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貴様のクラスは…

「ぐぁっ!」

飛来する緑色の球体に当たり一人の男子生徒が吹き飛ぶ。

追い討ちをかけるように更に十数発の球体|(魔力弾)が吹き飛ばされた男子生徒を襲う。

「こんなところで…」

次弾を避けようとありったけの力で回避行動をとる。

しかし、相手の男子生徒−司城司しじょうつかさの方が何枚も上手だった。

「弱いな」

司は見離した様な冷たい口調で言うと相手の男子生徒の回避上に魔力砲を撃ち放つ。

「そんな⁉︎」

回避行動に出た男子生徒は自分の避けた先に魔力砲撃が来るとは思ってもおらず防御も回避も出来ずに砲撃の直撃を受け戦闘不能になった。

「所詮はこの程度か」

司は視界に映る相手のライフポイントがゼロになるのを確認もせずに実技練習場から出て行った。

司が出て行った後一つのアナウンスが流れる。

『これにて新入生クラス振り分けテストを終了します。新入生の皆さんは体育館に戻りクラス発表まで待機して下さい。』

アナウンスが流れ終わり新入生が体育館へと移動する。

数十分後無事にクラス振り分けが終わった。

ただ一人を除いては…


時間は新入生クラス振り分けテストが終わる数分前に遡る。

「はぁ、はぁ…!」

小鳥遊宗次たかなしそうじは学校へ続く長い坂道を全力で走っていた。

「着いた〜。まだ間に合うか?」

ようやく校門前に着いた宗次は一息つき校舎に向かって走り出そうとした、その時だった。

宗次の前に巨大な斧が地面に突き刺さる。

「なん…」

宗次の声を遮る様に野太い声が宗次にかけられる。

「貴様。新入生のくせして遅刻して来るとはいい度胸だな。遅刻した貴様のクラスはすでに決まっている」

「えっ」

一瞬、ビクリとした宗次だが持ち前の胆力を活かし声の主ー校舎の入り口に立っている先生ーに向かって言葉を返す。

「待ってくれ!遅刻したのは悪いと思うがテストは受けさせてくれよ!」

宗次の言葉に額に青筋が入った先生ー室才蔵むろさいぞうは無言のまま宗次の前まで歩き斧を手に取ると斧を宗次に向かって突き付けた。

「どうやら歳上に対する言葉使いも知らん様だな。そんなにテストをして欲しいのなら俺が躾として貴様テストをしてやろう」

室は少しドスのきいた声で言うと宗次から2メートルほど距離を取る。

「さぁ貴様も端末機デバイスを起動しろ」

既に起動状態の自身のデバイスを地面に刺し宗次に言った。

「(相手は先生…それに支給されたデバイスで勝つのか。難しいな)」

少しの思考の後、意を決してデバイスを制服のポケットから取り出す。

「それじゃお言葉に甘えさせて貰いますよ」

どんな形であれテストを受けれる事に目の前の先生に多少の感謝を心の中でしてから宗次も学校から支給されたデバイスを起動させる。

宗次の手からストラップ並みのサイズのデバイスが起動し一般的な刀の大きさになる。

防護服バリアアーマー展開!』

宗次と室は同じタイミングで言うとお互いの服が別の服へと瞬時に変わる。

宗次は制服の上に白衣の様な防護服を纏い、室は素肌に中世の剣闘士の様な防護服を纏う。

そして、VSSヴァーサスシステムが作動し小規模の半円形の結界が室と宗次を覆いお互いの頭上にライフポイントが5000と表示される。

「先手は貴様にやろう」

言うと室は斧を肩に担ぎ腰を少し下げた。

「なら、行くぜ!」

相手との距離は2メートル、宗次は室へと直進する。

「(あの構えなら斧を担いでない方の横っ腹が狙える!)」

宗次は斧を担いでいる側の腹部目がけ刀を振る。

もちろん、室は宗次の攻撃を防御する為に刀が振るわれた側に気を向ける。

「(かかった!)」

しかし、宗次の繰り出した攻撃は室の意識を斧を担いでいる側に持っていくだけのフェイントに過ぎず本命の攻撃はこの後だった。

宗次は攻撃をキャンセルし体を180度反転させる。

回転勢いを乗せた攻撃は室が気を向けた方とは反対側の腹部に向かう。

「決まったっ!」

宗次が攻撃の直撃を確信した直後…

「甘いわぁぁあ‼︎」

室が叫ぶ。

そして、ガキィンと音を鳴らして斧が刀を防ぐ。

そのまま室は斧を持ってない手で宗次の手首を掴むと前に放り投げる。

「くそ!」

宗次は空中で姿勢を立て直し着地する。

「なんだ。その程度なのか?」

室の挑発じみた言葉に宗次はムカつくもののそれは室に言われた言葉だけではなかった。

「(なんだ。このデバイスの使い悪さ!まぁ、そんなこと言っても仕方ない。さて、どうするかな…)」

長い思考の後宗次は視線を室に向け直す。

「やるしかないか‼︎」

刀を握り直し室へと走り出す。

それと同時に室も走り出し互いの距離は一瞬にして縮まる。

斧と刀が激しくぶつかり合い互いの位置を何度も変えながらの近接戦闘は僅かだが宗次が押している様に見えた。

宗次のデバイスである刀は斧よりは少ない動きで扱える。斧を使っている室はどうしても大振りになってしまっていたが室は斧の重量を利用し体の位置を変えながら戦い斧の欠点をカバーしていた。

