤くして、最高の刀を打たせよう、と約束して勇み自分の屋敷に戻る。そして名のある刀鍛冶に依頼し、一振りの太刀を作らせ、かぐやの前に出した。

「しかし姫、なにゆえ刀など」

 かぐやはたおやかに微笑み頷いた。

「ま、まあどうでもいいか」


 かぐやは翁と媼の目を盗み手に入れた刀を携えて竹林に分け入った。人目のない、静かな場所である。竹林の間に泉が湧いている。着ている物をすべて脱ぎ、生まれたままの姿になってかぐやは泉に入った。顔に施された化粧も拭い落とし、泉から上がると小袖と袴だけの姿になる。長く伸ばした美しい髪をぞんざいに紐で括り、刀を持った。裾を引きずる長袴は普段から穿かないようにしていた。

 目を閉じ、周囲の気配に意識を集中する。葉が動く音がするが、人間の気ではない。

竹の生い茂る中、大きく息を吸い、吐く。かっと目を開き、即座に抜刀し並ぶ竹を四、五本一気に叩き斬った。青竹を斬るなど、並の人間ならば手が痺れてそうそうできない芸当である。刀の方が折れてしまうことも多い。竹を斬っても折れぬというオーダーを見事に叶えてきた。かぐやは満足げに微笑んだ。

 入り組んだ竹林を蛇行しながら走る。刀を持ったまま、ジャンプして竹を蹴り上げ竹のしなりを使って空中を移動する。そのまま真っ直ぐ竹を両断し、反動を利用し体を反転させ再び走る。竹の葉が一枚、ひらりと落ちてくる。高く飛びあがり、左右の竹に順に足を掛け飛んだまま葉ごと奥の竹を斬り倒した。

 ひゅっと刀を振ると、静かに納刀する。

 自分の得た……いや、取り戻した力を確かめるように、拳を握ったり、開いたりする。

「悪くねえ」

 そう一言呟いて、傍らに咲いていた山百合を摘んで食べた。風がかぐやの長い髪を攫う。


 同じ頃、都では帝が庭にしゃがみ込んでいた。先日帝になったばかりの若者で、それはそれは見目が良かったが、国のトップにするには少々頼りがいのない男である。彼を追い詰めた若く長身の剣士が声を荒げる。

「そんなことでどうするのです! 貴方の手にかかっているのですよ!」

「俺がやる必要ある? 刀なんて……重いし上手く振れないし」

 よたよたと立ち上がった。その右手には立派な太刀が握られているが、構えすら弱々しい。

「この国の守り主なのですから。鬼も、(ぬえ)も、貴方がいれば逃げ出すと、そう思われるような帝になってもらわねば困る。各地で起こる反乱や飢饉も立派な国主がいればいずれ鎮まります」

 帝は眉を下げた。すっと背筋を伸ばせば、百八十近く身長のあるスタイルのいい若者である。おまけに純粋さを固めて黒曜石にしたような、黒く大きな瞳に、愛らしい上がった口角。女房だけでなく中将、少将、とにかくあらゆる男と女がこの若く美しい帝に夢中になっていた。

「鬼や鵺は陰陽師が倒すでしょ、俺がやんなくたっていいじゃん」

「いいんですけど。でも国の長がまるっきり刀が振るえないのはあまりよろしくないかと」

「うーん……それより世継ぎの方が先じゃない? 俺歌なら上手いよ」

 帝はとにかく気が優しい性質で、戦うことよりも風雅を好んだ。かぐやには皆妖艶さや陰を見出したが、帝には陽だまりのような温もりを見出した。およそ国で一番偉いとは思えないほど言動も幼気(いたいけ)で庶民的であった。池の魚にやる餌の麩をむしゃむしゃと食べながら庭をうろついては、天気がよいからと浮かべた小舟の上で眠ってしまったり、とにかく天真爛漫、天衣無縫なのだ。帝は長身だが、当時の直衣(のうし)は袖が長いので袖口からは指先だけがちらりと見える。その姿を見て近臣たちも目尻を下げた。

(かわいい)

(かわいい)

 例え男性であっても、綺麗なものは心を癒す。殿上人ゆえに面と向かって言える人間は限られたが、宮で働く者達はこそこそと囁き合っている。

 新しもの好きで恋愛に憧れを抱き、甘えん坊で幼気なこの帝の元にも噂は流れてきた。


 「とある山の竹林の中に、大変に美しい姫がいる。公家も僧も老いも若きも富めるも貧しきも、この光り輝くような姫君の心を手に入れんとして必死になっている」

 剣の師匠でもあり、幼馴染でもある中納言石上麻呂(いそのかみのまろ)と椿餅を食べながら、帝はまだ見ぬなよ竹のかぐや姫に想いを馳せた。

「俺もその人に逢いに行ってみよっかな」

「おやめなさい」

「二人でいる時ぐらいその話し方やめてよ」

「……やめとけ。確かに美しいのかもしれないけど、誰一人求婚も受け入れず金目のものばかり貢がせてる女なんてろくなもんじゃねえぞ」

「んなこと言っていっちゃんが先に求婚するんでしょ」

 いそのかみのまろ。通称いっちゃん。彼は何も考えずきらきらと目を輝かせている帝を頬杖を突いて眺めた。

「先に俺が様子を見とく必要があると思うからだよ、いつもとんでもねえ女に引っかかるだろ」

「俺が抱きしめることで喜ばぬ女はいなかったから」

「モテるけど、遊ばれてんだよ」

 椿餅を食べ終えて、帝は立ち上がるとまた太刀を取った。

「いつもいっちゃんが俺を守ってくれるけど、危なくなったら俺も守るからね。だからもう一回稽古付けて」

 不格好だったが、太刀を構えて、鼻を鳴らす。石上(いそのかみ)はこの無垢だが心の奥底に強い炎を隠した幼馴染が誰より大事だった。この若者は運命的な恋に憧れていて、美しい者に目がない。噂のなよ竹のかぐや姫が悪女だった場合、帝が求婚に夢中になることで国が傾く。

 石上はかぐや姫に求婚の文を送ることにした。言葉は悪いが毒味を買って出たのである。


生産者はBLを愛好しますがジャンルとしてはBLではありません。

二次創作歓迎です。BL妄想、夢妄想、お好きに!

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