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たとえば、僕たちが  作者: 滝沢美月
second half
25/28

25. 会えない寂しさ side優



 大祭以来、ぱったりと構内で山科先輩とすれ違うことがなくなった。

 山科先輩の姿を遠くに見かけることはあったけど、私からは声がかけられなくて、山科先輩から声をかけてくれることもなかった。

 毎日のように山科先輩に会っていたような気がするのは夢だったのだろうか。

 本当に単なる偶然だったのかな。

  二次会に行く集団からひっそりと抜け出した山科先輩とまりなさんの後姿が、ずっと頭から離れない――

 山科先輩とまりなさんは何を話していたのだろう。

 息も触れそうな距離で、親密な二人の様子が目に焼きついて離れない。

 昔付き合っていたのなら、今だって仲がいいのは当たり前で、もしかしたらよりを戻すのかもしれない。

 そう考えたら、胸がもやもやして苦しくて……

 そんなの嫌だった。

 そう思って、私は自分の中でどんどん山科先輩への気持ちが大きくなっていることに気づいた。



  ※



 駅への到着を告げる車内アナウンスに、私はイヤホンを耳から外し音楽プレイヤーに巻きつけて鞄にしまった。

 もう音楽は流れていないけど、頭の中でさっきまで聞いていた曲が流れ続けてて、つい口元が緩んでしまいそうになるのをきゅっと引き結ぶ。

 大祭の後、浪江先輩が一枚のCDをくれた。なんなのだろうと思ったら、大祭のステージを録音したものだった。

 自分の気持ちに気づいた私。フラれた時の傷はまだじくじく痛むけど、一歩を踏み出そうと思った。

 山科先輩の歌声が好きですって伝えて。一緒にいると楽しくて時間を忘れてしまって、もっと一緒にいたいって思ったこと。いろいろ伝えたいことがあったけど……

 山科先輩の胸にすがりついて泣いていたまりなさん。親密な二人の姿が脳裏にちらついて、弱気になってしまった。

 大学でもすっかり会わなくなってしまったし、私は一筋の光にすがるような気分で山科先輩の歌声を繰り返し何度も聞いた。



  ※



 電車の遅延で待ち合わせ時間ぎりぎりになってしまった私は、走って待ち合わせ場所に行っ。


「優、こっち」


 身長の高い美笛ちゃんがすぐに見つけてくれて、私は人込みをかき分けて進んだ。


「ごめん、お待たせっ」

「大丈夫だよ~」


 笑顔の理緒ちゃんといおりんと妹尾君。それからちょっとムスッとした表情の健太郎。

 みんなコートを着込んでマフラーや手袋と防寒対策ばっちりだった。

 大学から数駅離れた駅に毎年、大きなクリスマスツリーが飾られてイルミネーションされている。

 今日はクリスマスを目前にした二十三日。みんなでクリスマスツリーを見て、そのままショッピングをする予定なんだけど。

 美笛ちゃんと妹尾君が昼過ぎまでバイトだったから、暗くなり始める夕方の待ち合わせにしたら、駅前はすごい人になっていた。


「すごい人だね、これ、みんなツリー見にいくんだよね?」

「今週のクリスマスは平日だから、今日が一番混むんじゃない?」

「えっ、じゃあ、理緒ちゃんは今日、彼氏さんと会わなくて大丈夫なの?」

「うちはお互い学生だから、二十五日の講義終わってからデートだよ」

「美笛ちゃんは土日に会ったんだよね?」

「そう。で、店長に土日休んだ分、今日は絶対にシフトにはいれって言われて」


 私も土日はバイトだったし、まあ、みんなの都合の会う日が今日しかなかったというわけなんだけど。

 駅前からクリスマスツリーまでの道のりさえ、すごい人で進むのが大変だった。


「優、はぐれるなよ」


 一番後ろをついて行っていた私に健太郎が声をかけてくれた。


「うん」


 私は返事をしながらも、駅からクリスマスツリーまでのイルミネーションされた街並みを見上げて感嘆のため息をもらす。


「うわぁー……」


 大通りの並木は白と青の電飾が施され、キラキラと輝くツリーの道になっている。通りのお店のウィンドウにはクリスマスのオーナメントが飾られていて華やかな気分にさせてくれる。

 ついイルミネーションに見とれていたら、少し前を歩いていた美笛ちゃん達の姿を見失ってしまった。

 焦って早足で前に進んでみるけど、あまりに人が多すぎてなかなか前に進めない。

 前を見ても、左右を見ても、後ろを見ても、美笛ちゃんも理緒ちゃんもいおりんも妹尾君も健太郎もいなくて、一気に不安な気持ちが押し寄せてくる。

 やだっ、はぐれちゃった……

 心細さに、咄嗟にどうしていいかわからなくなる。

 ――――っ

 ぎゅっと唇を噛みしめて、泣きそうになるのを堪えた時。


「優さん……?」


 すうっと胸に染み入る優しい声がかかる。

 ずっと聞きたくて、ずっと聞けていなかった声。

 振り返ると、ずっと会いたくて、会えなかった山科先輩が立っていた。




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