第35話 また配信しようよ、ふたりで
ミオリの勘違いバースデー配信から数日後。
朝、目が覚めると喉が妙にスッキリしていた。
ああ、ついにこの日がきてしまった。
違和感の終わりは、声変わりを向かえたことを意味すると市村から聞いていた。
しょうがない。しょうがないことなんだけど、やっぱりショックだ。
結局、あの日、ミオリとの配信どころか、ユウイ個人としての配信も終了しないままその日の配信を終えた。
いつかは終わりを向かえることも、そしてその日が近いこともわかっていたのに、俺は逃げた。
でも、声変わりをしてしまったら、もう逃げることはできない。
今度こそ、観念するしかないんだ。
階段を下り、リビングへと向かう。キッチンに立つ母親に、俺は声をかけた。
「おはよう」
けれど、口から出た声は、どこからどう聞いても今までと同じ高い声。つまりユウイの声だった。
なんなら、ここのところずっとガラガラ声だったせいもあって、クリアになった声がやけに可愛く聞こえるほどだ。
これは、いったい……。
声変わりじゃなかったのか、と母親も不思議そうにしていた。
結局、なにがなんやらわからないまま俺は学校へと向かう。
教室にはもうすでに城崎の姿があった。
「おはよ……って、それ、どうしたの?」
「あ……三浦、君。おはよ……」
ガラガラとした声で俺の方を見た城崎はマスクをつけていた。
「なんか、風邪引いちゃったみたいで……」
「風邪……?」
「うん。今回の風邪、喉にくるみたいで……」
頷き説明してくれる城崎を見ながら、まさか、と思う。
熱も頭痛もなかったから、風邪じゃないと思っていた。
で、あれば声変わりしかないと決めつけていた。
でも、もしかして……。
「俺も、風邪だった?」
「三浦君? どうかした?」
「あ、いや……なんでもない!」
慌ててぶんぶんと首を横に振る。
城崎は怪訝そうに俺を見ていたけれど、その視線には気づかないふりをした。
「変な三浦君。でも、なんか嬉しそうだね」
「……うん、そうだね。今、すごく嬉しいんだ」
ユウイとしての活動を終わらなくていいことに、ホッとしている自分がいる。
もっともっとユウイとして、ミオリと一緒に活動していきたいと思っている私がいる。
もっと、城崎と話しをしたいと思っている俺がいる。
どの感情も、全て俺のもので、どの感情も、城崎と過ごせることを望んでいた。
今回は違ったけれど、いつ本当に声変わりをして、ユウイとしての活動が終わりになってしまうかはわからない。
だから。
「城崎の風邪が治ったらさ、また配信しようよ、ふたりで」
「……っ、う、うん!」
自然と、城崎に笑顔を向けていた。
そんな俺に城崎は、頬を赤く染める。
その表情がまるで、ユウイを前にしたミオリのように見えた――ような、気がした。
ユウイとミオリの恋リア企画、終了までのこり1か月。
クリスマスの日、ふたりの関係がどうなるのかは、まだ誰も知らない。
<<第一部 完>>
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