16話
厨房に戻って職人たちに例の三人が来たことを伝えていると、アデーレがやる気に満ちた表情でやってきた。
「気合十分ね。アデーレ。あなたの笑顔はまるできらめくキャンディーのようだわ」
わたしが言うと、アデーレは不敵な笑みを返してくる。
「あなたこそ焼きたての木の実のクッキーのように香ばしいわよ。クラリッサ」
「あら、今日のわたしはクッキーなのね」
いつもながらレオンのたとえ方の基準がよくわからないが、お菓子にたとえられる方が「死んだ魚」にたとえられるより遥かにましだ。
「ええ。エリーゼは色鮮やかなマカロンだったわ。さて、二人とも、心構えはいい? 喫茶室の本番はこれからよ。まずは、クラリッサ」
アデーレは途端に鋭い目付きになる。
「アルフレート様のご注文は『クラリッサ』だそうよ。なんだかとても疲れていらっしゃるようで、ただクラリッサの名前しか呼べない、という大変なご様子だったわ。おなかがすいているときのクラリッサほどではないにしろ、目が死んでいらしたから、早めに行って差し上げるといいわ」
「ね、ねえ、アデーレ。おなかがすいたときのわたしってそんなに目が死んでいるのかしら」
「ええ。はっきり言って、死んだ魚以上に死んでいるわね。もちろん、今は大丈夫よ、クラリッサ。ちゃんと生きているわ」
わたしが喜べばいいのか悲しめばいいのか迷う間にも、アデーレはわたしの両肩を勢いよく叩いてから、エリーゼに向き直る。
「エリーゼにはレオン様とカイル様の給仕をお願いするわ。アルフレート様はかなり厄介なご様子だったからクラリッサの手が取られてしまいそうだし、カイル様もアルフレート様ほどではないけれど、やたら、エリーゼ、エリーゼと言ってらしたもの。私はケーキを注文したら喫茶室に戻るから、あとは頼んだわよ、二人とも」
「ええ! 任せて、アデーレ!」
「わかったわ! アデーレ!」
アデーレは職人にレオンのブルーベリーのタルトとカイルのチーズケーキを注文すると、紅茶はいつも通りだと言い置いて、すばやく背を向ける。
わたしも職人にアルフレートのケーキを注文した。アルフレートの注文が「クラリッサ」というのは注文する気力もないからわたしに任せる、ということだ。以前にもあったことだが、仕事が忙しいあまりにお昼ご飯を抜いてしまったのだろう。
紅茶は「ベルヴァルト」にしておいた。疲れているときは飲み慣れているものが一番だ。
隣のエリーゼは「愛の訪れ」と「乙女の夢」の缶を手に取っている。レオンが好む「愛の訪れ」は花の香りがして、飲むと花の蜜のような甘さがある。カイルの好きな「乙女の夢」は甘いお菓子のような香りのお茶だが、飲めば意外にもすっきりとさわやかな味がする。二つの紅茶は、その名前から女性に好まれることが多く、男性はなかなか頼みにくいようだが、我が道を行く彼らには関係のないことなのだろう。
エリーゼは手際よく茶器を並べながら軽くため息をつく。
「もう、アルフレート様ったら、今朝会ったばかりなのに『クラリッサ』を注文するなんて、少し、わがまますぎるのではないかしら。いくらアルフレート様だって、そんなに軽々しく『クラリッサ』を注文してはいけないと思うわ」
「ほらほら、エリーゼさん。アルフレート様の軽口なんていつものことじゃないですか! そんなことくらいで、すねた顔してちゃだめですよ!」
ケーキの皿をワゴンに載せたルーカスが言うと、エリーゼは指を振りあげる。
