週末彼女1
金曜日の夜が来るたびに、私は“彼のための私”になる。
彼好みの膝上丈のスカート、脚を長く見せるパンプス、透けるようなストッキング。そして、絶対に崩れないように仕上げたハーフツインとメイク。
それでも。
エレベーターの中、ルージュは彼の長いキスに溶けて消えていき、部屋に入るなり私はベッドへ押し倒される。
カラン、と乾いた音を立てて、パンプスが片方だけ足元から脱げ落ちる。
スカートは激しく捲られ、ショーツのクロッチは無造作にずらされ、ストッキングは荒々しく引き裂かれたように脱がされた。
ボタンを開けたトップスの隙間から、ブラはお腹まで押し下げられ、胸を揉まれる。
着衣のまま、明るい灯りの中、スマホをこちらを向けながら、彼は構わず行為に没頭する。
――一度終わっても、まだ終わらない。
「もう一回いい?」と訊かれたわけでもなく、私はただ、されるまま。
二回目、そして三回目。
そのたびに私は、少しずつ声も感覚も失っていく。
三回戦目が終わったとき、天井を見つめながら、呼吸の音さえ遠く聞こえた。
彼はシャワーを浴びに行き、私はぐちゃぐちゃに乱れたハーフツインと、涙と汗で崩れたメイクのまま、シーツの中で目を閉じた。
足元には、伝線したストッキングが転がっていた。
それを帰り際、丸めてホテルの小さなゴミ箱に無言で投げ入れる。
まるで今夜の私自身を処分するように。
疲れ果てた身体に、まだ彼の熱が残っている気がした。
それでも鏡の前に立ち、髪を整え、リップを塗り直す。
彼の本命が誰かなんて、聞く勇気も持てないまま。
会えるのはまた金曜日だけ。
けれど私は、来週もまた鏡の前で、彼好みの私を作り続ける。