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夜中に君は咲咲う  作者: 六郎
3/9

3話目.暗闇の先

僕は暗く細い道に吸い込まれるように入っていった。


そこはやはり暗く先が見えなかった。


ゆっくりと少しずつ足を前へと進めていった。


その時の僕には引き返すという選択肢はなかった。


どんどん進む。


暗すぎて前に進む以外出来なかった。


人は他にやることないと色々な事が浮かんでくる。


僕は、幽霊でも更科雅に会いたいという思考が頭の中に回っていた。


考えながらでも自然と足は前に進んでいく。


どのくらいの時間が経っただろうか、少し遠い所にうっすらと光が見えた。


僕は少し早足で光へ向かって歩く。


どんどん光に近づく。


僕は光へと出ることができた。


そこにはベンチがある空き地があった。


そのベンチに月明かりに照らされた男が一人いた。


その男はこちらを見た後ゆっくりと僕の方に向かってきた。


ジャリジャリ


男が砂利を踏む音が響く。


僕は、動けずにいた。


「お前、ここに来た目的は何だ」


男は僕に向かって言った。


僕は急な質問に軽く戸惑いながら、口を動かす。


「会いたい人に会えるかなって思って」


必死に頭を動かして出した答え、正直何言ってるか僕にもわからない。


でも、僕は真剣な目男を見る。


男は、僕より背が高く軽く見上げるような形になる。


男は口角を少しあげてニヤリと笑う。


「へぇ、面白いな。そんな事を言う奴は初めてあったぞ」


男は僕の目を見ていった。


その後に男は僕の全身を見る。


「お前の会いたい人ってのは、どんな奴なんだ」


男は真剣な目で言う。


僕はその目、空気に不思議と押し潰されそうになる。


それでも目をみて、息を一回はいて答える。


「一度しか会ったことがないんだけど、不思議とその人に会ってみたいんです」


自然と答えは出た。


口は自然と動いていく。


男は、またニヤリと笑って「ついてこい」と奥へ向かっていく。


僕は男と少し間を開けてついていった。


男が進んだ方向には不思議な梯子があった。


男はその梯子をどんどん登っていく。


僕は男の後にその梯子を上る。


カンッカンッ


靴と梯子が当たり上る音だけが響く。


暫く上ると強い風が吹いた。


僕はその風に当たり上着がなびいた。


その時に気づいたがいつの間にか凄く高いところまで上っていた。


僕の胸に恐怖が現れる。


恐怖で固くなる指を必死に動かし、上っていく。


カンッカンッ


梯子はまだ続く。


それでも僕は上る。


遂に梯子を上りきった。


男は少し先の方にいる。


僕は男の近くへ行った。


男はタバコに火をつけて一度吸う。


その後フーッと煙を吐く。


男の吐いた煙が空へと昇り消え散った。


「お前の望んでいそうな答えはここには……ないな」


男は少し寂しげな声で言った。


その後僕のほうを向いて、


「また、どこかで会えるかもな」


と、手を前に差し出してきた。


僕はその手を取り握手する。


その後、男はタバコを吸いながら奥の暗闇へと吸い込まれて消えていく。


タバコの火の光りも吸い込みながら。


僕はそれを見た後その場から動けなかった。


何かに足がすくわれた感覚がし、視界が暗転する。


僕は何もない暗闇に吸い込まれた。

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