「あら、ルーカスがそんなことを言うなんて思わなかったわ。あなただって、お客様が『コリンナ』を注文されたら、きっと、こんな顔になると思うわよ」
「当たり前じゃないですか! こんな顔どころか、俺だったら、もっと怒りますよ! 怒りまくりですよ!」
「ふざけたことばかり言っていないで、手を動かしなさい。ルーカス」
コリンナの冷ややかな声にルーカスは焦ったように両手を振る。
「すみません! コリンナさん! 俺、さぼってないです! さぼってないですから! あと、俺、コリンナさんのこと、大好きです!」
「だから、無駄に手を振るんじゃなくて、仕事のために手を動かすの! おかしなことばかり言ってないで、仕事をしなさい、ルーカス」
「はい! コリンナさん!」
敬礼でもしかねない様子でルーカスは厨房へと身を翻す。コリンナがため息をつくのを見て、エリーゼは心配そうな顔になる。
「コリンナ。お店の様子はどうかしら。手は足りているの?」
「ええ。今のところは大丈夫よ、エリーゼ。そうそう、さきほどいらしたルーマン様があんたの作るジャムをぜひ分けてほしいとおっしゃっていたの。よほどお気に召したみたいだから、今度、売り場に出してもいいか、店長と相談してみたらどうかしら」
「まあ、とても光栄なことけれど、本当にいいのかしら」
「とても良い考えだと思うわ。だって、エリーゼのジャムはとってもおいしいもの!」
わたしが勢いよくうなずくと、エリーゼは、はにかんだような笑みを浮かべる。
「ああ、それから、二人とも、ヨーゼフさんに言ってデザートは残してあるから休憩中に食べるといいわ。クラリッサ。あんたには特別に私の分もあげるから、しっかりがんばるのよ」
「ありがとう! コリンナ! あなたって、いい人ね!」
「そうよ。わかってくれて、うれしいわ」
デザートと聞くと、あれだけお昼を食べたのにデザート分だけおなかがすいてくるような気がしてくる。しかも、わたしの分だけではなくコリンナの分まであるのだ。わたしは背を向けるコリンナに「なんていい人なんだろう!」と感謝を捧げながらも、砂時計が落ちるのを見計らって、紅茶を移し替えるためのポットを用意する。
「お店にいらしてくださったのはうれしいけれど、お兄様、お仕事は大丈夫なのかしら。昨日もお会いしたのよ」
「あら、そうだったの?」
「ええ。クラリッサの意識が戻ってから、私、一度お店に戻ったの。そのとき、お兄様と偶然お会いしたのよ」
それは、絶対に偶然ではないだろう。カイルはエリーゼをいつでもどこからでも執念深く見守っているのだから、彼女が現れるのを見て、急いで姿を現したに違いない。ゲームでは街路樹に登ってまでエリーゼのことを観察していたようなエピソードはなかったのだから、こちらではさらにストーカー度が増しているのかもしれない。
美しく盛り付けられたケーキの皿と紅茶のポットをワゴンに並べ終えると、わたしとエリーゼは喫茶室の窓際のテーブルへ向かった。お客様方の視線はちらちらと窓際の目立つテーブルへ向けられており、それを意識しているのかどうか、レオンはずっと優雅な笑みをたたえている。さすが本物の王子様だ。
その一方で、カイルはひたすらエリーゼを凝視し、アルフレートもまた、わたしにすがるような目を向けてくる。人目があるのだから、彼らも少しはレオンを見習って、笑顔ではなくとも、せめて普通の表情を見せてほしい。
「いらっしゃいませ。レオン様。カイル様」
