第5話:運命の再会
車で走るとものの3分ほどで、目的地へ辿り着いた。
太一はコインパーキングに車を素早く停めた。
狭い路地を何度か曲がってライブハウスの近くまで来ると、店の前にたくさんの若者たちが行列をなしていた。
「うわっ!何これ?今日は誰か有名な人が出るのかなぁ」
るいは行列の向こうにある店先の看板を見ようと、必死で背伸びしたり、体を左右に動かしてみたりした。 そして微かに見えた看板に貼られた写真を見て、るいは驚いた。
なんとそれは今日、品川駅で、るいにぶつかってきたあの青い髪の少女だったのだ。
「今日は混んでるし、また今度にする?それとも違う店に行ってもいいし」
るいが驚いているうちに、和子がそんなことを言いだした。
「ううん、ここがいい!」
るいは少し強い口調で間髪入れずにそう言った。
「でもこの様子じゃ、るいちゃん飛び入りで歌うなんて無理じゃない?」
太一が少し心配そうに言った。
「私あの人の歌が聴きたいの!私の歌はまた今度ゆっくり聴かせるから、今日はこのライブが見たい!もしなんだったらおじさんやおばさんは帰ってもいいから」
駅でぶつかっただけの関係なのだから、取り立てて青い髪の少女に興味が湧くほうが不思議なのだが、直感的にるいは何か磁石のように惹き付けられるのを感じた。
「あれ?るいちゃんこのアーティスト知ってるの?」
「え?えへへ、まぁね」
「じゃあ、パパとママは家でゆっくりしてて。こんなに混んでるとツライでしょ!わたしとるいちゃんで、見に行くから。あとで電話するから迎えに来てネ!」
カスミはいつも通りのいたずらっこのような、愛敬のある笑顔で言った。
「じゃせっかくだから俺たちも見るよ」
「いーの!いーの!年寄りは無理しないで!」
「ちょっと!おい!まだそんなに年寄りじゃないよ!」
「まあまあ、いいじゃないパパ。今日のところは若い子同士で楽しませてあげれば」
と、和子が太一をなだめる。
「チェッ!すぐに年寄り扱いすんだからな。まだまだ若いっつうの」
4人の笑顔が交錯して、少しほのぼのとした空気が流れたような気がした。
そしてるいとカスミは長い行列の最後尾に並んだ。