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第16話 素敵なことに男の子とか女の子とか関係ない


 第一回は終わったものの、これから三ヶ月、ふたりで配信を続けていかなければいけない。

 俺は近くにあったノートにこれからのことを書いた。


「配信はユウイとミオリのふたりで撮るのが週に一本、それからユウイの個人としてのものが週に二本。それ以外に、ミオリが個人でアップするのは自由だから。ただ、本名は絶対に出さずに、髪型にも気をつけて」

「わかった。はあぁ、次のユウイちゃんとの配信も楽しみ……!」

「ああ、そうだ。その”次”の配信だけど、なにかしたいことってある?」


 恋愛リアリティーショーについて調べてみたところ、デートに行ってみたり電話をしたり、あとは一緒にお菓子や料理を作るのもあった。

 何人かで合宿みたいにお泊まりするのもあったけど、さすがに泊まりは無理だ。

 ……いや、城崎に言ったらふたつ返事で『お泊まりするうう!』と言い出しそうだけど。ユウイの貞操の危機を感じて仕方がないのでこれは俺の中で却下しとく。

 でも、城崎のパジャマ姿はたぶん、きっとめっちゃ可愛いはずだ。モコモコのパジャマをふたりで着て配信する回があってもいいかもしれない。


「ユウイちゃん?」

「あ、ああ。ごめん。って、城崎。この格好のときはユウイじゃなくて……」

「三浦って呼べばいいんでしょ。わかってるけど、でもやっぱり何回見てもユウイちゃんなんだもん」

「そんなに……?」


 あまりにユウイ、ユウイと言われると、周りにもそう見えてるんじゃないかと心配になる。

 分け目のついた前髪を真っ直ぐ下ろして目を隠す。こうやって目線さえ隠してしまえば大丈夫だって思ってたけど……。


「あああ、ユウイちゃんの可愛い目が隠れちゃった……!」

「今は可愛くなくていいから」


 ユウイとしているときに可愛いと言われるのは嬉しいし、俺自身も少しでも可愛く見てもらえるようにメイクの仕方とか、動作とか練習したり意識するようにしている。

 でもだからといって、裕唯の姿でいるときまで可愛いっていうのは……。


「んー、でも今もユウイちゃんのときも、三浦に違いはないでしょ?」

「そうだけど……。でも、やっぱり変じゃん。男が可愛いなんて」

「私はユウイちゃんだったら、性別がどっちだったとしても可愛いって思うよ!」


 自身満々に胸を張る城崎だけど、それはなんかちょっとズレてないか……?


「だってね、誰かが素敵なことに男の子とか女の子とか関係ないでしょ? 綺麗な男の人も、カッコいい女の子もいるわけだし」

「……そんなの一部だろ」

「ユウイちゃんはその一部なの! そりゃスカート履いてとっても可愛いから女の子だって勝手に思い込んでた私も悪いけど、でも男の子だったとしてもユウイちゃんの可愛さは自信を持っていいと私は思うよ!」

「……そりゃ、どうも」

「あー! 信じてないね!? もうっ!」


 口を尖らせて拗ねたような表情を浮かべる城崎に、自然と笑みがこぼれた。

 城崎が言うようには、まだ考えることはできないし、俺にとってこの顔も声も身長も、全部がコンプレックスだ。……今は。

 でもいつか、ユウイとしてだけじゃなくて俺自身としてこの姿で胸を張って過ごすことができたら、そのときは今はコンプレックスでしかないところも、認めてやれるような、そんな気がした。


「まあ、それはいいとして」

「よくない!」

「話しを戻すけど次回なにする? なにがしたい?」


 俺の質問に「んーー」と人差し指をほっぺに当てながら城崎は考える。ぷっくりと膨らんだ頬に人差し指が吸い込まれていく。ただそれだけなのに、見てはいけないものを見た気分になってしまうのはどうしてだろう。

 いや、別になにを想像してるわけじゃない。ただなんかこう、無性にドキドキしてしまうだけで。あと俺もそのほっぺをつつきたいとか、そんなことこれっぽっちも思ってないんだからな。


「あ、勉強、とか? ほら、もうすぐ中間テストだし」

「それ配信して誰が楽しいの?」

「私は好きな人と勉強するの、楽しいけど……」


 苦笑いする俺に、少しだけ頬を赤らめながら城崎は言う。

 いや、まあそりゃ楽しいかもしれないけど、でもモニター越しに一緒に勉強ってどうなの? それに。


「教科書とか進度とか、あと中間の日程がバレたりしたら、身バレの可能性が高くなるからな」

「そっかぁ。ユウイちゃんと勉強してみたかったんだけどなぁ」


 ちぇーっと唇を尖らせる城崎が可愛くて、つい。


「……配信終わってから、ふたりでする?」

「いいの!? やったぁ! 教えあいっこしよ!」

「いいのっていうか、俺の方が成績悪いから、城崎に教えてもらうほうが多いと思うけど」

「それもいい! ユウイちゃんに私が教えるの興奮する!! 『ユウイ、そんなこともわからないの? お馬鹿さんね。ふふ、大丈夫。私が全部教えてあげる。いけないことも、ね』とか言っちゃって!!」


 城崎と話すようになって知ったのは、妄想が全部口から出てしまうタイプなんだなってこと。よくこの性格で今までやってこれたなと感心する。

 と、そこまで思って、ふと気付く。学校で会う城崎は、落ち着いていてしっかりしていて、少なくともこんなふうに願望や妄想を口走ってしまうタイプではない。

 ということは、どちらかがニセモノの城崎ということか?


「落ち着けって。だいたいなにキャラだよ、それ」

「『家庭教師ミオリ。深夜のレッスンはアメと鞭』」

「AVじゃないんだから!」


 城崎といると調子が狂う。

 ついつい乗せられて喋りすぎてしまう。


「ったく。よくそれで学校じゃ委員長なんてやってられるよな」

「どういうこと?」

「さっき俺にはユウイが女の子だろうと男の子だろうと、なんて言ってたけど、結局その本性を学校じゃ隠してるわけでしょ? それって素顔を隠してる俺となにが違うの?」


 いじわるな質問だったかもしれない。言い過ぎた気もする。

 後悔先に立たず。覆水盆に返らず。

 そんなことわざが頭をよぎりながらも、俺は恐る恐る城崎を見た。


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