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63 潜入調査?

「ちょ、さすがにヤバくない?」

「他にどうやったら、この中にはいれるのかな?」

「そうだけどぉ」

「ね、お願い!助けて!多分、この先の禁書庫にあると思うんだ!」

「あーー、それっぽいとは思うんだけどぉ…でも、さ、国際問題になっちゃわないかなぁ」


君乃とユミンが図書館の片隅で押し問答している。

君乃は図書館最奥にある禁書庫なるものに、ちょっとだけ、こっそりお邪魔しようと考えた。


「無謀だよぉ…だいたい、君乃のお実家うちが新皇国の公爵家なんだし、申請出してるんだし、段階踏もうよぉ」

「時間がかかってるじゃん。な~んか隠してるんだよ!さっと行って、さっと帰ってきたらわからないよ」


ユミンは禁書庫入り口周まわりをさっと目測する。


「あっちゃ、ここ警報だらけだよぉ…一歩踏み出す前に見つかっちゃうし」

「そこをユミンの腕を見込んで、お願いしてるの!」

「はい!そこ、何をしていますの?」

「わっ、太夫…」

「しまっ…ああ、何でもないよ。もう戻るね」

「この先は禁書庫ですわ。ちゃんと申請を出しておりますから、許可が出るまで待ちますわよ」


と、桜太夫はふたりを厳しい視線で睨みつける。


「ま、ち、が、っても、無断で侵入なんてしないでくださいましね」

「は、はひぃ」

「りょーかいですぅ」



深夜―


図書館禁書庫近くに君乃とユミンが忍んで来た。


「やっぱ、やめようよー」

「許可が出なかったら諦めるの?」

「そーだけどー」

「もう申請出してから2週間。許可を渋る理由があるに決まってるって!ここまで来たんだし、行こう!」

「しょーがないなぁ…」

「もし見つかったら、ユミンはお義姉様のところへ戻って頂戴。捕まるのは私だけ、ね」

「あーーもーー」


ユミンは警報の解除を始める。

慎重に慎重に…

禁書庫の内部に入ると更に扉。

彼女は扉周辺や書庫入口の壁、天井を隈なく目測。


「不用意に触っちゃだめだからね」


何度も念を押していたが、君乃は結構おおらかと言うか、大雑把らしい…

細かい作業をしているユミンを、ただ黙って見ているのにも飽きてきた。


「開いたよ。中の確認するから、ちょっと待っててねぇ」


そーっと扉の中を確認しながら、入って行くユミン。

待ってろと言われたにもかかわらず、君乃はのこのこと後をついて扉から中に入っていった。


派手に警報が鳴り響く!

バタバタと人が走り回り、怒号が遠くに聞こえた。


「ヤッバ…って、なに入って来てんのさ!」

「だって、イライラしちゃって…見つかったみたいだし、ユミンはお義姉さまのところへ行ってね」

「まったく…」


君乃は度胸があるのか、鈍感なのか…

その場に仁王立ちして、警備を待ち受ける。

ユミンは桜太夫へ報せに姿を消した。




二週間ほど経っただろうか、見張り付きの個室から連れ出された君乃。

王宮に連れて来られ、さらに長い廊下を歩く。

謁見の間に入ると、正面に当代の女王陛下がゆったりと高い位置に座っていた。


「あ!」


女王の左側に見知った顔が三人分あった。


うわっ、怒ってる…ってそりゃそうよね…


しゅんとする彼女を知ってか知らずか、無表情で立っている。


「ショーモン新皇国、公爵家令嬢君乃に申し渡す。三日間の監禁の後、国外退去を命ずる」

「謹んで拝命します」


大人しくそう答えると、女王は小さく顎を引いた。


それだけで、再び彼女は連れ出され、別室に連れて来られた。

どうやら女王専用の王宮内に用意された私的応接間のようだった。


ユミンと雪村が立って待っていた。

一緒にその場で待つことしばし…

奥の扉から数名が入ってきた。


「君乃さん、お座りなさい」


女王陛下が対面の席へ座るように促した。

彼女が腰かけ、ユミンと雪村がその背後に控える。

女王の左側にクニカ王が申し訳なさそうな情けない顔をしている。

右側にタクと桜太夫が、こめかみに血管が浮いてるんじゃないかって程の怒りの表情。

左右をチラと見やって、女王はクスリと笑う。


「もう、いいです。君乃さんは後でしっかり叱られなさい」

「は、い…」

「まぁ、こちらも手続きが遅くなってしまったのは申し訳なかったわ」


女王は禁書庫の閲覧入室許可を出していたという。

そもそも桜太夫からの申請が、図書館司書の不手際で管轄部署に上がるまでに時間がかかったという。


「その後も、未処理のまま数日放置…私のところへ上がってくるまで、時間がかかってしまったのよ」


君乃の暴挙がなければ、事件の翌日には入室許可証が届いていたらしい。


「古い文献、歴史書などを調べていらっしゃるとか?」

「はい。今一度詳細について、私から説明させていただいて宜しいですか?」


タクが口を開き、女王は頷いた。

そこで彼はドーマの一件についての大筋を説明する。


「成程、その壁画に描かれているドーマの魔獣人と、新皇国建国前夜に襲撃してきた魔獣人に明らかな相違点がある、ということですね」

「そうです。で、歴史に隠された真実が見つかる可能性を求めています」


タクが続ける。


「伝説級の話です。おそらく考古学とか民俗学とかともかかわってくると…ともかく壁画の相違点について、真実が判らないと対応を間違えるかもしれない」

「理解しました。調査はお続けください」


ですが、と女王の目は再び君乃を捉えた。


「ご令嬢は三日後に国外へ退去してくださいましね」

「はい」

「ご温情、感謝します」


クニカ王が深々と頭を下げた。





【続】

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