アルフレートの視線は感じながらも、とりあえず、わたしは先に二人に挨拶をした。
「やあ、さくさくのクッキーのようなクラリッサ。ああ、きみが歩くだけで焼きたてのクッキーの香りがするようだよ。俺は昨日のことを聞いてから、ずっと、この胸を痛めていたのだけれど、いま、きみの笑顔を見たおかげで、ようやくその痛みがなくなってくれたよ。元気そうで何よりだ」
レオンは立ち上がるとわたしの手を取り、流れるような動作で手の甲に口づけを落とす。
「ちょっ!? 何してるんですか!? レオンさん、勝手に何してるんですか!」
アルフレートがすごい声を上げたが、レオンは構わずにっこり笑う。
「ただの挨拶だよ。ずいぶんと心配したんだから、これくらい、当然だろう? いいよね、クラリッサ」
「いいえ。できれば控えていただけるとうれしいですけれど、心配してくださって、ありがとうございます。レオン様」
わたしは手を引き抜きながら、軽く礼を取る。
「元気になってくれて、とてもうれしいよ。香ばしいクラリッサ。そうだ。階段から落ちたというのに、奇跡的に無傷だったというきみのすばらしい頑丈さを称えて、今度から、落としても決して割れない鋼のクッキーと呼んでも構わないかな? 俺はあのクッキーが大好きだったんだ。なくなってしまって、とても残念だったな」
「ええ。わたしもあのクッキーは好きだったのですけれど、ご年配のお客様から歯が折れそうで食べるのが怖いというご意見をたくさんいただいてしまいまして。それに、小さなお子さんも堅くて食べられないと泣いてしまうというご意見もありまして、取り扱いをやめることにしたんです」
「残念だよ。すごく堅いクッキーもそれはそれで、食べ応えがあっておいしいよね。もちろん、鋼のクッキーのようなきみもとっても魅力的だよ。クラリッサ」
レオンはわたしに片目をつぶって見せてから、エリーゼに目を向ける。
「さて、きみはもう大丈夫かな。色鮮やかな、俺のマカロン」
「あら、私は元々なんともありませんわ」
「おや、痛むのは体だけではないだろう? 体と同じくらい、心だって痛むからね。俺が痛かったくらいなんだから、きみの痛みはもっとひどかったんじゃないのかな。俺のマカロン」
レオンは軽く自分の胸を叩いて見せると、まるでそこに壁があるようにエリーゼの顔の横に手を添えて、耳元に口を寄せた。何やらささやいてから、エリーゼの手を取り、口づける。
「――あの」
珍しいことに、エリーゼは赤くなって、すぐに手を引っ込める。
「レオン。気安くエリーゼに触れるな。この節操なしの軽薄男が」
カイルの低い声に、レオンは軽く笑って優雅に腰かける。
「おや、ひどい言い草だ。こんなに重厚な男もそうめったにいないよ、カイル。ああ、今日のケーキもマカロンと同じくらいに色鮮やかでおいしそうだね。食べるのが楽しみだな」
「え、ええ。お待たせして申し訳ありません。すぐに給仕いたしますわ」
エリーゼははっとしたようにワゴンのお皿を手に取る。
頬を染めたままのエリーゼを見守るレオンの優しい微笑みを見て、わたしは思わず息を止める。
「――ささがき」
「え?」
エリーゼに不思議そうな顔を向けられて、「何でもないの」と慌てて首を振る。
動揺するあまり、つい、心の声があふれてしまった。
――だって。まさか、目の前で。
ささがきが! いや、ささやきの! まさに、ささやき!!! ささやき、王子!!!!
