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裏方の一幕  作者: estimate
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第四話

 福島県沖上空。

 黒木と神林を乗せた二機のラプターは、「予定通り」富士山上空で旋回し、北へ進路を取り、ステルスモードで福島上空を飛ぶ大回りの形で、旧東京へ向かっていた。目指すは市ヶ谷臨時飛行場。第3次世界大戦時に占領軍が使い物にならなくなった横田の代わりに作らせた飛行場で、現在は、『レジスタンス』の基地のなっている。つまり、完全アウェーへの強行着陸を試みる気でいた。

 だが、問題は『レジスタンス』だけでは無かった。

「ここからは『旧東京防空レーダー圏』に入ります。恐らくラプターでもこの網はくぐれません。作戦コードを申請していない機体なので、自衛隊機に迎撃される可能性もあります。」

パイロットが緊張した声で言った。

「この機体I.Sシールド装備してます?」

黒木は酷く蒼白い顔で言った。

「装備してますが。」

「なら大丈夫です。それより、早く着いて下さい。マジで酔ってきました。」

「ら、ラジャー。」

パイロットは黒木の大丈夫という言葉を信じ、ベイルアウトされては敵わないと、速度を上げた。

数分後、霞ヶ浦上空。2機は最終アプローチへ入った。

「おかしいですね…。」

徐々に高度をさげながら、パイロットが言った。

「とっくにレーダーに引っかかってる筈なのに、要撃機が上がってきません。」

「皆本作戦の方で忙しいんじゃないですか?」

「だからこそ、不明機を逃す訳がないと思うのですが…。」

「………まさか。」

そのまさかは、すぐに現実のものになった。


「ロックされました!!」

コックピット内にけたたましい電子音が鳴り響く。

「いつの間に!?糞!!レーダー展開!!」

黒木の前の画面に、レーダーが表示される。だがそこには、敵機の姿は映っていなかった。

「やっぱり、やりやがったか。」

その時、相手のパイロットから無線が入る。

≪今すぐ空域を離脱せよ、さもなくば撃墜する≫

流暢な英語での警告は、すぐさま警告射撃へと切り替わる。

パイロットは機首を左に傾けながら、横につけてきた機体を見て驚愕した

「ホーネット!?何でここに!」

ホーネット3機は進路を千葉方面に向けた2機をなおも執拗に追い回した。

≪そちらへ行くな。進路を南に取れ。≫

言われるがままに進路を南に取り、千葉から、東京湾へと抜ける。

「ば、馬鹿な………!」

パイロットは左手の遠くに見える船の影に我が目を疑った。

東京湾の入り口に一隻の空母、ジョージ・ワシントンの影があった。

「黒船の再現か、良いセンスじゃないか。」

黒木は苦笑いした。

 レーダー画面は、東京湾の入り口に構える空母の姿も、そこから飛び立つ戦闘機の影も移さないままだった。

「A.Iの故障か?『Nymph』がハッキングを受けたのか?」

パイロットは計器を確認したが、異常は見当たらない。

「『Nymph』をハッキング出来る奴と言ったら、一人しかいないでしょうね。」

黒木は今回の本作戦が大失敗に終わることを確信した。

「『情報天使(ケルビム)』ですね。」

無線から神林の声が聞こえた。

「『情報天使(ケルビム)』まで向こうの手に渡ったら、こっちは何も出来ない。最初から情報が全て漏れてたんだ。『オリジナル』奪還のために空自がフル爆装の無人機を大量導入すると分かってて、この日に『オリジナル』の国外移送を決行したんだろうよ。」

「なら、『空間天使(セラフィム)』は今頃どうしているでしょうね。」

「さあ、大量のF-15狩りに夢中になって、また能力封じられておしまいなんじゃない。」

どうでもいい、黒木はそう思った。

「さて、旧東京観光は出来なかったし、久々に実家帰るかなー。すみません、伊丹まで行けます?」

「いや、それが………」

パイロットは極限まで緊張している声で言った。

「まだ追ってきてるのですが………」

3機のホーネットは、2機が神奈川に入ってもなお追ってきた。そして、静岡に差しかかった時、3機の内1機が、2機の前に進み出た

≪前に続け、小松へ着陸せよ≫

英語の無線が入り、先導の一機が、機首を切りながら高度を下げ始めた。

それに続きながら、パイロットは黒木に聞いた

「このままついて行って大丈夫ですかね?」

「いや、大丈夫じゃないでしょう。」

そういって、無線で神林を呼ぶ

「そっちのI.Sシールド最大範囲展開で、お前の能力範囲届くと思う?」

しばらくの時間が合って

「やれると思います。」

と返答があった。

「よし、じゃあやろうか。」

まるで今から散歩でも行きますかといった気軽さで、黒木は言った。

「そっちのパイロットさん、I.Sシールド最大範囲展開で。」

「り、了解!」

そしてしばらくして

「お、キタキタ。」

黒木は目を閉じた。

 その瞬間、神林の乗るラプターから、一瞬、薄青い光が放たれた。

 それに素早く反応したホーネットのパイロットは、すぐさまラプターに対しミサイルを放った。

 I.Sシールドは最大範囲展開で強度はとても弱く、ミサイルは簡単に透過し、着弾した。だが、凄まじい爆発にも関わらず、爆炎晴れた先に見えたラプターは無傷であった。

「jesus...」

 ホーネットのパイロットは目を丸くした。そして、自身の身体が変調をきたしていることに気が付いた。妙に身体が火照る、そう思った直後には、血が全身から噴き出した。

 3機のホーネットは、回転をしながら落下していった。

「見よ、これが『オリジナル』にすら御せなかった『治癒天使(エンジェル)』の力だ。」

黒木は満足気な顔で言った。


最後の最後でバトル。空戦ですけど。

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