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08 卓とタク

黒翼山脈 黒の森 ―ショーモン軍前線陣営側―




「ここ、どこだ?」


俺は重たい剣と走り書きのメモを持って、自分の立っているところが理解できずに茫然とした。

今の今まで自分の部屋にいた。

半分透けてる俺が目の前にいて、固まってる美玖がいた。

透けてる俺はメモと剣を押し付けてきた。


サイキ?という名の女の子を探せ!


俺が俺に課したミッション…



「さてどうする」


場所は森の中。

割と近いところに黒々とした山脈が見える。


闇雲に歩いても迷うだけだよなぁ…


時間は不明だけど、深夜だということは夜空の暗さでわかる。


すげぇ星だな…


さっきまでいた俺の街も、ドーマ政府軍とドームができて以来、星空と宵闇だけはきっと昔に戻ってる。

とはいえ、現状の星空のほうが尚凄い。

ひと群れの雲が星空を覆い始めた。


ポツリ


「げっ、雨かよ!」


言ってるそばから雨は急激に激しさを増してきた。

俺は森の中で雨宿り可能な場所を探した…その間に、全身濡れ切ったさ。


寒くはないけど、不愉快だな。


雨が小やみになって、それでも適当な場所がなく、大木の根元に座り込むしかなかった。


雨が容赦なく体力を奪ってくれた。

雨は気分を鬱々と、緊張も、正常な思考も折ってくる。


参った…ヤバいな…眠くなって…き、た…






「ここらあたりやと思うんやけど」


彩姫はユミンと共に森の中を進む。

揺らぎを感じて陣営からふたりで出てきた。


タクを探しに。


半年前、タクは彼のいた場所へ渡っていった。

そして、今朝、彼が帰ってくる揺らぎを感じた。

太夫に後を任せて、探索の得意なユミンを連れて森へ入った。

そのユミンが先行して、周囲の探索をしている。


「彩姫、いたよぉ」


ユミンが彼女の傍らに戻って、そう告げた。

導かれ、向かった先でタクが気を失ったように横たわっていた。

近寄って体に触れると、高熱を出して気を失っているようだった。


「治癒術使こうて熱抑えるわ。ユミン、太夫を呼んできたって」

「は~い」


見慣れないタクの世界の服は、かなりあちこち擦り切れたり汚れたりしていた。

聖剣を大事そうに抱えている。

胸のポケットからはみ出していたメモを取って、彼女はそれに目を通した。


「なんやって?」


走り書きなので内容を理解しきれない。

が、どうやら目の前でダウンしている『タク』は、自分たちが知っている『タク』ではないらしい。


雨で体温奪われたんやろな。

まずは介抱して話せるようにせなあかんな。


治癒術は身体の持つ抵抗力を復活させることで、病根を抑え込む術。

彩姫が術を施している間にユミンが太夫を連れて戻ってきた。


「濡れた服を脱がしてや」

「承知です」


手の離せない彩姫に代わって、太夫がタクを抱えて支えてユミンが濡れた衣類を脱がせた。


「「「!」」」


三人はタクの半裸の上半身を見て息を飲んだ。

明らかに筋肉のつき方が違う。

あちこちにあったはずの古傷がない。


「誰ですの?タク…のはずですわよね?」

「その説明は後でするよって、まずはどこかに隠さんとあかんな」

「ですわね…」


瞬間沈思した彩姫はセイメイ老師の庵へ連れてゆくことにした。


「しばらくはこの三人だけの秘密や」

「でもぉ、瀧夜叉は気づいてないかなぁ」

「聡い子ぉやから、もしかしたらなんか感じとるかも知れへん」


彩姫は術をいったん中止して、太夫の背に彼を乗せるのを手伝った。


「せやけど戻った確信はないはずや。ともかくここは知らぬ存ぜぬで押し通すしかあれへん」

「では行きましょう」

「せやな」


三人は森の奥にあるセイメイ老師の庵へ急いだ。





― 旧都心部 海浜地区某所 ―



元は新興の埋め立てエリア。

新都心として建設されていただけに巨大な建物が多かった。

とはいえ、摩天楼のような多くのタワービルのほとんどがポッキリ折れていた。

そして、その地下には地下鉄と首都圏高速道路のトンネル、制御・管理用の施設があった。


「こんな所にダンジョンかよ」


卓は美玖を含めて十数人の仲間と、地下鉄の線路沿いに潜って管理施設まで来ていた。


「卓さん、この先です」


仲間のひとりが指さす先に、明らかに異質のトンネルの入り口が口を開いていた。

トンネルの入り口は鋼鉄製のバリケードで封鎖されていた。

卓たちはバリケードに唯一ある扉をこじ開けて、その中に入っていた。


「人工物じゃないな」

「はい」

「この先のエリアの調査はまだなんだよな?」

「はい。ちょっとヤバそうなんで、自衛隊も封鎖するだけして放置してます」

「見張りもいないって、どーかと思うぞ」

「ドーマの攻撃が最近多いっすから、そっちにかかりっきりです」

「取り急ぎ、誰か二人ここに残ってくれ。俺たちは一旦上に戻って武器とか調達して来よう」

「入るっすか?」

「根拠は全くないんだけど、この先にドーマを叩くカギがあるような気がする」


美玖が呆れたように口をはさむ。


「ホントに根拠のない発言ね」

「だけど、今までも当たり多かっただろ?」

「それはそうだけど…」

「とはいえ、準備はきちんとしてからでないとな」

「りょーかい」



これまで仲間を少しずつ増やしながら、卓たちはドーマ軍にゲリラ戦を仕掛けたりしていた。



もう一人の卓が消えたあの夜から1年が過ぎていた。






【続】

めっちゃややこしい…(;^_^A

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