「(よし。なんとか押してる。でもライフがヤバいな…ここで一気に畳み掛けるか!)」

宗次のライフは既に1000を切っていた。

これ以上長引けば先にライフが0になるのは恐らく宗次の方だろう。

その為、宗次は勝ちを急ぎ勝負に出た。

宗次の身体強化魔法を発動させ自身のポテンシャルを底上げする。

それと同時に先程よりも鋭く高威力の攻撃が室を襲う。

しかし室は圧倒的な技量を持って宗次の連撃を捌いて行く。だが幾つかの攻撃は受けてしまいライフが少しづつ減っていく。

「(こいつ、俺の動きに慣れて来てるな。手数が多くなって来た。だがっ…‼︎)」

室は連撃のほんの僅かな隙をついて魔法を一つ発動する。

宗次が次の攻撃を繰り出そうとした瞬間、それは室と宗次の間で爆発する。

「うぁあ‼︎」

宗次は突然の爆発により後ろに吹き飛ばされ何とか体勢を立て直しダメージを軽減さする。

しかし、宗次のライフは560となっていた。

発動していた身体強化魔法のおかげで0にはならなかったものの、またも室との距離が開いてしまった。

「やはり、あの距離でやる様な魔法ではないな」

魔法を発動した本人である室も無傷ではなかった。

爆発の直前で後ろに飛んで回避したが距離が足りず自身もダメージを受けてしまったのだ。

しかし、室のライフはまだ2500と半分も残っていた。

「先生、無茶しますね。あの魔法はいったい何です?」

宗次はあえて室と会話をする。

それは自分の体力と魔力回復為だったが室にとっても同じ事、室は宗次の質問に答えを返す。

「今のは炎熱系魔法の一つだ。俺の得意な魔法なんでな。炎熱魔法は。まさか新入生に使うとは思ってもいなかった。」

ガッハッハと室は笑いだす。

「(なるほど。炎熱魔法の一種なのか。見せた以上まだ使って来そうだな…警戒するに越した事はないか)」

宗次は納得し頷くだけで終わりにした。

室は笑い終わると目つきを鋭くして宗次を見る。

「さて、そろそろ終わりにするとしよう。」

そう告げると室の持つ斧に炎が激しく燃え上がる。

そのまま、斧を横に一振りした流れで頭上より高く上げ今度は真下に振り下ろす。

炎は地面に叩きつけられた後、一層激しさを増し一直線に宗次の方に炎の渦が放たれる。

「っ!」

宗次は向かって来る炎の渦を防御ではなくむしろ炎の渦に向かって走り出す。

そして、炎が当たる直前で上に飛んだ。

そのまま、炎の渦を越え刀を上段に構える。

「バカが。空中では攻撃は避けられんぞ!」

室は斧を上に持ち上げ斧の先端を宗次に向けるとそこから魔砲撃を放つ。

いかに、手練の戦士だとしても空中ではまともに回避する事は出来ない。

それ故に自ずと選択肢は防御を選ばざるを得ないのだ。

だが、宗次は違った。

宗次は防御も何もせず砲撃の射線上で構えたままである。

「(終わりだ。)」

室はそう思った。

いや、誰が見ても砲撃をくらって宗次が負けると思うはずである。

しかし結果は違った。

宗次の体は空中で砲撃が当たる直前に横にスライドしたのだ。

「もらったぁあ!」

宗次が叫ぶ。

