2話目.ウワサの出所へ
キンコーン♪カンコーン♪
授業の終わりを告げる鐘と同時に僕は席から立ち上がった。
ガタンッ
勢い良く立ち上がり過ぎて椅子が倒れたが直ぐに直し、さっきの休み時間に更科雅のウワサをしていた人物の方に向かう。
近づくとウワサの話の続きをしている。
「すいません、その話誰から聞いたんですか?教えて下さい」
僕は無意識に口から言葉が出ていた。
更科雅のウワサをしている人の方を見る。
「えっと、瀧川君急に何なの?」
ウワサ話をしていた生徒は急に僕に話しかけられて、少し早口で言う。
僕はそれを聞き一瞬我に帰る。
僕、今女子に話しかけてる!?
僕の背中に変な汗が浮き出てくる。
滅多に女子と話さないので口がもごついて上手く言葉が出ない。
僕が話しかけてた女子生徒とさっきまで話していた他の生徒が後ろでヒソヒソと話している。
僕の汗は更に出てくる。
「えーっと、ウワサが気になっただけで……」
僕は決死の思いで言う。
女子生徒は、僕の事を一度軽く睨んだ後に
「三年二組の矢上先輩に聞いたの先輩に聞けば詳しく分かるんじゃない」
と、自分の髪をくるくると指で回して、僕と目をそらしながら言う。
「ありがとう」
僕は感謝の言葉を口にする。
こんな普段話さない細身で地味な僕に逃げずに教えてくれてありがとうと、心で思いながら早足で、三年の校舎へ向かう。
「何あれ」と後ろで話していたが気にしない。
僕は急ぎながら階段を駆け上がる。
眼鏡がずれたので整える。
僕は三年二組へ向かった。
途中廊下で滑ったものの、何事もなく三年二組の教室に着いた。
学校だから何かあるわけでもないと思うけど……
「矢上先輩って……いま……すか」
僕は息が上がりながら、扉の近くにいた先輩に訪ねる。
「矢上、呼ばれてるぞ」
その先輩が矢上先輩を大声で呼ぶ。
すると一人の男子生徒がこちらに来る。
その男子生徒は、僕を見る。
「俺に何か用?」
男子生徒が言う。
僕はそれに答えて、
「更科雅のウワサについて聞きたいんですけど……」
僕は息を整えて、勇気を振り絞り言う。
先輩は顎に手を当てて暫く何かを考えた後に笑顔で答える。
「分かった、何が聞きたいんだ?」
「更科雅の幽霊を見たってのは貴方ですか?」
僕は真っ直ぐ先輩を見て言う。
先輩は短く首を縦にふった。
「それってどこで見たんですか?」
「ど、どこって其れが覚えてないんだ。暗い道だったのは確かなんだけどそこから記憶が消えてて、力になれなくてごめんな」
先輩は少し申し訳なさそうに言った。
僕は手を顔のまえでふりながら、
「いえ、急にこんなこと聞いてしまいすいません」
と、言った。
「いや、全然また何かあったら言ってくれ」
「あ、ありがとうございます」
そう言って僕は自分の教室に戻った。
良い先輩だったなぁ
僕は自分の席でスマホのメモ帳開きながら今のところの情報をまとめる。
ウワサと先輩の証言から更科雅を目撃するのは夜しかも夜中みたいだ。
そして、詳しい記憶はなくなるっぽい。
話してる時の先輩は嘘を言っている様子はなかったから。
情報をまとめているとスマホの電源が落ちた。
僕は仕方なく筆箱からペンをだしスクールバックからメモ帳を出して、情報のまとめの続きを書いた。
取り敢えず夜中に探してみよう。
僕はそう決意し、退屈な授業を過ごした。
何故、僕はこんなことをしているんだろうという思いは捨てて。
――――――――
学校が終わり放課後になって僕は、部活をサボり家に帰った。
急いで帰ったせいか息が上がっている。
少し整えて、ドアの鍵を開ける。
ドアを開け、家に入る。
「ただいま」
返事は返ってこず、静けさだけがあった。
僕は取り敢えず自分の部屋に向かう。
自分のベッドの上にスクールバッグを置き、制服を脱ぐ。
そして、滅多に着ない私服に着替え(普段は家から出ずにジャージのため)出掛けるようの肩かけバッグを出して、財布を無造作に入れる。
スマホを充電器に刺して、目覚まし時計を午後八時にセットして、スクールバッグをどけベッドに寝転んだ。
そのまま僕は眠りにつく。
服にシワができることも考えずに。
――――――――
ピッピッ!ピッピッ!
僕は目覚まし時計の音で目を覚ました。
目覚まし時計を止めて、ベッドから起きる。
時間は八時。
まだ誰も帰ってきてないようだ。
僕は一度キッチンへ向かう。
冷蔵庫のなかを覗いて、卵とハム、ネギを見つけ、炊飯器から冷えたご飯を出して、チャーハンを作る。
味は不味くはない。
僕はそれをむさむさ食いながら、今日の予定を考える。
散歩に行くという体で出掛けよう。
誰に言い訳するわけだもなく、自分に言い聞かせた。
そんな事を考えながらも、口へチャーハンを運ぶ。
うん、美味しくもない。
僕はチャーハンを食べ終え、皿を水に浸けて置いておく。
自分の部屋に戻り、スマホを充電器から外し連絡が入ってないか確認。
入っているわけがない。
僕はバッグにスマホも入れ、リビングのテレビで動画サイトを軽くみて、いつでも出掛けられる準備をした。
母さんは帰り遅くなるっていってたし、父さんも出張だから今日がチャンスだ。
僕は時計が十時半を指しているのを確認して、家を出た。
少し冷えていたので、一度家に入り薄手の上着を着てもう一度家を出る。
月明かりを便りに歩く。
まだ十時半だから多少電気が着いている家は幾つかある。
僕は歩いていく。
十分位歩いた時に僕は喉が渇き、近くのコンビニエンスストアに寄った。
僕はお茶とミントを持ってレジに向かう。
僕は財布をバッグの中から探した。
あった。
財布を探しているときにバッグの中にピアッサーが入っていたが無視しておこう。
僕はぴったりの料金を払いレシートを受け取り、お茶とミントをバックに入れてコンビニエンスストアを出た。
レシートは握りしめて上着のポケットに入れた。
クシャッ
という音が僕の耳に入った。
僕はお茶を飲んだ。
喉をスーッと通り、ごくごくと入っていく。
胸の辺りがひんやりとして、お茶が僕の体に入るのを感じる。
僕は、そこから暫く歩き、信号で止まった。
周りに人は誰もいない。
信号が変わり渡ろうとした時に不思議な空気を感じた。
僕は何かに誘われるように足を動かす。
暗い道に入る。
不思議な空気はまだ漂っている。
そして、暗い細い道を見つけた。