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夜中に君は咲咲う  作者: 六郎
7/9

7話目.矢上

夜、親が寝静まった後に僕は家から出て合鍵で閉める。


外はシーンとしていて、僕以外が存在していない、そんな感じがしている。


僕の足音だけが鈍く響く。


僕は、前回細い道があった場所を探した。


不思議な空気が流れてきた、それと同時に嫌な空気も流れてきていた。


僕はその場所へ向かう。


少し小走りで、向かった。


僕はあの暗い細い道を見つけた。


しかし、その暗い道の前に数人の男がいて、男たちは入っていった。


僕はその男たちの後ろを気付かれない様についていく。


暗い道はやはり長かった。


そして、前も見えないほどの暗闇に包まれている。


僕は男たちを見逃した。


焦りを感じ、前へ走って進む。


僕は()()()()()()()()()暗い道を抜けた。


そこには前回も見た、男がいた。


男はタバコを咥え、空に浮かぶ月を眺めていた。


男は気配を察したのか僕の方を見た。


「お前、前も来た奴か、まぁ良いか此処に来た目的は?」


男が口から煙を吐き、僕に向かって問う。


ジャリッジャリッ


男がこちらへ近づいてくる。


「嫌な予感がして、男たちがこの道に入ってくのが見えたから……」


僕は後ろに振り返り道を指差す…そこには道がなかった。


壁しかなく僕は混乱した。


男はハァとため息をついた後、タバコをもう一度吸う。


「あぁ、あいつらか少し前に先に行っちまったよ。何か嫌なオーラを持っていた気がしたが」


男は言う。


僕は胸の中が不安で一杯になる。


僕の足は勝手に動き出した。


男の横をすり抜けて前回の梯子が有るであろう場所へ向かう。


急に、足元が失くなったかのようなそんな感覚に陥った。


僕の視界が暗闇に溶ける。


何も見えない


何もない


僕の身体が溶けるように、吸い込まれるように暗闇に混ざる。


「お前なら何とかなるかもな」


男の声が脳に響いた。


暗闇が少しずつ晴れていく。


視界が真っ白になってから徐々に色を取り戻していく。


目の前に広がっていたのは、更科さんが男たちに囲まれている所。


そして、離れて男たちに指示を出している矢上先輩。


僕は、そっと近くの茂みに隠れる。


なにか話しているようだが聞こえない。


更科さんの表情が少しずつ曇り、嫌という感情が表れてくる。


男たちの中の一人が更科さんの腕を掴んだ。


矢上先輩の悪どい笑いが僕の耳を掠める。


僕の身体が僕の意思とは関係なく動く。


気付いたら近くにいた男を殴っていた。


「さ、更科さんに近づくな。嫌がっているだろ」


僕は口からそんな言葉が漏れた。


更科さんと矢上先輩の顔を見ると目を丸くして驚いた表情をしている。


男たちは僕を囲む。


そしてあちこちから蹴りがくる。


僕の腹、背中、腕へと蹴りが当たり痺れるような痛みが走る。


それでも僕はこらえ一人ずつ男たちを倒していく。


そして最後の一人を倒したところで、僕はぼろぼろになり、地面に膝を着いていた。


矢上がニヤリと笑う。


矢上は更科さんに近づき、人質として更科さんを掴んで首元に銀色の刃を当てる。


「俺のものだ更科雅は俺のものだ。俺だけのものだ」


矢上が泡立った唾液を口の回りにつけながらほざく。


僕の肉体は痛みにふし、思うように動かない。


それでも更科さんのために動こうとしている。


脳みそがやれと指示を出す。


自然と口が動く。


「矢上先輩何やってるんですか」


「あ、あ!俺は更科雅を俺のものにするんだ。誰にも渡さない」


僕はそれを聞いて、胸の中に怒り、呆れが混じり始める。


先輩の手にはナイフがあり、僕が近づきにくくなっている。


近づいたら更科さんが切られるかもしれない。


ドキッドキッ


心臓の拍動が強くなる。


ドキッ


「先輩、誰と一緒にいるかは、更科さんが決めるんです。決めるのはあんたじゃねぇ!!」


僕の口から普段でない口調が溢れる。


そして、ナイフの圧力で怯えていた更科さんが口を開く。


「助けて」


ドキッ


僕の口角が自然と上がり、力が沸いてくる。


脳が目の前の敵を倒せと命令してくる。


矢上は目をぐるぐると回しながら、どこか覇気のない目になってきている。


僕は、足に残っている全ての力を込めて、地面を蹴る。


自分の出せる最高速度で矢上の近くまでいく。


矢上は焦っているのか、ナイフを適当にふる。


ピシャッ


僕の頬が切れ、血が出るが全く痛みを感じない。


僕はナイフを握っている矢上の腕を払い、自分の体重をかけて矢上に突進し、更科さんから放す。


矢上は払われた影響か、手からナイフを手放していた。


タバコの独特の匂いが鼻を掠める。


矢上は抵抗をする。


僕の身体を掴み無理に投げる。


僕の体には力が籠っていなかったのか、一度転がされた。


地面に手と足を擦るように滑り転がる力を流し、止まる。


矢上は前屈みになった僕の顔面に膝蹴りを入れてくる。


鼻に当たり、変な感じがするが気にもならない。


もう一度膝蹴りをしようと矢上が構えたときに顔をずらして避ける。


ビュンと耳の横で音が鳴った。


僕は多少後退りしながら、再び構える。


身体のあちこちからピキピキやメキメキと言う音が聞こえる。


それでも、僕は足に力を込める。


次の瞬間僕は矢上に再び突進する。


矢上の身体が宙に浮き、抵抗できなくなる。


しかし、矢上はすぐに足をつき体幹で僕の突進を止めようとする。


僕は歯を食い縛る。


力を失った身体を無理に使い、突進の与力を使い、矢上を地面へと倒す。


馬乗りになるような形で矢上に乗る。


矢上の襟を左手で掴む。


右手の拳に力をいれ殴ろうとする。


でも僕はその力の籠った拳を矢上の顔の横の地面に叩きつける。


皮膚が抉れた感覚がしたが痛みはない。


地面が軽く削れる。


地面に赤い液体が染み込んでいく。


矢上は気絶していた。


すると、地面が透けるような溶けるような感じで矢上の身体が吸い込まれていく。


気付いたら僕は地面に倒れ、全身に土と砂利の味を感じていた。


そのまま、意識が途絶えた。

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