上段に構えた刀を室に向かって振り下ろす。

「まだだぁあ‼︎」

室は斧を無理やり自分と宗次の刀の間に挟み込むがそれより早く刀は室を捉えていた。

室の防護服を宗次の刀が斬り裂き室本人にもダメージが加わる。

室のライフが1000を切る。

「ぬっ…‼︎おぉぉお‼︎」

だが室の教師としての意地が宗次に牙を剥く。

無理やり挟み込んだ斧を横に振り今のはまさに室へとダメージを与えまだ滞空中で室の横に居る宗次を襲う。

「ぐっ!」

宗次はそのまま受け身も取れずに地面に叩きつけられ衝撃で肺から空気が逃げる。

ライフが0に向かって回り始めた。

そう、宗次の攻撃は失敗同然に終わったのだ。

最後、室が挟み込んだ斧によって真っ二つにするつもりの攻撃は防護服と室に少しダメージを与えるだけで終わり、そしてこの有様の原因は自分の油断が生んだもの、そこまで考えた所でビーと音が鳴る。

それは宗次のライフが0になりVSSが試合終了の音を鳴らしたのだった。


結界が解け今までの戦闘による傷が治って行く(と言うより消えて行く)

VSSを使っての戦闘では傷はプログラムにより再現されているだけで実際には傷はなく結界が解けるとプログラムも再現を終了する。

その為、戦闘中の傷は消えるのである。

「くっ!あれ?起き上がれない」

しかし、傷は消えるが体に蓄積されたダメージは残っておりVSSが再現を終了しても受けたダメージによってはすぐに起き上がる事が出来ない。

今の宗次はまさにそれだった。


起き上がる事が出来ない宗次の横で室は呆然としていた。

それもそのはずで、なにせ教師が新入生相手にライフを1000以下まで削られ、その上最後の攻撃は半ば反射的におこない技もへったくれもなかったのである。

「(中々良い腕をしている。遅刻しなければ上のクラスも狙えたかもしれんな。)」

室は自分をここまで追い詰めた新入生–小鳥遊宗次–の下に近寄り体を肩に乗せ保健室へと移動を始めた。

体は動かないが喋る事は出来る宗次が肩に乗せられたまま室に話しかける。

「それで、俺のテストの結果はどうだったん…ですか?」

危なくタメ口になるのを抑え室に聞いたのは自身のテストの結果。

それは、室があの勝負始める前に言った『躾としてテストしてやる』の事だ。

聞かれた室は小声で『バカめが』と言った後、結果はを言う。

「阿呆か貴様は、俺は『躾としてテストしてやる』と言ったんだ。あれは正式なテストではない。第一最初に言っただろ。『遅刻した貴様のクラスは決まっている』と。おめでとう。合格だ。貴様は明日から俺の受け持つクラス、最下層のH組だ。」

室の言葉に宗次は空いた口が塞がらないでいた。

あれは正式なテストではない。

その言葉が宗次に大ダメージを与えていた。

ならば、今のこの状況は、あの闘いはなんだったのか。

その全てを含めて宗次は

「嘘だろぉぉぉぉお‼︎」

叫ばずにはいられなかった。

こうして、小鳥遊宗次の学校生活が幕を開けた?

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