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占いの館

作者: Jun

 寂れた町の人通りの少ない路地裏。そこに『占いの館』 という店があった。

 半年前までは、月に数人程しか訪れる事がなかった店で文字通り閑古鳥が鳴いていた。しかし、今では知る人ぞ知る隠れた名店……いや迷店として人気を博していた。

 事実、雑誌やテレビなどで取り上げられることはなかったが、口コミで噂が噂を呼び、今では休日にでもなると順番待ちの行列ができるほどなのだ。

 さて、なぜ急激にそこまで有名になったのだろうか。ここの占いが高確率で当たるから、もしくは急に当たるようになったから人気が出たのだろうか。残念ながら正反対の理由から、人気を博しているのだ。


 ここの占いは「まったく当たらない」 のだ。

 ここの占いは「すべて外れる」 のだ。


 大事なことだから、表現を変えて二度言った。



 では、何故「当たりもしない」 占いで行列ができるのか。

 それは、今から半年前のとある客の行動によるものだった。


 半年前、一人の中年の男が占いの館に入ってきた。

 彼は、当時いわゆるブラック企業と呼ばれる会社の従業員だった。休日なしで毎日18時間労働の状況で、いつ身体が壊れてもおかしくない状況だったが、金払いだけは良く今の仕事を続けるべきか辞めて新しい仕事を探すべきか悩んでいた。

 そのことを話し占ってもらったのだが、占いの結果は次のようなものだった。


①会社を一週間以上経ってからに辞めること。

②会社を辞めてからは友人に頼ること。

③友人は古い友人ではなく、新しい友人に頼ること。


 しかし男は、このままでは身が持たないと感じ、どうせ辞めるのならと占いの翌日に退職願いを書き上司に提出した。上司は彼を引きとめなかった。占いから一週間後、彼の勤めていた会社に警察の手が入った。どうやら、会社の上層部で脱税や株の不正取引があったようだ。社長をはじめとする取締役は全員が逮捕、従業員も連日警察による取り調べが続いているようだ。男は早く辞めたからこそ、その難を逃れることができたのだ。

 男は会社を辞めてから、占い師に言われた通り、会社を経営している羽振りの良い新しい(・・・)友人を頼ろうとしたが、偶然飲み屋で小学校時代からの友人に出会い、近況を話す。すると偶々その友人が医者になっていた為、友人の勧めで健康診断を受けることになった。その結果、早期の癌であることが発見され、無事に治療することができたのだ。

 更にその友人の紹介で、別の友人が経営するまともな(・・・・)会社に再就職することもできたのだ。

 余談だが、最初男が頼ろうとしていた新しい友人は、占いから一ヶ月後に詐欺の容疑で捕まっている。どうやら心身ともに疲弊している人間に近付き、仕事を紹介するなどと言った手口で金を巻き上げていたようだった。

 占いから一ヶ月後、ふと男は思った。

 占いとは全く正反対の事を偶然だがしたら、すべて上手くいったと。

 ある日、男は再び占いの館へ足を運び、また占ってもらった。そして、今回は意図的・・・に占いと真逆の行動をとってみた。その結果、やはり全てが上手く行ったのだ。しかも、もし彼が占いの通りに動いていたら、それこそ大失敗のような結果だった。

 それからというものの、彼は何か迷うことや悩みがある度に占いの館を訪れ、占いの結果とは正反対の行動を取るようになった。

 ある日、恋愛で悩んでいた友人に占いの館を紹介し、言われた事と反対の事をすれば上手くいくと伝え、事実友人の恋愛は成就した。

 その友人はオカルト好きだったため、彼からオカルト仲間達に話が行き、噂が噂を呼び占いの館は知る人ぞ知る隠れた迷店・・になったのだった。


 今日も占いの館には、人生に迷いがある客でにぎわう。しかし、その客も占いの結果をことごとく無視するのだろうが……。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 全然当たらない占い。徹底している所がいいですね。(笑)
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