06 帰宅先はどこですか?
新展開(笑)
懐かしいしかないこの公園…って、随分荒れて…
え?
「ちょっと待て、ここどこだ?」
公園のあの古木こそそのままの佇まいだけど、周囲は…
「な、なんだ?ここどこだ?いや、公園に違いないんだが」
公園を仕切る柵はへしゃげて、遊具も一部を除いて倒壊してるし。
ぐるりと回れ右すると、立ち並んでいるビルやマンションは風雨にさらされた廃墟になっている。
「どういうことだ?」
情報過多で頭が回らない。
足が勝手に自分の住処のマンションに向かって動き出した。
建物の隙間に通った細い蜘蛛道は、俺の背丈よりも高い雑草が生い茂り、行く手を阻む。
細かい切り傷を作りながらマンションに到達して、既にオートロックの壊れた入口は無残に歪曲していた。
建物の中に侵入…俺の部屋の前についた。
「おい…」
そこだけやけに綺麗な扉。
鍵をシリンダーに差し込むと「カチリ」とはまった。
おそるおそる回して、扉を開けると見慣れた?俺の部屋がそこにあった。
「すげぇ違和感だな…」
今一度、自分の部屋を封印して外に出た。
マンション内は植物の根が張っていて、さらに天井が崩落。
内部の階段を上がるのは…
「こりゃ、ダメだな」
仕方なく一旦外に出て、(元)国道と(元)高速道路のある所まで歩く。
どこもかしこも荒廃していて
「完全に終末を迎えたSFの風景だな」
頭の中がやっと追いついてきた、かな(苦笑)
「この現実は、一体いつなんだろう」
俺はまず、話せる『人』を探すことにした。
「そのついでに、こっちの世界がどれくらい経っているのかわかると良いな」
あー、独り言でも言ってないとヤバい。
「あの先が都庁かな?」
あったはずの巨大なタワーのようなビルの上半分がなくなっている。
その向こう側に林立していたビル群も…
ん?
更に向こう側がキラっと光った気がした。
嫌な感じがして国道から再び側道へ降り、光の元へ慎重に歩を進めた。
周辺で一番大きな公園が突き当りに見える。
周囲を警戒しながら、なるべく死角になるような遮蔽物に沿って公園入口までやってきた。
「なんだりゃ」
都庁舎ビルの上半分に、全く異質の建物が乗っかっていた。
「趣味悪っる」
キンキラリンの黄金の建物はなにか既視感を感じさせた。
兎にも角にも情報…
けど、それを知るすべはこの荒廃した街には存在していなかった。
初夏と思われる気温…日が傾き始めていた。
俺は公園には入らず、一旦自分の住処へ戻ることにした。
何がどうなってるんだ?
自問自答の答えも出ない。
部屋への道すがらも人影は絶えてない。
生存者はいないのか?
って、人類滅亡が前提じゃないか!
自分の思考に突っ込みながら、朽ちた家やマンションの部屋、ガラスが散乱した車のショールームをのぞき込む。
お、コンビニ発見www
やはり全面ガラスが全壊したコンビニに足を踏み入れた。
商品が散乱している…食品もスナック菓子も…ない。
おお!
てことは、誰かはどこかにいるってことだな。
遅い日の入り。
橙色の空が薄く夜に向かって沈んで行く。
転倒した自販機に残された炭酸飲料のペットボトルを一本回収。
空き家から缶詰二個回収。
とりあえずの空腹はこれで凌ぐとしますかね…
自宅の扉に鍵を差し込み…
!!
おいおい…開いてるって…締め忘れていないはずだ。
腰の聖剣を抜いて腰だめに構え、一気に扉を開くと人影に向かって刃を突き出した!
「あっ!」
「うおっと!」
危うく人影を一突きにしそうになって、
それが誰であるかを瞬間的に認識して、
紙一重で刃を引いた。
「え?」
「は?」
「た…卓?」
「ちょ、ちょっと待て、なんで美玖がここに?」
人影はあっちの世界に残してきたはずの…美玖だった。
「そんなはず、ねぇし!」
「卓?だよね?」
微妙に食い違うお互いの第一声。
「どこでそんなオモチャ拾ってきたの?」
「なんでここに?」
「それに、いきなり老けて…」
「老けてって…大きなお世話だっつーの」
「ここ数日で何があったの?」
「ん?」
なんだこの微妙に食い違うやりとりは?
「美玖だよな?」
「誰に見えるの?」
「美玖サンです」
「よかった、頭は大丈夫みたいね」
「てか、美玖もこっちへ来たのか…」
「感謝しなさい。ご飯持ってきたわ」
「ありがとう…じゃなくて!」
「なによ」
「美玖がこっち来ちまったら、あっちは一体どうなるんだ?彩姫や太夫、リュウだけじゃ収まらないだろがっ!」
俺の発言に美玖の目が座った。
「ちょっと、やっぱり頭打ってる?どっかケガしたの?」
無遠慮に俺の顔を両手で挟んでマジマジと見る。
更に体のあちこちに触れて、服をむしり取って確認する。
「な!こんなにたくさん傷跡!」
「いや、今更だろ」
「なにが今更なの!?先週はこんな傷なかったし!」
おや?
おやおや?
先週?
美玖の顔見たのは、こっちへ渡る直前…4年ぶりだったと思うが?
そういえば…美玖の顔は若干若返っている気がするな。
化粧っけはないし、髪も結構傷んでいるけど…若い気がする。
いや、渡る直前に見た美玖が老けてるとかではないけど。
「サイキ、タユウ、リュウって誰?新しい仲間かな?」
「え?」
うん、完全に状況がわからん!
【続】
ややこしいことになってきた(苦笑)