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第14話 ユウイとミオリの恋愛リアリティショー

 私の呼び声に、ミオリは一瞬表情を強ばらせたあと、覚悟を決めたように私の隣に座った。


「じゃあ、紹介します! ミオリだよ!」

「は、はじめまして。ミオリです。よろしくお願いします……!」


――ミオリちゃん! 可愛い!!

――新しい恋人ってこと?

――えー、ちょっとやだなぁ。


 コメント欄に書き込まれる文字を、ミオリは凝視している。

 批判的なものは少ないけれど、それでも隣に座るミオリの手が小さく震えているのがわかって心配になる。

 本当は今すぐにでも、その手を握りしめてあげたい。

 でもユウイがそんなことをしたら、どんなコメントがくるか容易に想像がつく。

 だから、今私がするのはミオリに寄り添うことじゃない。

 みんなからのコメントを受け止めつつ、きちんとこれからのことについて説明する。それだけだ。


「ううん、そうじゃないの。あ、でも全く違うって言っちゃうと嘘になるかも」


――ええ? どういうこと?

――なにかの企画とか??


「わ、鋭い! 今の私はまだミオリのことを好きってほど知らないし、イチサのことを完全に忘れられてるかっていうとそうじゃないから。だから、ミオリには三ヶ月間、私と一緒にYouTuberをやってもらおうと思います!」


――なにそれ、おもしろそう!


「三ヶ月間で、私たちの関係がどうなっていくのか、みんなには見守ってほしいなって思ってるんだけどどうかな?」


――あれだ! 恋愛リアリティショーってやつ!

――恋愛リアリティショーってなに?

――台本なしでやる出演者同士の恋愛番組だよ!

――ユウチサ派の私としてはちょっと複雑ー!

――ミオリちゃん可愛いし、俺応援しちゃうかも!


 好意的なコメントが流れてくるのを見て、少しだけホッとする。

 ここで反対意見があふれたら、この企画を見直すことも考えなきゃいけなかった。


――三ヶ月ってことは、クリスマスまでだね!


 コメントで言われて、初めて気が付いた。

 たしかに、今から三ヶ月後はちょうどクリスマスだ。


「ホントだね! 最終配信がクリスマス! どんなクリスマスになるのか、今から楽しみだね!」


 ミオリに話しかけてみると、ウッ、と言葉に詰まる。


「わ、私は、今から不安で仕方がないよお」

「そんな顔しないの! ってか、ユウイちゃんを振り向かせてみせる! って自信満々に言ってたミオリはどこにいったの?」


――そんなこと言ったんだ?

――意外と強き?


「強気だなんて、そんな……! あ、あのときはただ必死で……。ユウイちゃんにYouTuberをやめてほしくなくて……。だから……」

「そんなふうに思ってくれてありがとね」


 ニコッと笑いかけると、ミオリは真っ白な顔を首まで赤くした。

 そんなミオリの様子に、コメント欄もどこか優しい空気が流れ始める。


――え、ミオリちゃんめっちゃ良い子じゃん!

――俺ちょっと推せるかも!

――男ってなんでそんなチョロイの? でも、たしかにちょっと可愛いかも。

――ユウイちゃんが幸せならなんでもいい!!


「ふふ、みんなもありがとね。それでね、今回ミオリにも一緒に出てもらったわけなんだけど、第一回ということでなにをしようかなって考えてたの」

「そ、それ私もまだ聞いてないけどなにをするの……?」

「だって、言ったらミオリ、なにを言おうか考えて来ちゃうでしょ? でも、作られた答えなんておもしろくないし。それより、生のミオリの気持ちを聞きたいなって思って!」


 そう、最初の流れは説明したけど、このあとなにをするかは、ミオリにも伝えていなかった。


「題して!『ユウイのどんなところが好き?』だよ!」

「ユウイちゃんの?」

「そう。こうやってミオリと一緒に配信してるけど、見てる人の中にはこれってヤラセなんじゃないか、とか、事務所の後輩を売り出すためにそういう企画をしてるんじゃないかって疑ってる人もいると思うの」

「そ、そんな……」


 あわあわと震えるミオリは、まるで慌てたフェレットが尻尾をバタつかせるように、結った髪の毛をぴょこぴょことさせていた。

 思わず猫じゃらしに群がる猫のように、その髪の毛を捕まえたくなってしまうけれど、どうにか我慢する。

 今はそんなことをしている場合じゃない。

 ミオリの口から、きちんとユウイのことを話させたい。

 取り繕ったような答えではダメ。ただそれっぽいことを話すのでもダメ。

 本当にユウイのことを好きなのだと、見てくれている人に信じさせる必要があった。

 これは、ミオリが私のパートナーになる、第一関門だ。


「だから、ね。ミオリが私のどこを好きか、教えてほしいの。それに、私も聞きたいな。どんなところを好きになってくれたのか」

「あ、え、えっと、それは……」


 赤かった頬がさらに赤く染まっていく。そんな姿も可愛い、と思ったのはどうやら私だけではないようで。


――赤くなってるの可愛い!

――え、照れてるの? めっちゃ可愛い!!


 ミオリの反応に対するコメントもいくつか来ていた。

 好きなところを話してもらうことはできなかったけど、態度で好きだと言っているようなものだったから、これはこれで結果オーライ、なのかも?


「もー、赤くなっちゃって可愛いなぁ。でも、好きなところ聞けなくて悲しかったから、今度ふたりのときに教えてね」


 耳元で囁くようにして(実際には、配信にちゃんと音は入っている)ミオリに言うと、さらに恥ずかしがる――と、思ったのに、ミオリは私の想像もしなかった反応をした。


「かな、しい?」

「え?」

「私のせいでユウイちゃんが悲しい気持ちになっちゃったの? やだ、そんなのやだ!」

「ミ、ミオリ? 落ち着いて……」


 興奮したミオリは手がつけられなくなっていた。

 放送事故になりかねないし、このまま配信を切ってしまおうとマウスに手を伸ばすと――。


「あのね!」


 ミオリはユウイの手を掴んだ。

 その目が先ほどまでのミオリと違うことに気づいたのは、きっと私だけじゃないはずだ。


 

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