それから突然沸き起こった床に転がりたくなる衝動をこらえるために、わたしはアルフレートを見た。動揺したときは、見慣れたものを目にするに限る。彼は疲れきった、遠くを見るような表情を浮かべていたが、わたしの視線に気づいて暗い目を向けてくる。わたしは落ち着かせるようにうなずきながら、ケーキの皿を手に取った。
レオン・バシュタこと、バシュタの第二王子であるレオン王子。
『勿忘草のエチュード』において、彼の異名は「ささやき壁王子」、「ささやきテーブル王子」、「ささやき床王子」、「ささやき庭王子」、「ささやき花王子」、「ささやき川王子」といろいろあるが――とにかくいつでもどこでも機会があれば、エリーゼを壁ドンする形で(壁がなければ他で代用して、何もなければパントマイムのように)ささやこうとするので、異名をつけてもつけても切りがなかったのだ――どれも長いので、略して「ささやき王子」、「ささやきの人」、「ささがき王子」(これはレオン王子担当の声優さんのキャストインタビューの誤植から生まれた)と呼ばれている。
「ささやき王子」の「ささやき」なんて、ゲームでは見慣れすぎていたはずなのに、この破壊力はどうしたことか。やはり、目の前で行われる「ささやき王子」の「ささやき」行為は破壊力がぜんぜん違う。
「ああ、クラリッサ。クラリッサ。クラリッサ。きみに会えない時間は漆黒の闇の中を歩いていたら、途中に段差があってつまづいたあげく、足の小指を角にぶつけたような痛みのようだ。ところで、僕はクラリッサを注文したはずなのにどうして、ケーキとお茶が運ばれてくるんだろう」
アルフレートはどうやら錯乱してしまったようだ。きっと、待っている間に空腹が悪化したのだろう。
「アルフレート。あなたはとりあえず、熱いお茶とおいしいケーキをいただくべきだわ」
わたしは手早くケーキの皿を並べて、紅茶を注ぐ。
「クラリッサ。僕はまだ夢を見ているんだろうか。僕の皿にはりんごのパイと雲のロールケーキと干し葡萄のケーキまで並んでいるようだけれど、どうしてなんだい。きみならともかく、さすがに僕はこんなにも食べられないよ」
「心配ないわ。わたしを信じて、アルフレート。あなた、お昼はまだなんでしょう。全部残さず食べれば正気に戻るわ。足りなければもう一皿持ってくるから、遠慮しないで、アルフレート」
「ありがとう。クラリッサ。でも、このケーキを食べなくても、きみの顔を見ただけで僕は満足しているんだよ。きみのいない人生なんて、紅茶のないお茶の時間のようだと今日はしみじみ思い知ったんだ。クラリッサ」
「――アルフレート」
「いいから、食え!」と目で威嚇すると、アルフレートはおとなしく紅茶を口にして、フォークを手に取った。ロールケーキを口にして、目を閉じる。ゆっくりと飲みこみ、わたしを見上げた。
「――おいしい。とてもとてもおいしいよ。君の言う通り、僕はとてもおなかがすいていたようだ。ありがとう。僕の、お魚さん」
その最後の声の響きが気になって、わたしは内心首をかしげる。
「淑女を魚にたとえるのはあまり感心しないわ。アルフレート」
「そうだね。お菓子にたとえる方がかわいらしくていいと思うよ。アルフレート。だって、女の子は皆、とろけるように甘いお菓子のようじゃないか」
「いや、私には、ご婦人は皆、可憐な花のように思える。花のように、かわいらしく、愛らしく、美しく、その存在に感謝を捧げたくなるほどにすばらしい存在だと思うんだが、どうだろう、エリーゼ」
「私はどちらでもうれしいわ。お兄様」
エリーゼはカイルのカップに紅茶を注いで、にっこり笑う。
「それなら、何かにたとえることなく、そのまま褒めるのはどうだろう? たとえば、きみはとても美しいよ、エリーゼ。とでも言ったら? ――いたっ」
レオンはブーツを履いた片足を押さえる。
「ひどいな。カイル。きみは今、思いきり俺の足を蹴らなかったかい?」
「いや、足を伸ばしただけだ」
「でも、横に伸ばすっておかしくないかな」
「では、無意識に蹴ったのだろう」
和やかな会話が交わされる中、アルフレートはおとなしくケーキを食べては紅茶を飲んでいる。
――お魚さん。
ゲーム内でアルフレートがエリーゼを呼びかける言葉に「お魚さん」なんて言葉はもちろんなかった。
彼はエリーゼを「お姫様」と呼んだ。
それは『勿忘草のエチュード』において、アルフレートがエリーゼを呼ぶための特別の言葉だった。初恋の人を呼ぶ、思い出の呼び名。婚約者のいる彼がエリーゼに「好きだよ」という代わりに「お姫様」と呼びかける。何よりも甘く優しく、いとしさをこめて。
それは、ファンブックのアルフレート担当の声優さんのキャストコメントにも書いてあった。最後の最後までアルフレートは自分の思いを口にできないから、直接的な言葉の代わりに何気ない言葉に愛を感じられるように努力したのだと。
だから、エリーゼを「お姫様」と呼ぶときに、まるで愛のささやきのごとく、甘く聞こえるように思いをこめて演じたのだと。
さっきの響きは、そのときの声に似ている気がする。
つまり、アルフレートは――。
わたしは思わず目を閉じる。
――そこまでおなかがすいていたのだ!
