表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エピローグ

作者: 加部宮 情也

 私は栞を置いて、思わずため息をついた。感嘆の意が籠る美しい称賛のため息だ。

 とある話、とある人の物語。本当に本当にちっぽけで、弱くて意気地のない男の子の恋の話。ドキドキする展開はなかった。見惚れるような文章力は無かった。だけど、私は思わず感嘆してしまう。

 物語の最後には、空白の頁が残されていた。彼の物語は初恋の女の子を置いていってしまったところで終わっている。

 ——いいや。終わっていないのだ。未だに。

 空白の頁、挟まれぬ栞。物悲しげな書体の著者名は「ロクデナシ」とある。

 一体今、彼はどうしたいのだろう。そして私は何が言いたいのだろう。この空白は、頭が真っ白なこの本は、未来の見えぬ霧は、一体何を隠しているのだろう。

 そんなまだ見ぬ先、そして空白の最後に刻まれたFinの文字。私はそれに感嘆した。

 彼は彼にしか選べない。彼は彼にしか決められない。

 私は私でさえ見えない。私は私ですら決められない。

 それでも。人生の読者だったとしたら、なんと感想を述べるだろうか。

 私はペンを取り出して、空白の霧を裂くようにインクを走らせる。


 人はみんな死ぬ。だけど、それが次の瞬間かもしれないことに、貴方は気づいていますか?

 今すぐ死ぬと思って、生きてみよう。

 永遠に生きると思って、楽しんで死のう。


 気づけば、後ろに彼がいた。

 そして手を差し出して、不器用に笑った。


 初恋をありがとう、と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