三流のチンピラが三流の会話を繰り広げてる現場に遭遇したんだが
「てめえ、どこ見て歩いてやがんだ、こらぁ!」
「おめえこそ、どこ見て歩いてやがんだ、こらぁ!」
朝の通学路。
学校に向かう途中で、チンピラ風の男が二人言い争ってる現場に遭遇してしまった。
僕は慌てて陰に隠れて様子をうかがった。
一人はアロハシャツを着たパンチパーマの男。
一人は白スーツに身を包んだリーゼントの男。
どっちも堅気ではなさそうな風貌だ。
そんな彼らが顔をつきあわせて怒鳴り合っていた。
「てめえがぶつかったせいで大事な服が汚れちまっただろうが!」
「オレだって親父からもらった大事なスーツが汚れちまったわ! どうしてくれんだ、こらぁ!」
どうやら肩がぶつかったか何かで揉めているようだ。
嫌だなぁ。
学校に行くにはここを通るしかないんだけどなぁ。
警察を呼ぼうかとスマホを取り出したとき、会話の雲行きが怪しくなってきた。
「だいたい歩き方がおかしいんだよ、てめえ!」
「どこがおかしんだよ! 普通に歩いてただろうが!」
「オレはてめぇを避けるように斜め30度くらいに歩いてたのに、てめぇは直進しやがったじゃねえか!」
「はあ? オレだって斜め90度くらいに歩いてたわ! ぶつかってきたのはそっちだろうが!」
「てめぇ、角度の計算おかしいんじゃねえのか!? 斜め90度で歩いてたら完全に右折だろうが!」
「おうおう、そうだよ! 右折しようとしたらてめぇがぶつかってきたんだよ!」
「普通に直進してきただろうが!」
……なんだろう。
この低次元な言い争い。
見た目は絵に描いたようなチンピラなのに、会話が幼稚すぎる。
「やんのか、この野郎!」
「おお、いいぜ。相手になってやらあ!」
あわわわ。
さすがにヤバい。
チンピラ同士だと殺し合いに発展するかもしれない。
やっぱり警察を呼ぼうとスマホを開いたら、また雲行きが怪しくなってきた。
「いいのか? オレのパンチはな、岩を砕くんだぜ?」
「それがどうした。オレの蹴りは鉄を破壊するぜ?」
「鉄ぐらいでいい気になんな。オレのパンチはステンレスもぶち抜くわ!」
「今さっき岩を砕くっつったろうが! なんで強度あげてんだよ!」
「岩なんざ10%の力で十分っつう意味だわ! 本気出しゃステンレスもぶち破れるわ!」
「オレだって本気出せばダイヤモンド粉々に出来るわ!」
「やれるもんならやってみろ、この野郎!」
口だけ達者な男の典型が二人……。
第一、ダイヤモンド砕く機会なんてないでしょ。
「てめぇ、オレを怒らせたらどうなるかわかるか? オレが怒ったら富士山噴火すんぞ!」
「それがどうした! オレが怒ったらエベレスト噴火すっぞ!」
「エベレストって活火山なんか!?」
「知るか、ボケ!」
知らずに言うなよ……。
「でもエベレストがすげえことになるのは間違いねえわ!」
「もう怒った! オレのパンチでぶっ倒してやる!」
「おうおう、いいぜかかってきな。オレのかかと落としで返り討ちにしてやる」
「いいのか? 本気で行くぞ? いいのか?」
「かかって来いよ、ほら」
「オレが本気で地面を殴ったら地球がパックリ割れるけど、いいのか?」
「オレが本気でかかと落とししたら地球が粉砕するけどな」
……それ、もう死んでるじゃん。
「ウソ言うなよ。じゃあやってみろよ。かかと落としで地球粉砕してみろよ」
「言い出しっぺはそっちだろ? そっちが地面殴って地球を真っ二つにしてみろよ」
「地球真っ二つにしたら死ぬだろーが!」
あ、死ぬってのはわかってたのね。
「ふん、死ぬのが怖いのか?」
「なんだと?」
「死ぬのが怖くてよくチンピラやってられるな。チンピラなんてやめちまえ」
「てめえ、言ったな! 死んでも後悔すんなよ!」
そう言ってチンピラが地面に拳を叩きつけた。
叩きつけたというよりは、コンとぶつけた感じだが。
当然、地球は割れることもなく。
地面に拳を打ち付けたチンピラは痛そうに拳をスリスリさせた。
「……ちっ、どうやら今日は調子が悪いみてぇだ。さ、お前の番だぞ。かかと落としで地球を粉砕してみろや」
「ふざけんな! なんだよ調子が悪いって! パンチで地球を割れるまでオレはやらねえぞ」
「なんだ? やっぱり口だけだったのか?」
「てめぇと一緒にすんじゃねえ! オレのかかと落としは天下一品なんだ! そんな簡単に見せられるか!」
「だったらやってみろよ」
チンピラ同士がギャーギャー言い争ってると、警察がやってきた。
どうやら見かねた別の通行人が通報したらしい。
「こら! 何をしているか!」
まさに天敵到来。
すぐに逃げ出すかと思いきや、チンピラの一人が親しげに話しかけた。
「あ、おまわりさん、聞いてくださいよ。こいつ、パンチで地球を割れるってウソつくんすよ? これ、犯罪ですよね?」
「てめえこそかかと落としで地球を粉砕できるってウソついたじゃねえか! おまわりさん、こいつ嘘ついてます。逮捕してください」
「なんでだよ! てめえがパンチで地球割れるっつーから、オレだってそれくらいできるって言っただけじゃねえか!」
「だったらやってみろよ!」
「てめえがパンチで地球を割ったらやってやるよ!」
「だからそれやったら死ぬだろうが!」
よくもまあ、警察の前で幼稚な会話をくり幌げられるもんだ。
警察も呆れた顔で二人を見回していた。
「……まったく。大の大人がしょうもない」
「おまわりさん、早くこいつ逮捕してください」
「逮捕するのはこいつです。こいつ逮捕してください」
「逮捕も何も、本官なら指先ひとつで地球を吹っ飛ばせるぞ」
……ん、んん?
「なんなら指パッチンで太陽を破壊することもできる」
さすがに警察の言葉にチンピラの二人は「はあ?」と顔を見合わせた。
「ウソつけ! サツにそんなことできるわけねえだろ!」
「そうだそうだ! 指パッチンで太陽を破壊なんてありえねえだろ!」
「できるぞ、警察官だからな」
「いーや、無理だね。絶対できないね」
「警察のくせにウソついていいんですかー?」
「ウソじゃないぞ。ワンパンで銀河系を消滅させることだってできる。警察官だからな」
「「はい、うそー」」
なんだかんだでチンピラは仲良くなったようで、二人で警察にツッコみをいれていた。
ああ、今日も平和だなあ。
警察がグッジョブですね(笑)
できれば「覚えてろよー」の三流捨て台詞まで書きたかった……。
お読みいただきありがとうございました。




