5話目.登校
昨日の出来事は何だったのか。
僕にはわからない、でも幸せな気分だったのは確かだ。
僕はのそのそとベッドから出る。
いつも通りに朝着替え、洗面所に顔を洗いに向かう。
顔に水のひんやりとした感覚を感じ目が自然と冴えてくる。
眼鏡をかけ、朝食を取りに台所に行く。
台所には、食パンが一切れあった。
僕はそのパンを取りトースターに入れ、一度自分の部屋に戻り、リュック、スマホ、財布を持ってそれらを玄関に置く。
台所に戻るとチン、とパンが焼けた音が響いた。
僕はそれを取り、近くにあったジャムを塗り口に運ぶ。
ザクッ
焼きたてのパンは僕の口の中で良い音を響かせる。
ジャム(苺)の香りが口一杯に広がる。
僕はそのパンを食べ切る。
癖だろうか、自然と時計を見た。
……
七時四十五分、
このままだと遅刻する。
僕は玄関に置いておいたリュックを手に取り、財布とスマホをポケットにしまう。
玄関から外へ急いで出る。
家に誰も居なかったから鍵を閉めて、急いで学校へ向かう。
幸い信号にはあまり引っ掛からなかった。
そのお陰か、学校には八時前に着いた。
僕はそのまま教室へと向かう。
……
教室の前にものすごい数の人がいた。
一年、二年、三年の主に男子が食い付くように教室の外から何かを見ている。
僕はその生徒たちを無理矢理に退けて教室に入り、リュックを机に置き椅子に座る。
ふうっと、息を吐いて落ち着こうとする。
おかしい
沢山いた生徒の視線が僕の辺りに集まっている気がする。
「おはよう、瀧川君」
「おはよう、更科さん」
……ガタンッ
さ、更科さん!?
僕は椅子から落ちた。
それと同時にあの生徒たちが何だったのか悟った。
なるほど、みんな更科さんを見てたわけか。
後ろから僕にチクチク刺さる視線を感じる。
更科さんは背筋を伸ばし、椅子に座っていた。
窓から入ってきている朝日?が彼女に当たり凄く幻想的な雰囲気があり、更科さんの周りだけが別の世界のようだった。
僕は彼女、更科雅に見とれていた。
ドンッ
机の上から僕の方にリュックな落ちてきた。
僕は慌てて、リュックの中から色々だし、リュックを机の横に掛ける。
リュックが落ちた場所が少しヒリヒリした。
教師が生徒の波を散らしながら入ってきた。
授業が始まる。
僕は授業中チラチラと更科さんのほうを何度か見た。
数回目が合ったから僕が見てたことはばれていたと思う。
でも、退屈な授業はあっという間に過ぎていた。
「あ、教科書忘れちゃった」
更科さんがボソリと独り言を言った。
すると、教室の至る所からガタンッという音が響き、男子たちが更科さんの周りに集まってきた。
「俺の教科書使って」
「いや俺のを」
「どうせ寝るから俺のを使ってあげて」
と、男子達が更科さんに教科書を差し出している。
お前ら、授業受ける気ないな、
僕は次の授業の準備をして、更科さんの方を向いて、男子達のプレゼンを眺める。
さっきから更科さんは苦笑いしている。
助けるべきか、
「更科さん、僕の教科書見る?席隣だし」
「お願いするね」
更科さんはニコッと笑い、僕の提案に賛成してくれた。
男子達は僕を睨む人、がっかりする人、嘆く人様々いた。
その後、授業を少し楽しく過ごした。
授業中緊張で体の動きが固くなった。
放課後まで楽しく過ごせた。
今日は良い1日だったと思う。