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仮想現実 凛目線

おばあちゃんと颯太さんが不思議なくらい円満に別れる事ができ、尚且つ身体が戻った後の就職先まで決まった。


最近は全てが魔法の様に上手く周り始めて少し怖いくらいだ。


でも、実はまだ何も終わっていない。


“星屑のホテル”なんてネットになんの情報もないどころか、Googleマップ、航空写真にすら映っていないのだから。


あるのは、予約票と身体が変わったという事実だけだ。


いや、最近、それすら怪しいと思ってしまう事がある。


おばあちゃんと身体が変わったなんて事は所詮、頭の中の記憶でしかないのだ。


もし何らかの理由で、2人の記憶だけ改ざんされた可能性だって否定できないのだ。


どう言う事かと言うと、私が元々絹代で凛も元々凛で星屑のホテルに宿泊し“身体が入れ替わった”という2人の記憶だけが改ざんされたと言う事だ。それっぽい予約票なんていくらでも作れる。


最近はそんな“記憶の改ざんの可能性があった事”に怯えている。


“記憶の改ざん”って何だろうか?


宇宙人によるインプラントだとか、実はこの世は仮想現実で、上位世界の人間が、面白がって私達の記憶を改ざんし、それを観察しているだけでとか?


そう考えると怖くなり、ここ数日、その“仮想現実”を検索しては、記事や論文を読み漁っている。


哲学者のニック・ボストロム、物理学者のフランク・ティプラー、そしてイーロン・マスクやホーキング博士。


彼らは、それぞれの立場から、この世界が仮想現実、つまりシミュレーションの中に存在している可能性を語っている。


イーロン・マスクは「99%以上の確率でそうだ」と言い、ホーキング博士も「50%の確率で私たちの宇宙は人工的に作られたものだ」と述べている。


にわかには信じがたい話だけれど、プログラマーである私は、どこかで納得してしまう。


もしデジタルが更に進化すれば、仮想宇宙を再現することは容易かもしれない。


地球の歴史も、人間の感情も、アルゴリズムで模倣できる。そして、その中の登場人物が「これは現実だ」と信じているなら、それはもう“現実”なのかもしれない。


私たちの宇宙も、上位存在のコンピュータの中で動いているとしたら……。


星屑のホテルで起きた出来事も、プログラムの“例外処理”、つまり、メモリの入れ替えやアドレスの混線のようなものなのかもしれない。


そう考えた方が、むしろ辻褄が合う気がする。


動画サイトで見た“二重スリット実験”の映像を思い出す。


「観測されると粒子の動きが変わる」


まるで、誰かに見られている瞬間だけ世界が動くような。


観測者がいない時、世界は“描画を停止”しているのだとしたら?


そう考えると、背筋に冷たいものが走った。


さらに、光の速度の謎。


「光速に近づくと時間が遅くなる」


あれも、もしかしたら物理法則ではなく“処理速度の限界”なのではないか。


高速で動く物体ほど、膨大な計算量が必要になる。


CPUの負荷が上がり、処理が追いつかなくなる。


だから“時間が遅れる”。


つまり、時間とはプログラムの“フレームレート”なのかもしれない。


もしこの世界が本当に仮想現実だとしたら、星屑のホテルは、その“プログラムの外側”にあるのだろうか。


私が見た夢も、出会った人も、上位世界の誰かが設計した“データ”にすぎないのだろうか?


だとしたら、9月22日にあの場所へ行っても、

“星屑のホテル”なんて最初から存在しないのかもしれない。


存在しても、それすらもプログラムされた“演出”なのかもしれない。


そんなこと、いくら調べたって答えは出ない。


どんなに検索しても、理屈を並べても、真実は画面の向こうに隠れたままだ。


でも、これで1つ謎が解けた気がした。


あの時、颯太さんが、あんな荒唐無稽な話をすんなり受け入れたのが、ずっと不思議だった。


「身体が入れ替わった」なんて、普通なら笑い飛ばされてもおかしくない。


それなのに、彼は一瞬も疑わなかった。


でも今ならわかる。


彼は、信じたのじゃなくて、理解したのだ。


颯太さんはバリバリの理系人間。


この世界を“システム”として捉える思考を持っている。


きっと、あの時もこう考えたのだろう。


もしこの世界が高度なシミュレーションなら、

意識データの“入れ替え”も、理論上は可能だと。


だから彼は、私たちの話を「非科学的なオカルト」ではなく、「未知のアルゴリズムの一種」として受け止めたのだ。


そう考えると、すべての辻褄が合う。


あの冷静な頷きも、あの穏やかな微笑みも全ては、理性の裏にある確信だったのだ。


この世が仮想現実であったとしても、上位世界の人間の善意を信じて、9月22日に私とおばあちゃんは星屑のホテルに向かう以外に道はないのだ。


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