愛をこめて魚を呼びたくなるほどに! だから、あれほど、お昼を抜いてはいけないと言ったのに!
「おいしかったよ。ありがとう。クラリッサ。――ああ、ようやく生き返った気分だ」
「そんなにお仕事が忙しかったの?」
「まあ、仕事は多少忙しかったけれど、いつものことだからね。ただの心労だよ。昨日はきみがあんなことになっただろう? それでよく眠れなかったうえに、今朝は生垣に隠れていたきみに驚かされたし、さっきは木の中に隠れていたカイルさんに驚かされてしまったからね。前もって身構えていたならともかく、僕は驚かされることに慣れていないんだ」
「あら、それなら、あなたが遊びに来るたびにエリーゼと一緒に物陰に隠れて驚かせてみましょうか?」
「いや、無理に僕をきたえようとしなくていいよ。クラリッサ。エリーゼもわくわくしたような顔で僕を見ないでくれ」
「だって、とても楽しそうなんですもの。アルフレート様。あら、お兄様。ほら、ここに葉っぱがついていてよ」
エリーゼがそっとカイルの髪から葉っぱを取る。
「ああ、これはすまない。エリーゼ」
「ねえ、お兄様。あまりお兄様の趣味に口出ししたくはないのだけれど、街路樹に登ることだけはやめた方がいいのではないのかしら。いろいろな人を驚かせてしまうし、お兄様がお怪我をされないか心配だもの。どうしても木に登りたいのなら、もっと郊外のしっかりとした木に登った方がいいと思うわ」
「僕も心からそう思うよ。……カイルさんを見つけたとき、僕は驚きのあまり、心臓が止まるかと思った」
アルフレートが胸を押さえながら力なく微笑むと、カイルは「それはどうもすまなかった」と目を伏せる。
「そんなに落ち込むことはないよ。アルフレート。あの驚き方はとてもおもしろかった。自信を持つがいい」
「言っている意味がわかりませんよ。レオンさん。まさか、あなたまで隠れているとは思いませんでした」
「だって、いくら俺だって、カイルと一緒に木に登るのは嫌だったからね。マルガレーテに行く前に木に登っておきたい、という親友のささやかな願いくらいは叶えてあげたかったんだ。許してくれるかい、クラリッサ」
「ええ。まあ、今度から気をつけてくださるなら、許して差し上げてもいいですわ」
「ほら、クラリッサが許してくれるって。よかったじゃないか。アルフレート」
「それは、まあ、クラリッサがそう言うなら」
アルフレートは納得したような、していないような顔で紅茶を口にする。
「ともかく、すまなかった。アルフレート。エリーゼも心配させてしまってすまない。これからは気をつけるようにする」
「ええ。そうしてくださるとうれしいわ」
誰も気づいていないようだが、「これからは木に登らない」と言いきらないのがカイルらしい返答である。
給仕の間だとはいえ、思ったよりも長く話し込んでしまった。喫茶室の扉が開くのを見て、エリーゼと目を見合わせ、「それではごゆっくり」と二人で礼を取る。
「ねえ、エリーゼ。さっき、レオン様にどんなことを言われたの?」
扉に向かいながらそっと尋ねると、エリーゼはいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「内緒よ。――さあ、一緒にがんばりましょう!」