27.雪の降る日には君の心を包みこんであげる side佑真
やっと手に入れたぬくもりを抱きしめていたら、何かに思いついたように優さんが腕の中で顔を上げた。
「ってか、山科先輩、ライブはっ!?」
「…………」
優さんのその言葉に、俺は閉口する。
もしかして優さんって、本当に俺の声だけが好きなのだろうかと疑ってしまいたくなる。
「大丈夫だよ、まだ時間はあるし」
「でも……」
心配そうに上目づかいで見つめられて、俺はさっきからコートのポケットの中で振動し続ける携帯を渋々取り出す。
抱きしめていたから、電話のバイブが優さんにも伝わっていたのかもしれない。
「はい」
『やましなぁーっ!!! どこでなにやってんだよぉ~!?』
通話ボタンを押した瞬間、浪江の怒声と涙声が大音量で聞こえて、俺は若干、耳から携帯を離し、俺は冷静な声で答える。
「いま、中央広場の近く。人が多くて移動するのに時間がかかった。浪江は? もうクラブハーツか?」
『そーだよ、さっきから何度鳴らしても全然でねーしよぉ~』
「悪かったって、今から向かうから」
『早く来いよなっ、いくら出番が最後の方だからって……』
ぐだぐだ浪江の文句が続きそうだったから、俺は通話を切って携帯をポケットにしまった。
「あの、大丈夫ですか……?」
不安げに見上げる優さんを安心させるように微笑む。
「心配かけてごめんね、でも出番は後の方だから、そんなに急いでいかなくても大丈夫なんだ」
いますぐにいかなければ浪江の怒りは収まらないだろうが、入り時間にはもう少し時間があるからいいだろう。そう思った時。
ポケットの中でまた着信を知らせて携帯が震えだした。
携帯を取り出し、通知画面に浪江の名前を見て眉を顰め、電話に出もせずに通話を切った。
どうせ文句の続きだろうと思ったら、再び携帯が震えだす。今度は浪江からのメールだった。電話にはでないと浪江も分かったのだろう。
『おい、切るなよな!? ってか電話出ろよ。どうせ、ユーちゃんと一緒なんだろ?
お前がさっき電話切ったから言いそびれたけど、酒井たちクラブハーツにいるから、ユーちゃん連れてさっさと来いよ!!』
メールを読み終えて、俺は何とも言えない気持ちになる。
わかったよ、行けばいいんだろ……っ
「山科先輩……?」
携帯を見ている俺に優さんが心配そうに声をかけてきた。
俺はふっと口元をほころばせて、優さんに微笑みかける。
「酒井たちクラブハーツにいるっていうから、一緒に行こう」
これにて完結です。
「たとえば、僕たちが」最後まで読んで頂きありがとうございます!




