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たとえば、僕たちが  作者: 滝沢美月
second half
27/28

27.雪の降る日には君の心を包みこんであげる side佑真



 やっと手に入れたぬくもりを抱きしめていたら、何かに思いついたように優さんが腕の中で顔を上げた。


「ってか、山科先輩、ライブはっ!?」

「…………」


 優さんのその言葉に、俺は閉口する。

 もしかして優さんって、本当に俺の声だけが好きなのだろうかと疑ってしまいたくなる。


「大丈夫だよ、まだ時間はあるし」

「でも……」


 心配そうに上目づかいで見つめられて、俺はさっきからコートのポケットの中で振動し続ける携帯を渋々取り出す。

 抱きしめていたから、電話のバイブが優さんにも伝わっていたのかもしれない。


「はい」

『やましなぁーっ!!! どこでなにやってんだよぉ~!?』


 通話ボタンを押した瞬間、浪江の怒声と涙声が大音量で聞こえて、俺は若干、耳から携帯を離し、俺は冷静な声で答える。


「いま、中央広場の近く。人が多くて移動するのに時間がかかった。浪江は? もうクラブハーツか?」

『そーだよ、さっきから何度鳴らしても全然でねーしよぉ~』

「悪かったって、今から向かうから」

『早く来いよなっ、いくら出番が最後の方だからって……』


 ぐだぐだ浪江の文句が続きそうだったから、俺は通話を切って携帯をポケットにしまった。


「あの、大丈夫ですか……?」


 不安げに見上げる優さんを安心させるように微笑む。


「心配かけてごめんね、でも出番は後の方だから、そんなに急いでいかなくても大丈夫なんだ」


 いますぐにいかなければ浪江の怒りは収まらないだろうが、入り時間にはもう少し時間があるからいいだろう。そう思った時。

 ポケットの中でまた着信を知らせて携帯が震えだした。

 携帯を取り出し、通知画面に浪江の名前を見て眉を顰め、電話に出もせずに通話を切った。

 どうせ文句の続きだろうと思ったら、再び携帯が震えだす。今度は浪江からのメールだった。電話にはでないと浪江も分かったのだろう。


『おい、切るなよな!? ってか電話出ろよ。どうせ、ユーちゃんと一緒なんだろ?


 お前がさっき電話切ったから言いそびれたけど、酒井たちクラブハーツにいるから、ユーちゃん連れてさっさと来いよ!!』


 メールを読み終えて、俺は何とも言えない気持ちになる。

 わかったよ、行けばいいんだろ……っ


「山科先輩……?」


 携帯を見ている俺に優さんが心配そうに声をかけてきた。

 俺はふっと口元をほころばせて、優さんに微笑みかける。


「酒井たちクラブハーツにいるっていうから、一緒に行こう」




これにて完結です。

「たとえば、僕たちが」最後まで読んで頂きありがとうございます!

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