焼死体
ボクは、弟が燃えていくのを見ていた。見ていなければ、ならないような気がして。
だんだんと弱くなっていく叫び声。動かなくなっていく体。すべて、ボクが助けてあげられなかったから起こっていること。
そして、ついに…動かなくなってしまう弟。叫び声もいつの間にか聞こえなくなっていた。おそらく、もう事切れていたんだと思う。
ボクが守れなかったばかりに…そう思ってももう仕方がないんだとはわかっていた。悔やんでも悔やみきれない。
頭では理解できているのに、心が弟の死を受け入れられない。
弟は、〝キルト″は真っ黒な焼死体となった。
村の子供たちは、それを面白がって見ている。さっきの叫び声でだろうか、大人たちも出てきている。
皆、笑っていた。きっと、邪魔ものが消えたから喜んでいるんだろう。
消えろ、皆、皆…ここにいるやつ全部、キルトと僕以外、皆消えてしまえ!!
そう思ったとき、フッ と頭の中に知らない声が聞こえてきた。その声はこう告げていた。
《生き残りたいだろう?弟の敵をとってやりたいだろう。だったら、―――――君の力で戦え。君にはできる、君は、神に魅入られた子だ――――――》
神に魅入られた子…?そうか。これは神様のヒマ潰し…神々を楽しませるための遊戯(お遊び)なのか。だったら、そのゲームの主人公のボクには最後まで付き合うという義務がある。やってやる、ボクのチカラで…すべて消してみせる。
「は、はは…あっっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっはははっはははははははははは!!!ケシテヤル!!ボクガスベテケシテヤル!!ボクヲクルワセタコト、コウカイシテヨ!!」
もう、正気の沙汰じゃなかった。そこから何が起きたかは、もうボクの知るところじゃない。ただ、気がついたときには、もう何も無かった。夕焼けの中に、ボクはぽつんと立っていた。まるで、僕以外のものがすべて夕焼けに吸い込まれて消えていったように、綺麗な更地へと変貌していた。そして、もう一度気を失う直前、頭の奥に声が響いた。
ごめんね、兄さん。そしてありがとう。もし、もう一度生まれ変われるなら今度は僕が兄さんを守ってみせるから。