9話目.夢
何もやる気が起きない。
僕は薄目を開けながらぼんやりとした天井をただ眺めていた。
取り敢えず動こうと思い、身体を動かし机の上にある眼鏡へと手を伸ばした。
身体が重い。
眼鏡を取って掛け、机の上にあるスマホを取った。
此処最近の記憶が上手く思い出せない。
思い出せないが何か大切な物を失った、心にぽっかりと穴が開いたそんな感覚だけが残っている。
机の上に何か有るみたいだがそれを確認しようとするやる気さえ起こらない。
スマホを見る。
連絡など一つもない僕が学校を休んだって心配するやつなんてあの学校にはいない。
腕が力無く垂れる。
ただ僕はボーッと地面に溶けるかのように時間が過ぎるのを待った。
時間が経って何が有るわけでもないのにただ時間が過ぎるのを待っていた。
瞼がゆったりと落ちてきて僕は夢の世界へと進む。
―――
「待って、行かないで」
「ごめんなさい」
僕は誰かを追いかけている。
僕の心がその人物を行かせてはいけないと言っている。
僕はその人物を追った。
暗い闇の中でその人を追った。
その人物が急に此方を見て涙を流した。
「ごめんね」
僕の心にグサッと刺さった。
行かないで……
―――
僕は目を覚ました。
さっきまで忘れていた。
僕は忘れてはいけない事を忘れていた。
更科さん。
僕は身体を起こす。
何か握っている。
それはピアスだった。
僕はそれを見てあることを思い出した。
僕はカバンに手を伸ばして中にあるであろう物を探す。
あった!
それを出して箱を開ける。
説明書と本体、黒ペンを持って家の冷凍庫から保冷剤を出し、洗面所に向かう。
鏡を見て、左耳にアタリを付ける。
保冷剤をしばらく当てて、耳を麻痺される。
説明書をよく見て説明書通りの動きをする。
カチッ
そんな音がなった。
自然と恐怖は無かった。
不意に窓から外が見えた。
夜だ。
僕は何かにとりつかれたようにカバンとスマホ、更科さんから貰ったピアスを持って外に出た。
僕は走る。
そして自然と足がある場所に向かっていた。
そこにはあった。
ちゃんとあった。
暗い細い道。
僕はそこに走って入る。
普段なら心細くなる暗い道も走って通りすぎる。
自然と足が動くお陰で疲れる感じはしない。
暗い道から出て、目の前に現れた男性に向かって僕は言う。
「僕もそちら側の人間になります」
僕はニコッと笑いながらいった。
男性は驚いた表情をしていたがすぐに笑顔になった。
いや、あの笑いかたは苦笑いだったかも。
「僕のいや、俺の夢は誰かを笑顔にすることです」
「なんか成長しやがって、行け、お前みたいなやつは初めて見たぜ」
その言葉を聞いたと同時に身体が中に浮く感覚がした。
身体が闇に包まれた。
何度も感じた感覚に懐かしさすら覚える。
俺は闇が晴れるのを待った。
晴れた瞬間に前に進む。
目の前に少女がいた。
俺が会いたかった人が、
俺は改めて言う。
「好きです。更科雅さん」
彼女はニコッと笑った。
読んで下さりありがとうございました。
後半は変な感じに成っていった感じもしますがちゃんと終わりまで書けてよかったです。
評価や感想等下さると嬉しいです。